最強の戦士ここにあり

田仲真尋

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ピーチボーイ

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無人島で救ってくれた、顔の平たい――いや、止めておこう。

異文化の人々は私を手厚く、もてなしてくれた。

これぞ――お・も・て・な――いや、これも止めておこう。

とにかく、私は彼等の土地へとたどり着いた。

場所は分からないが、ここはどこかの島国らしい。

私が、どうして彼等の言葉を理解できるのかは自分自身、分からない……謎である。


私は、港町を散策してみた。

救ってくれたヨハチという男は、

「あまり遠くに行かないでくれよ。迷子にでもなられたら大事だからな。」と、言っていたが、こんなチャンスはなかなか、ない。

私には見るもの全てが新鮮で、胸が高鳴った。

そうこう、している内に私は――迷子になった。

どこかの山に入り込んでしまったようだ。

「お腹空いたな。」

私は、見知らぬ土地での迷子よりも腹が減って、どうしようもなかった。

フラフラの状態で歩いていると、突然目の前に巨大なピーチが現れた……というより落ちていた。

私は、辺りをキョロキョロと見回して、持ち主がいないことを確認した。

そして剣を抜き、ピーチを真っ二つに割った。

「おお!美味しそうだ。」

私は剣をしまいピーチに、かぶり付いた。

「うまい!このピーチは最高級品だな、きっと。」

私が夢中でピーチを食べていると、

「あんら!あんた桃の子やないのかい?」と、声がした。

「しまった!持ち主か……どうする、金もないし――逃げるか」

しかし、その一瞬の迷いが私の判断を鈍らせた。

気がつくと、ご婦人は私の腕を掴んでいた。

「し、しかたない。ここは素直に謝ろう。」

「あんた、そんなにお腹空いとるなら、家に来んさい。ねっ――桃太郎さん。」

「桃太郎?」

不思議な、ご婦人だ。

「これが桃。それであなたが太郎。だから桃太郎さんよ。」

「なるほどピーチは桃か。太郎は……男……いや、このご婦人は私に子供のように接していることから推測すると――少年という意味か!」

私は頭の中を整理してみた。

「つまり私は――ピーチボーイ!」

仕方あるまい。勝手に人のピーチを食べてしまったのだから、それくらいの罰は受けよう。



こうして私ピーチボーイは、ご婦人の自宅へとお邪魔した。

「おや婆さん、その人は?」

帰宅した妻が見知らぬ男を連れているのだ、旦那さんの心中お察ししますぞ。

「こん人は桃太郎さんよ、お爺さん。」

そんな話が通用する筈ないですぞ、ご婦人。

正直に私がピーチ泥棒と言うのです、ご婦人。

「そうかい、桃太郎さんかい。じゃあ婆さん、吉備団子でも作って渡さんといかんな。」

「ええ。そのつもりですよ。」

「……一体なんの話しだろう。私は、とんでもない所に来てしまったのではないだろうか。」



その後、ご婦人は吉備団子なるものを袋に詰め、渡してくれた。

「じゃあ桃太郎さん、鬼退治よろしくお願いしますね。」

「オニ……オニとは一体?」

「婆さん。肝心なことを言わんと。」

「そうじゃった。桃太郎さん、途中で犬さんと、お猿さんと。雉さんを仲間にするのを忘れんようにな。」

「そうそう。儂たちは、ここで待っとるからの。」

半ば強引に送り出された、私は何処へ向かえば良いのかも分からず、取り敢えず歩いた。

「これは、きっとピーチを勝手に食べた、私への罰ゲームなのだろう。この土地の風習かな?」

そんなことを考えながら歩いていると、前から犬を連れた老人が歩いてきた。

「むっ!もしかして犬とはあれのことか。」

私は、どうするか迷った。

そして、お腰に付けた吉備団子の入った袋を手に取った。

「この団子というものが、重要アイテムなのだろう。」

私は団子を一つ取りだし、犬に与えてみた。

犬は喜んで吉備団子を食べ――そして仲間になった……老人も一緒についてきているが、これで良いのだろうか。

それからしばらく歩いていると、今度は木の上に野生の猿を発見した。

私は、吉備団子!を取りだし猿に向かって投げた。

猿は見事にキャッチして匂いを嗅ぎ、

「キキッ!」と、怒ったように団子を投げ返してきた。

「おのれ猿め!」

私は怒りの低級魔法、お馴染み「ワイヤー」と「ネット」を使い、猿を捕獲した。

「よし!これで猿も仲間にした。あとは雉だな。しかし雉なんて何処に生息しているのか――」

ふと見ると、露店で雉を売っている店を発見した。

私は店の前に立った。

しかし、この国の金など持ちあわせていない。

私は、犬を連れた老人を凝視した。

老人は「チッ!」と、舌打ちしながら金を払った。

こうして、犬、猿、雉を仲間にした私は、いよいよオニというものを退治に向かう。

「しかし、オニというものには何処に行けば会えるものだろうか―――」

そこに、一人の村人が向こうから走ってきた。

「大変だ。鬼がでたぞ!この道を真っ直ぐ行った船着き場から鬼ヶ島に渡ると、そこは鬼の住みかだぞー!」

そう言って村人は走り去った。

「なんという親切極まりない罰ゲームだ。」

私たち一行は、すぐさま鬼ヶ島へと渡った。



鬼ヶ島に着くと、すぐに赤いのや青いの――そして緑の鬼が現れた。

「ほう、これがオニというやつか。オークみたいなものだな。」

私は猿と雉を放した。

そして猿と雉とは二度と会うことは、なかった。

「あいつら!一目散に逃げやがった!犬は!?」

見てみると老人と犬は昼寝中であった。

「し、しかたない。私がやる!」

私は手っ取り早く剣を抜き、鬼たちを退治した。

鬼は反省し、今後は人間に迷惑は掛けないと、約束した。

そして、帰りに、

「これ、持っていってくんろ。」と、言って豪華な装飾が、施された大きな箱をくれた。

私は犬と老人は、ほったらかして、ご婦人たちの待つ家へと急いだ。



家に着くと、既に噂を聞きつけていた老夫婦が出迎えに出ていた。

「ご苦労様。それで鬼から何か貰わなかった?」

ご婦人は、待ちきれない様子だ。

私は大きな箱を、ご婦人に渡した。

「まあ、素敵な箱だこと。箱が、こんなに立派なのだから中身はきっと、もの凄い物なのでしょうね。」

ご婦人の喜ぶ顔に、私は、大満足である。

これでようやく、ピーチボーイとしての罰ゲームは果たし終えた。

あとは、一刻も早くギアン大陸へ帰還しなければ、ならない。

きっと多くの人々が私の帰りを待っていることだろう。


私は老夫婦に別れを告げた。

結局、ご婦人は箱を開けることは、しなかった。

後での、お楽しみなのであろう。

「さて、これからどうするか。」

私は、ひとまず最初に降り立った港町へと戻ることにした。

どこかで「ゴーン」と、聞き慣れぬ音が鳴った。

その音は夕暮れ時の景色とシンクロし、余韻を残しながら消えていく。

「風情があって良いな。」

私は少し冷たい風に当たりながら町を目指した。


その頃、老夫婦はピーチボーイが去った後、こっそりと箱を開こうとしていた。

「ヒッヒッヒ!これでお宝は私たちの物ですね、じいさん。」

「クックックッ!婆さんも人が悪い。何も知らない外人さんを使って鬼退治をさせるなんてな。」

「伝説では宝の山が入ってるらしですからね。さあ開けますよ。」

婆さんは、箱を勢いよく開けた――中には大きな桃が一つ入っていましたとさ。


おしまい。

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