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ただの漫画家のひみつの。ー之より、演じますは。ー

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『皆様方』、こんな辺鄙へんぴな『劇場』にご来場いただきありがとう存じます。
「ありがとうございます!」
私達はそうしてお辞儀をいたしました。

それではこんな所でお話するのもなんですし、席にお座りくださいませ。
「今回も私達がご案内しますね!
暗いので足元にご注意くださいませ!」

「【案内人】、私の方の準備完了しました。」
わかりました、スタッフの方よろしくお願い申し上げます。

『はい。』
『わかりました。』
『お任せ。』
『承知しました。』
『はいはーい……。』
『……。』
『承知ィィ!』
『演者の方々が到着致しましたので、あとはお願い申し上げます。』
『はい。』
わかりました。

席にお座りになられた『皆様方』を見届けてから、彼は言いました。

「それではご注意点を、告げさせていただきます。」
・お見せした全ての演劇は、二次創作対象になります。
・オリジナルキャラが、出演する可能性がございます。
・キャラ崩壊に、ご注意くださいませ。
・回想シーンの際に、ご案内させていただきます。
・シーン切り替えの際にも、ご案内致します。
・暴力シーン、情事シーン、死ネタなどがお嫌な方は『劇場』から速やかにご退場していただければ全額返却いたします。

それでは、一ベルを鳴らさせていただきます。

リイィィイイイイィィイイィィン……。












それでは本ベルを鳴らさせていただきます。

リイィィイイイイィィイイィィン……。





「演目名を告げさせていただきます。」
『可笑しな漫画家が異世界転生する模様。ーただの神様達と神獣や少女で漫画家を困らせるようです。ー』でございます。

之より、演じますは少々特殊な漫画を書く漫画家と彼女が殺されて神様方と出会い、異世界転生するただの拙い物語になります。

それではごゆっくりとお楽しみくださいませ。
「お楽しみください!」
皆様、お待たせしてしまい申し訳ございません。
「申し訳ございません!」

「開幕致しますー、開幕致しますー。」

ーーー演目開始。ーーー

「もう少しベタを濃くして。
うんうん、それでいいよ。」
「こんな感じですか?
良かったです……。」

そんなやり取りを、彼女としていた。

可愛い、可愛い彼女。

黒髪ロングに水晶のようで美麗に映る澄んだ茶色の目、それから青い水晶のような可愛らしく丸いヘアピンを、留めているのがチャームポイントだ。

服装は白いパーカーに黒いズボンに、足には意外と子供らしいクマさんの靴下を履いている。
……まるでリラックマのような、キャラクターが刺繍してある靴下だが。
そんなわけで、俺はアシスタントの津貫鈴莉と付き合っている。

きっかけは……そうだね……。

ーーー男性のノイズ到達。ーーー
ーーー回想シーンに参ります。ーーー

新入りの頃に『あなたのキズを貰いますね』という漫画を描いていた時に、彼女がペンを落としてしまって俺が拾った時に少し切ったのかな。

指先に血が出始めて、一滴、二滴落ちたんだよね。

そしたら彼女『キレイ……。』って、呟いたんだ。
それを無視して、大丈夫かと声をかけたのだけど呆然としていたから心配して、何度か声をかけたんだよ。

そしたら、ね。

「付き合ってください、もっと血を見せてください。」
って恍惚の顔で言われたから承諾して、付き合うことにした。

ーーー男性の膿(ノイズ)終了致します。ーーー

そこから仕事が軌道に乗り出して、四年三ヶ月は経つね。

何だか匂うのだけれど……まあその時はその時だよね。
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