最強の戦士ここにあり

田仲真尋

文字の大きさ
30 / 67

革命して進化する

しおりを挟む
キリエス王都へ行くには、避けて通れない国がある。

スキュラの隣国、オルカンモだ。

この国はスキュラと同様、小国である。

しかしスキュラとは、決定的な違いがあった。

それは、超大国キリエスと直接、接しているということだ。

その為、この小国は常に恐怖と隣り合わせであった。

もちろん、キリエスに攻めこまれ、でもすれば敵う筈もないだろう。

そんなオルカンモ国が、キリエスの軍門に下り属国となったのは、つい最近の出来事であった。

「どうも国中が殺伐としているな。」

私は、この横長い地形のオルカンモ国を横断してきて、そう感じていた。


「さあ、オルカンモ最後の町、ナシテに到着だ。」

キリエス本国との境にある、この町はオルカンモ兵士の他にキリエスの兵士たちの姿も見受けられた。

お互いの兵士たちは、よそよそしく感じらる。

特にオルカンモ兵の方は、その兆候が顕著に表れている。

「おい!そこをどけ!」

怒鳴るキリエス兵に、反抗できないオルカンモ兵。

「自分たちの国であるのに……さぞや悔しかろう。」

私は彼らに同情した。


そんなオルカンモ国ナシテの町を、なるべく目立たないように歩いていると、町中の一角に人だかりができている場所があった。

「あれは、なんだろう?」

私は興味本意で近づこうとした、その時である。

今の今まで集まっていた人々が突然、蜘蛛の子を散らした様にして、慌てて四方八方へと散っていった。

「なんだ?」

その、人だかりができていた場所には、一人の男が何やら熱弁していた。

「勇敢なオルカンモの諸君。君たちは、これで良いのか?ブクブクと肥えた大国などに付き従い、将来があると本気で信じているのか?もし信じているのなら、君らは大馬鹿だ。この国の王バルテンも無能な、くそ野郎だ。今すぐ、この私に国ごとよこせ!私がキリエスを滅ぼしてくれる!どうだ!」


そんな事を言えば、ここに駐留しているキリエス兵に、何をされるか分からない。

皆、巻き添いを食らいたくないと、逃げ出したのであろう。

「しかし、あの人は相変わらずだ。」

――彼は私の師匠の一人、オリバー・イノベーションである。

彼に教わったのは主に学問である。

社会情勢であったり、国作りの理念であったり。

私には、さっぱり理解できなかった。

ただ一つだけ、今でも役に立っているのは、文字の読み書きである。


「こら!そこの貴様!今すぐ、その口を閉じろ。さもなくば、その首切り落としてやるぞ。」

キリエス兵は当然、大声で叫ぶオリバーに気づき、恫喝した。

「皆さん聞きましたか?これは、自由の剥奪である。いいだろう、私は暴力には屈さない。やれるもんなら、やってみろ!」

オリバーの挑発に、キリエス兵は堪忍袋の緒が切れた。

「貴様!反逆罪で死刑だ!」と、剣を抜いた。

「さあ、やってみろ!この腰抜けが!」

オリバーの、更なる挑発にキリエス兵二人は、ついにオリバーに斬りかかった。


ぐわっ!

がっ!

二人のキリエス兵は、背後から殴られ気を失った。

――もちろん私の仕業である。

「まったく世話がやける。」と、ばかりに私は、ため息を吐いた。

「おお、わが弟子よ。やはり助けに来てくれたか。さっきから、チラチラと私の視界の片隅に、君の姿が映りこんでいたからね。多少の無茶も平気だったよ。ただ……私一人でも充分だったんだがね。」

