騎士団に入る事になりました

セイラ

文字の大きさ
2 / 42
第1章・第2騎士団

2,面白い試合

しおりを挟む
「どうせ、卑怯な事をしたに決まっている!何をした!」

認めたくないからと言っても、頭ごなしに否定するのはどうかと思う。

「卑怯な事など、一切行っておりません。」
何を見ていたんだ。

「嘘だ!平民に近い貧乏貴族で、女の貴様が俺より強い事などあり得ない!」

「レイラはそんな事、してません!」
「確かに、彼女は剣を振るってた!」

次々に起こる抗議の声。
「うるさい!貴様らも不合格にするぞ!」

その言葉に皆は押し黙る。これは脅しと取られても間違いないな。

「貴様、どうしても不正を明かす気はないのだな。」

「私は不正など、一切行っておりません。」
審査官も私を疑う言葉を言う。

「いいだろう。貴様はここで不合格だ。出て行け!貴様の様な奴は必要ない!」

「……正当な理由をお聞きしても構いませんか?」

「正当な理由だと?貴様は、我々審査官には向かった。」

「私は、不正を行なっていないと申しただけです。」

「まだ言うか!これ以上、不正をしていないと言うのなら、処罰が下るぞ!」

この様な場所には、いる価値がないな。こちらの意見は聞き入れず怒鳴り散らすか。

先程から聞いていれば、人を馬鹿にした言葉の数々。

騎士団やめて、冒険者ギルドの方がいいかもしれない。

私が騎士団の様に、お給料の量は変わりやすいが、依頼を多く受ければいいし。

基本チームを作るか、ソロの活動の2択だから活動しやすいのは確かだ。

まあ、緊急時の団体行動はあるかも知れないけれど。

「何を騒いでんだ。」
呑気にこちらに歩いて来る男性。

赤髪に銀のメッシュが入り、黄緑の瞳をした美青年。

銀の狼のバッジをつけ、金色のラインが入った白い騎士の服を着ている。

「カイトさんが気になさる事ではありません。ただ、この者が不正を。」

冷たい視線、蔑んだ視線に馬鹿にした視線を向けて来る審査官と騎士。

「訓練用の剣を使ったんだろう?魔法を使った形跡は?」

「いいえ。魔法を使った形跡はありません。ですが、可笑しな動きをしたので。」

「何の不正を行なったのか問うても、していないの一点張りです。」

「ふーん。」
白い騎士の服を着た青年は私を見る。

「なら、どんな不正を行なっているのか、俺が確かめる。おい、訓練用の剣をかせ!」

その人は訓練用の剣を騎士から受け取り、こちらに向けて笑う。

「さあ、始めようぜ!」
私も訓練用の剣を構える。

不合格なのだから、剣を振るうのは無駄だろうが、不正と言われたままでは終わらせない。

私もまた、剣を構える。
「始め!」

審判の合図に深く息をする。私が師匠に教わったのは、呼吸法だ。

呼吸が荒れた時、整える為に深く息を吸う。力を込める時、歯を食いしばり息を止める。

だけど、それらは呼吸法とは違う。さらに深く、酸素を身体の全体に送る。

呼吸法は、自律神経の交感神経と副交感神経の2つを使い分ける事。

正しい呼吸法を使えば、素早く・鋭く・力強くなれる。

どんな時でも冷静に物事を理解し、集中力を向上させ注意力も上がる。

私は地面を踏み込み、素早く赤髪の青年へと剣を払う。

「なっ!?」
赤髪の青年が驚愕したが、剣を受け止めた。

赤髪の青年が、剣を払い退けた。私は体を捻り、素早く体制を整えた。

直ぐに攻撃へと転じるが、私より早く横から攻撃が入って来た。

身体は正面に、飛んで来る攻撃に剣を地に向けた状態で、右側に立て受け止める。

受け止めたはいいが、剣の攻撃が重い。呼吸を少し変えて、力の差をカバーする。

剣の打ち合いが続いた。この人はとても強い。恐らく実力は上位で間違いない。

勝負しているが、手加減されている事が分かる。本気を出されたら負けるだろう。

「終了です!」
審判の声に私達は剣を下ろす。

指定時間を超えたので、引き分けだろう。
「小さいのにここまで動けるとは!」

《カイト視点》
審査官と騎士達が揉めていた。

不正をしていると言うが、本人はしていないとしか言わないらしい。

今回の審査官達は、試験管達によって判断が的確かどうか見定めをされている。

少し暇だったので、フード付きのマントを被った少年の相手をする。

それにしても小柄だな。本当にこいつらを倒したのか?

