モブ令嬢は白旗など掲げない

セイラ

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騎士と海賊

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現在王宮にて、シスイ様・ハイネ様・ソフィア様・カイトさん・ルカと私の6名で何をして遊ぶと相談中だ。

しかし、王族の3名に危ない遊びなどさせられない。

「何がある?」
「魔法で競走!」

「却下、また暴れるのが関の山だ。」
「今度は失敗しないわ!」

ハイネ様とソフィア様が喧嘩をなさる。どうやらソフィア様はお転婆らしい。

「収集がつかなくなるから、辞めようね。」
シスイ様とカイトさんが止めに入る。

「お嬢様、何か面白い遊びはございませんか?」
「何故、私に聞くのです?」

「お嬢様がいつも面白い遊びを考えるからです。」
そう、私は皆と遊ぶ時、前世の遊びを教えてる。

自業自得?だってこの国、面白い遊びがないのだ。

「キシトウはどうでしょう?」
「「「「「キシカイ?」」」」」

これはケイドロを騎士と海賊に変えたもの。警察が騎士で泥棒が海賊だ。

皆にケイドロにちなんだ、キシカイのルールを説明した。

「面白そうですわ!」
「ならば、ジャンケンで3対3を決めましょう。」

ジャンケンした結果、騎士チームがルカとカイトさんで海賊チームが私・シスイ様・ハイネ様・ソフィア様となった。

何故、2対4かの質問なら、最初が騎士チームにシスイ様もいたからだ。

チームの強さバランスが異常だから、こんな感じになっている。

「30秒数えるので、逃げてください。」
ルカの言葉で皆が逃げる。

私はとにかく逃げた。そしたらなんと、迷子になったのだから笑える話である。

外見は6歳だが、中身は大人だ。恥ずかしい事この上ない。

「貴女、何をしていますの?」
「迷子です。」

私の目の前には、ピンクスピネルの髪にデマンドイドガーネットの瞳をした美少女がいた。

「私はティアラ・ディナシスですわ。」
「私はセシリア・メルファーナと申します。」

ティアラ・ディナシスとは、公爵家の長女であり、悪役令嬢である。

どうしてこうなるの!そう思っていると、ティアラの後ろから男の子が・・・。

「紹介しますわ。こちら双子の弟で」
「シオン・ディナシスです。」

グリーンアベンチェリンの瞳に、薄桃色の髪をした美少年。知っている。攻略対象者だ。

ふふふ。笑うしかないよね?
「セシリア様はどこに行きたいのですか?」

「それがですね。」
「セシリア嬢。」

呼ばれて振り向いた先は、ハイネ様だった。ハイネ様と共に2人に説明した。

そしたら何故か、2人もキシカイに参加。

私は逃げる事は辞めて、バラ園で呑気に本を読んでいる。何故?だって捕まらないんだもの。

追いかけられる事もないしね。わざわざ捕まりに行くなんてしないし。

暇なので本を読む事にした。
「セシリア嬢は逃げないの?」

シオンが聞いて来た。
「ええ、ここは見つからないので大人しく本を読んでいます。」

「へぇ~どんな本なの?」
可愛い見た目でキラキラな瞳をしてるが、本性を知っている私は何も思わない。

思うとすれば、怖いよ。本当に6歳児?である。
「他国の物語です。」

「へぇ~僕も読みたいな!・・・って、他国の言語で書かれてるよ!凄い!」

「猫を被らなくても構いませんよ。」
「・・・どう言う意味かな?」

「理由は分かりませんが、無理矢理猫を被っている様に見えますよ。」

「・・・どうして、そう思うの?」
「ただの勘ですわ。」

「そろそろ出て来たらどうですか?ハイネ様。」
「気づいていたか。」
「ええ、お2人共、何かご用がお有りですか?」

「兄上がいつもお前の事を話すんだ。レオンとエジスもだ。だから気になった。」

「僕は君が誑かしたのかと、思ってね?勘ぐりを入れただけさ。」

「シオンは女性が好きでなくてな。だが、俺も同意見だったから本性を探りたかった。」

「それで、何か分かりましたか?」
「ああ、お前は面白いと言う事と、誑かしていないと言う事だ。」

「僕も面白いと思ったよ!そして本性が聞きたいな?僕達を前にして、何を企んでるの?」

笑顔で聞いて来るシオン。この子は女性が大嫌いでどこか見下した態度を取る。

「言っておきますが、貴方方のした事は私の事を罵ったと同義なのです。」

私は微笑みながら続ける。
「シオン様は女性を見下しているのですか?」
「そんな事ないよ?」

「本性が聞きたい?貴方の耳と目は飾りですか?自分の目で確かめてください。」

「どう言う事かな?」
「物語の様に決まっていないと言う事です。人は感情があり考えがあるのです。」

私は立ち上がり、彼等の間を通り過ぎ振り返る。

「私の言った意味が理解出来ないなら構いません。ですが、貴方方の考えが刃となり傷つけない事を祈ります。」

その言葉を残して、私は違う場所へ隠れた。帰る時が来たので、皆に挨拶をする。

馬車に乗った時、とてつもなくもふもふに癒されたくなった。

《シオン視点》
僕はセシリア嬢の言った事が理解出来なかった。考えても分からない。

僕はセシリア嬢の言った通り、何処か女性を見下していた。

僕の周りの女性達は、地位と外見だけを見て中身を見ようとしない。だから嫌いだった。

僕の考えでは、セシリア嬢の言った意味が全く分からない。気にする必要はない。

女性が言った言葉だ。関係ない。そう言い払う事が出来なかったので、お父様に聞く事にした。

お母様は早くに他界した為、お父様は僕達をとても溺愛する。

お父様に話したら、お父様は言った。
「その言葉は、外見ではなく中身を見た方がいいと言う事だろうね。」

僕は間違いをしたのかもしれない。
「セシリア嬢は気づいて欲しかったんだろう。シオンがこのまま進めば、大変な事になると。」

「どう言う意味ですか?」
「シオンの様に周りを見ないで、決めつける事は大切な事を見失うかもしれないから。」

「大切な事?」
「そう。例えば犯罪が起こった時、何もしてない無実の人間を有罪とした時だ。」

僕はお父様の言葉を真剣に聞いた。
「調べずに有罪と決め付けて、後から違ったなんて事は取り返しのつかない事なんだ。」

「・・・」
「もしも、この人は大丈夫と確認しなかった書類に間違いがあったら、それが書き直せない物だったら?」

僕は大変失礼な事をセシリア嬢にしたのだろう。僕がした事は、嫌いな令嬢達と変わらない。

「謝ってからは遅い事を、刃となり傷つけない事を祈ると言葉に変えたんじゃないかな?」

「お父様、僕はセシリア嬢に謝りたいです。」
「そうだね。」

セシリア嬢は許してくれるだろうか?


⇒セシリアはそこまで考えてはいません。ただ決め付けは令嬢に失礼だと言いたかっただけです。


僕はセシリア嬢に会って、謝罪した。すると、
「構いませんよ。」

「許してくれるのですか?」
許してもらえるとは思えなかった。

「失敗しない人などいませんよ。人は失敗して初めて気づきます。」

凄い人だと思った。
「私達は子供なのです。失敗した数を次に活かす数に変える事が素晴らしいと思います。」

「僕は変わろうと思います。」
「敬語はなしでいいですよ。」

そう笑うセシリア嬢を見て、僕は思った。

必ず変わり恥のない胸を誇れる男になって、セシリア嬢を振り向かせるとーー




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