この男の自信は、はったりではない。

こんな痩せ細った身体でも、体術の達人である。

二人くらいなら、造作もなく倒せていただろう。

「よし。そろそろ頃合いだな。行くぞ、ついてきなさい。」と、オリバーは自分勝手に私を引き連れ、その場を後にした。

振り返って見てみると、ゾロゾロと騒ぎを聞きつけたキリエス兵が集まっているのが見えた。

「あと一歩遅かったら、面倒なことになっていたな。」

こういうところは、流石と言わざるを得ない。

恐らく、オリバーにとっては全て計算づくなのであろう。

引き際をわきまえている。

そんな師匠の細い背中は、昔から頼もしく見えていたことを、私はふと思い出した。


オリバーと私は、しばらく歩き、尾行がないか確認した。

そして、ある馬小屋に入った。

「えーと、確かこの辺りに……あった。」

藁の束を除けると、そこには扉があった。

そして、錠を外し扉を開くと、そこには下へ降りる階段が現れたのであった。

「秘密基地みたいだ。」と、私は少年の様にドキドキした。

階段を下りていくと、そこには広い空間があり、そして生活感があった。

中には数名の男女が居た。

「オリバー先生。お帰りなさい。」

「どうでした、キリエス兵の反応は?」

「いよいよ決行ですか?オリバー師匠。」

彼らは、一斉にオリバーに質問等を浴びせた。

「黙らっしゃい!いつも言っているでしょ。いっぺんに喋っちゃ分かんないって!」

「な、なんか女子っぽい気が……」と、私が冷や汗を流していると、オリバーは私の肩に手をかけ、皆の前に押し出した。

私は肩を触られる瞬間、反射的にオリバーの手を払った。

「はい、みんな。この子は私の昔の弟子です。つまり皆の兄弟子ね。」

皆の顔が輝いた、かと思った次の瞬間、

「あ、あの宜しくお願いします。」

「剣士なんですか?」

「彼女いますか?」と、また一斉に質問等の嵐で、あった。

「シャラップ!あんた達には学習力が備わってないのかしら。いいこと、質問は一人ずつよ。」

この時、私は確信した……オリバーが、そっち系……お姉だということを。

「まったくごめんね。この子たちの躾がなってなくって。」

そう言ってオリバーは、

「いいこと、皆。いつものいくわよ。」

その言葉に、弟子たちは真顔で頷いた。

「この国を――レボリューションして!」

オリバーの掛け声に弟子たちは、

「エボリューション!」と、声を合わせた。

「……はい?」

私が、摩訶不思議な出来事にでも遭遇したかの様な、顔をしていたのでオリバーは慌てて、

「こ、これはね、革命を起こして国民が全員で進化しようってことなの。」

「革命!?」

私は、この時に始めて気がついた。

オリバーは、このオルカンモで革命を企てているのだ、と。

「あらやだ。もしかしてオルカンモを、キリエスから切り離しち

ゃうって、思ってたりする?」

私は自信を持って頷いた。

「ざんねーん。いい線だけど、違うわよ。私が狙ってるのは、キリエス本国を二分割にしちゃおう作戦、でした。」

「なっ!?キリエスを二分割?そんなことが出来るのか?」と、私は驚きと疑念の混ざりあった表情を浮かべていた。

「なに、その変な顔。大丈夫よ、私ならできる……というより、もう既に作戦は始まっているんだけどね。」

実に大胆な発想だ。

「あんな大きな国は、綺麗に二つに割ってやるわ。どう、あなたも参加しない?」

こんな楽しそうなことに、参加しない理由などあろうはずも、ない。

私は喜んで、その申し出を受けた。

「よし、決まりね。それじゃあ後日、キリエス王都の酒場、タムタムで会いましょう。」


私はオリバーと約束を交わし、別れた。

オリバーの変貌ぶりに若干の恐怖を感じながらも、これから起こる出来事に胸を高鳴らせながら、私はキリエス王都「マビン・グラス」へ、向けて歩き始めた。

レト大陸の覇者、キリエスの行く末を見届けるために。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

思いを込めてあなたに贈る

あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。

処理中です...