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第一章 幼少期

記憶した彼女の記憶1

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ピーポー、ピーポーと耳に救急車のサイレンが聞こえ、熱いアスファルトには私が大好きで、いつも良くやっていた乙女ゲームの続編のソフトと予約限定でしか貰えないクリアファイルが袋から散乱して地面に散らばっている。

手を伸ばしたいのに動かすのも憚り、激痛が走る。

せっかく予約までしてまで続編楽しみにしてたのに、なんで動かないのよ!

地面なんかと仲良くなりたいわけじゃないんだから、この後帰ってゲームして幸せになるグッドエンドやキャラクター攻略して楽しむはずだったのに。

あー目が霞むし悔しいし、地面には大勢の足や叫び声、あーもう煩い、早く起こして欲しいのに。

ダメだ眠い。


★★★★


ユサユサと身体が揺さぶられる、誰かが自分を呼んでいる。

「.......お嬢様...........アルセイヌお嬢様。」

声が異様に優しいから看護師さんかと思ったのに、アルセイヌって誰かいな?
私はそんな外国人みたいな名前ではないので寝ます。

それにしても気持ち良い病院のベッドですね。
昔に入院してた頃は病院のベッドなんて硬いし辛かったんですけどね。

では二度寝をと再び寝ようと布団を被り直しましたのに、またもや安眠への道を邪魔される。

「アルセイヌお嬢様、起きないと突撃されますよ。」

またもや見知らぬ名前で呼ばれて、あーもしかして横に外人さんが寝てるんだろうし私には関係ないかも。
何が突撃されるかは、わからないけれどご愁傷様です。

では寝ようと目蓋を閉じようとしたとき、バンッと勢いあるドアの音と駆け寄るような音が聞こえ....そして!

バフッと布団の上に重みと衝撃が私を襲う!!

ん!? 何故に私に衝撃が!

「もう! アル...いつまで寝てるんですの! もうお昼ではないですか。一緒にご飯を食べますわよ、でないと大きくなれないのよ!」

えらく可愛いボイスに呻きと痛みを我慢して、のそりと布団をめくり布団の上にいる人物を見た瞬間。
アレ? この子見たことがあるんだけど。

金髪の髪に青い瞳、幼い面影なのに将来は絶対に美人になる素質は醸し出しているような美少女顔、ライナリア。
《蝶の花に愛された藤蕾を貴方に》
の主人公の友人になり、アルセイヌをバッドエンドに突き落とした人物。

なぜに貴方が私の上でニコニコして見下ろしているのでしょうか。

生ライナリアに目をパチパチして瞬いて驚いてたら、プクーと頬を緩ませてから、エイ! と言い。
私の頬をぷにぷにと摘み上げて、引っ張ったりふにぷにしてくる。

あーもしかして私は、病院ではなくあの世に行って。
神様が死の淵に見せてくれるのだろうか。

あの乙女ゲームに生きるキャラクターとの邂逅を。
うん、絶対そうだ。
ありがたいです、こんな生き生きしてるのは美味しいです。

コクコクと納得してジッとライナリアを見つめてると、ライナリアはもみもみを止めてから私を見て首を傾げるもニヤッと笑みを浮かべ

「ねえアルセイヌ、どうしても起きる気がないようね。しょうがない、これも姉としての教育ですもの。覚悟!」

えいって感じで私の脇腹や腰をこちょこちょとくすぐってくるもんだから、こしょばゆくて笑い死にました。チーン。
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