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三章~戦いの火蓋
博士の思い
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緑とエリオットが研究所内部に侵入して、およそ五分。
ようやくレミが放ったスモークグレネードの煙が消えたようで、研究所内からは少し慌ただしさが治まったようだ。
おそらく見張りの兵士たちは入り口付近に出て、調査でも始めたのだろう。
緑たちのいる研究所からは人の気配が薄くなっていた。
「よし、頃合いだろう。」
「おじさんの居場所をどうやって探せば……。」
「大丈夫だよ、私には感じるんだ。」
そうやってエリオットは迷うことなく歩みを進めた。
そしてある部屋の前で、その足を止めたのだった。
その部屋は鉄製の自動扉のようで中を確認することは出来ない。
おまけに、どうやらロックが掛かっていてIDカードとパスワードを入力する必要がありそうだった。
「ここだな。」
エリオットは、おもむろに両手を扉へとかざした。
すると扉はすんなりと開いた。
緑はエリオットの不思議な能力に慣れたのか特別、驚くことはなかった。
「よし、行こう。」
二人は扉の奥へと進んだ。
そこには白衣を着た男が一人佇んでいた。
頭はボサボサで銀縁の厚い眼鏡をかけた中年の男に、緑は声をかけた。
「おじさん!」
男は跳ね上がるように驚いて、振り返り緑たちの方へと体を向けた。
「――み、緑君!?どうしてこんなとこに?」
彼こそ戒と凛香の父親、白はくである。
「話すと少し長くなるんだけど――。」
緑はとりあえず戒や凛香、そして母親であり白の妻、加奈について話した。
続いて、自分の家族のことを説明し最後にエリオットを紹介した。
「そうか、うちの家族は皆助かったのか、良かった。しかし緑君の家族は皆、消息不明なのか、無事ならいいのだが……。」
白は呟くように言ってうつむいた。
「白博士、率直にお尋ねします。貴方は銀の世代の生き残りですね?」
エリオットの唐突な質問に白は動じることなく、深く頷いた。
「エリオットさん、君は金の世代の生き残りなのだろ。だったらこの状況をどうにか出来ないのかね?確か君たち金の世代には特別な力があると聞いたことがあるのだが。」
「確かに我らには特別な力が備わっています。だが、この状況を打開するほどの力は無いのです。ですから貴方の協力を求めて、やって来たのです。」
緑は驚いた。
まさかエリオットが白に協力を持ちかけるなんて想像もしていなかった。
しかし、二人が協力することでこの状況が少しでも良くなるのならば緑にとっても、それは大いに歓迎する提案である。
「……悪いが協力は出来ない。」
「お、おじさん!?」
「それは何故です博士?」
「君ら――いや君はそんな特別な力を持っていながら、私たち銀の世代の滅亡の危機の時、何かしてくれたかい?君はどこかで高みの見物でもしていたのだろう。そんな君がなぜ今になって、この所謂、銅の世代の人間たちを助けようとするのだ?」
「確かに、私はあなた方が滅びゆく様を、ただ見ているだけでした。正直、怖かったからです。」
ようやくレミが放ったスモークグレネードの煙が消えたようで、研究所内からは少し慌ただしさが治まったようだ。
おそらく見張りの兵士たちは入り口付近に出て、調査でも始めたのだろう。
緑たちのいる研究所からは人の気配が薄くなっていた。
「よし、頃合いだろう。」
「おじさんの居場所をどうやって探せば……。」
「大丈夫だよ、私には感じるんだ。」
そうやってエリオットは迷うことなく歩みを進めた。
そしてある部屋の前で、その足を止めたのだった。
その部屋は鉄製の自動扉のようで中を確認することは出来ない。
おまけに、どうやらロックが掛かっていてIDカードとパスワードを入力する必要がありそうだった。
「ここだな。」
エリオットは、おもむろに両手を扉へとかざした。
すると扉はすんなりと開いた。
緑はエリオットの不思議な能力に慣れたのか特別、驚くことはなかった。
「よし、行こう。」
二人は扉の奥へと進んだ。
そこには白衣を着た男が一人佇んでいた。
頭はボサボサで銀縁の厚い眼鏡をかけた中年の男に、緑は声をかけた。
「おじさん!」
男は跳ね上がるように驚いて、振り返り緑たちの方へと体を向けた。
「――み、緑君!?どうしてこんなとこに?」
彼こそ戒と凛香の父親、白はくである。
「話すと少し長くなるんだけど――。」
緑はとりあえず戒や凛香、そして母親であり白の妻、加奈について話した。
続いて、自分の家族のことを説明し最後にエリオットを紹介した。
「そうか、うちの家族は皆助かったのか、良かった。しかし緑君の家族は皆、消息不明なのか、無事ならいいのだが……。」
白は呟くように言ってうつむいた。
「白博士、率直にお尋ねします。貴方は銀の世代の生き残りですね?」
エリオットの唐突な質問に白は動じることなく、深く頷いた。
「エリオットさん、君は金の世代の生き残りなのだろ。だったらこの状況をどうにか出来ないのかね?確か君たち金の世代には特別な力があると聞いたことがあるのだが。」
「確かに我らには特別な力が備わっています。だが、この状況を打開するほどの力は無いのです。ですから貴方の協力を求めて、やって来たのです。」
緑は驚いた。
まさかエリオットが白に協力を持ちかけるなんて想像もしていなかった。
しかし、二人が協力することでこの状況が少しでも良くなるのならば緑にとっても、それは大いに歓迎する提案である。
「……悪いが協力は出来ない。」
「お、おじさん!?」
「それは何故です博士?」
「君ら――いや君はそんな特別な力を持っていながら、私たち銀の世代の滅亡の危機の時、何かしてくれたかい?君はどこかで高みの見物でもしていたのだろう。そんな君がなぜ今になって、この所謂、銅の世代の人間たちを助けようとするのだ?」
「確かに、私はあなた方が滅びゆく様を、ただ見ているだけでした。正直、怖かったからです。」
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