両者共剣を構えて、審判の合図に動く。剣の攻防が始まった訳だが……。

これは、実力だな。不正なんてしていない。こいつの剣の技は本物だ。

戦いながら、観察の余力も残してやがる。まだ、本気を出していないんだろうな。

面白い。時間切れの引き分けになったが、この少年と本気の勝負がしたいな。

「カイトさん?」
騎士が聞いて来た。

「こいつは、不正なんてしてないぞ。このチビの実力だ。」

「で、ですが!」
少年は訓練用の剣を元の場所に戻した。

そして、回れ右をして立ち去ろうとしている。俺は止めた。

「おい!?何、帰ろうとしてるんだ!」
「不合格だそうなので帰ろうかと。」

心底不思議そうに聞く少年に、俺は驚愕の眼差しを向けた。

「皆さん優秀なのですね。私では敵わない人が多いんですね。」

関心の思いを込めているのだろうが、嫌味にしか聞こえねぇ。

少年は俺に頭を下げて出口へ向かう。
「待て待て待て!」

「何でしょうか?」
「お前は合格だ。」

「カイトさん!」
「審査官の方々は反対の様ですが。」

「不正はしてないと俺が確認した。それでも納得出来ないなら、お前達が証明しろ!」

この少年の実力も分からないとはな。まあ、こいつらは元々、悪い噂が絶えない奴らだ。

処分直前で焦ってんだろうな。自業自得だから仕方ないだろう。

稽古もサボっていたんだ。当然の結果だな。この少年なら、合格は確実だろ。

「ありがとうございました。お陰で、不合格にならずに済みました。」

フードを被った少年が礼をしに来た。律儀な奴だ。今回はこちらに失態がある。

「いや、別に構わねぇよ。それにしてもお前、小さい小僧だな。」

この身長であの動きと剣の重さ。成長期が来たら、将来凄い事になりそうだ。

「私は小僧ではなく、性別は女なのですが。」
先の未来で楽しむ俺は驚愕に変わる。

「………はぁ!?」
女だと!?マジでか?

「そうか。そりゃあ悪かった。」
女ってあんなに強かったか?

「俺の名はカイト・ルーマンベルクだ。」
「私はレイラ・エバーガーデンと申します。」

「頑張れよ。」
俺は、その言葉を残して立ち去った。

第1訓練場に行くと、第2騎士団の副団長であるシンがいた。

「第1訓練場はどうだ?」
「今回は凄いと思うぞ。」

シンに声をかけると、シンは話し始めた。何でも今回は、優秀な人材が揃っているそうだ。

第1騎士団の団長の弟や、フルーベル家の子息とディンフォード家の子息もいるそうだ。

フルーベル家とディンフォード家は、皆揃って優秀だ。

それに、今回はソードリオ公爵の子息がいるらしい。

第1訓練場で試合していたそうだが、見事な動きだったそうだ。

「そっちはどうだった?ディンフォード家の子息が第2訓練場だっただろ?」

「ああ、だが他にも面白い奴がいたぞ。」
シンの顔が驚愕に変わるのが、楽しみだ。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

悪女役らしく離婚を迫ろうとしたのに、夫の反応がおかしい

廻り
恋愛
第18回恋愛小説大賞にて奨励賞をいただきました。応援してくださりありがとうございました!  王太子妃シャルロット20歳は、前世の記憶が蘇る。  ここは小説の世界で、シャルロットは王太子とヒロインの恋路を邪魔する『悪女役』。 『断罪される運命』から逃れたいが、夫は離婚に応じる気がない。  ならばと、シャルロットは別居を始める。 『夫が離婚に応じたくなる計画』を思いついたシャルロットは、それを実行することに。  夫がヒロインと出会うまで、タイムリミットは一年。  それまでに離婚に応じさせたいシャルロットと、なぜか様子がおかしい夫の話。

俺の妻になれと言われたので秒でお断りしてみた

ましろ
恋愛
「俺の妻になれ」 「嫌ですけど」 何かしら、今の台詞は。 思わず脊髄反射的にお断りしてしまいました。 ちなみに『俺』とは皇太子殿下で私は伯爵令嬢。立派に不敬罪なのかもしれません。 ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。 ✻R-15は保険です。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...