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第一章 幼少期

朝のお散歩と小さな子犬2

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朝食を和気藹々に済ませたあと、広いお庭を散歩する。
私とお母様が手を繋いで、お父様とライナリアが手を繋ぐ。
青々と広がる晴天に雲一つない空を眺めて歩く、いつもの光景にはアルセイヌから見た世界はどう見えてたんだろう。

暖かい手を感じてお母様お父様ライナリア、仲良く歩く光景。他愛もない会話で笑い合う姿。

ゲームで見ることもないアルセイヌの世界。
そして私が歩むこれからの未来。

どんな先に試練とアルセイヌの感じるものが待ってるんだろうね。

「ねえ、アル!」
「ん? 何?」
「もう聞いてなかったんですの! せっかくなんですし、あすこ行かない?」

あすこって何処?
うーむと考えてたらお母様が手を離してくるから、ちょっと寂しくて繋ぎ直すとクスクス笑われた。

「ライナリアと遊ぶなら手、離さないとでしょ。」
「あ.....うん。」
「アルってお母様と離れたくない?」

手を離したがらないのを、離れたくないと思われたのは心外だが、寂しさを感じちゃったのは本当だった。
ついコクンと頷くとお母様が

「アルが、あのアルがわたくしにーー貴方ーわたくし嬉しいですわ!」

とか聞こえてくる。ん? 嬉しそうなのは良いけど、そこまで甘えてなかったのかアルセイヌって?

「うーむ、しょうがない今回はお母様に免じてお庭で遊びましょ! 行こ!アル!」

ぎゅっと握られる手袋越しの温もりにライナリアを見ると笑顔で笑って、一緒に遊ぼうとしてくれるのが嬉しくて笑み...頷く。

「....アルって罪作りだね、ふふ...よーし遊ぼ!!」

何が罪作りなのかは良くわからないけど、ライナリアの笑顔のほうがファン心くすぐるんだけどね!

ー間話ー


遠くにお互い微笑んで遊んでいるライナリアとアルセイヌを見守っているとメリアが側に寄り添うように身体を預けてくる。

「どしたメリア?」
「アルセイヌが笑ってくれるなんて...それもわたくしに...。喜んでしまうの、良いのかしら....あの子に甘えて貰えて。」

目を伏せ寂しそうな顔をするメリアに、アルセイヌの力のことを言っているのだろうと思い出す。
母として抱き上げた時に僅かでも触れた手、それによって身体が蝕まれる羽目になって恐怖を感じて、少しの距離を空けていた。

でもこのままじゃ娘を嫌いになんてなりたくないと今回朝食を共にし、アルセイヌの気持ちを知った。

それが余計に葛藤しているのだろう。

「いいんだ、君はアルセイヌの母であり...愛する娘を支える存在だ。無理しない程度に接しろ、いつか知る真実で傷つくこともあるだろうが、きっと今後未来にもな。」
「ふふ、ちょっと厳しい貴方も大好きです。そうですわね、あの子の未来のためにも、わたくし頑張りますわ。」

ー間話終了ー

パタパタとかけていくライナリアを追っかけて鬼ごっこをしていると、空の風が僅かに誘うように吹いた。

「アルセイヌどうしたの?」

急に止まった私に不思議そうに聞かれたけど、それよりも私は何かに呼ばれた感覚があって、自然と足が近くの草むらに向いた。

ガサガサと探してると、クーンクーンって犬の鳴き声で私の耳に入る。
もう少し先に進み奥へと入ると白い毛並みと尖りのある耳、まだ子犬の形容に可愛いーと思って触ってしまう。

手袋越しだから大丈夫、そう思っての行動だったんだけど。

その子犬はグルルルと唸って私を警戒していた。
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