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甘い宣告。ーウクロ。ー
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黒い業火がゆらゆらと誘う。
考えあぐねるように、ゆっくりと……近づいてくる。
足音が聞こえた気がする、秘かに…。
黒い業火に包まれた男が、暴れている。
『かの大国の王』の国が、包まれるまであと少し…で御座いますよォ。
ゆらり、と空間が揺れる。
すると国の内外に、黒い面がいくつもいくつもいくつもいくつも、現出する。
そして。
黒い弓が現れ、矢がきりきりきりきり、と番えられていく。
鏃がそちらを向く、何千万も黒い面が現れる。
厄災の如く、まろび出るようだ。
(“あなた”にだけ、“あなた達”にだけ見える光景が御座いますよォ………。)
(黒い業火の壁を隔て、その中に見えるは。)
(黒色の要に金箔が装飾され、桃色の桜の花びらが描かれている扇子のみが見え、更には開かれている状態だったのですが…閉じられ。)
(“あなた”方にすい、と向けられるので御座います…。)
《お前達が選べ》
《そうすれば我らが動ける》
(……淡々と、『頭の中』に浮かぶ文字があります。)
(あんなに投げやりな呼び方ではございやせんでしたが、例えばもっと柔らかく優しい呼び方だったのでごぜぇやす。
…ですがねェ、“あなた”は思い出せないままで御座います。
寧ろ、どんどん記憶が曖昧になっていくばかりでございやす。
………まるで、誰かが“あなた”に命じたかのように。
それも『二人』の人物が“あなた”にへと命じるかのように、有無を言わさず。
その間も黒い面は増え続け、空中に浮かんでございます。
きりきりきりきり、その度に弓が増えていきその度に弓に矢をあてがい、また番えられ待っています。
《哀れむ価値もなく疾く去ね》
(……倒れ伏して痛みに悶えているままの、『貴方』の首筋になにか冷たいものがあてがられますね。)
(微かな痛みが首筋にしますが……ふふっ、それはなんでしたかね。)
(………けれども、“あなた”には覚えのないものでしょう。)
(…誰何されることもなく、それでもあたしらは知って御座います。)
(ですが『貴方』は、知らないのでございます!
あまつさえ誰ともしれぬ扇子は、業火の壁を隔てその中から『貴方』に向けられ、気まぐれによりお命じになられたとおりに。白光を放っている、その刀身を現しているなにかが、命を奪うこととなるのです。
…いずくんぞこの命令を違えることがありましょうか。…“ヒト”を使うことは、こういうことでごぜえやす。
……安全な場所から悲鳴を、罵倒のひとつも浴びず、浴せずにいられることを。
“あなた”は覚えていた、でしょう?
…あァ、責めている訳ではございやぁせん。
…ただ、このことを通してゆめ忘れることのなきようあたし達から申し上げまさァ。
……“過去”のことなど、わすれて良いのです。
…その代わり、『彼ら』が血の香りを『絶対的な死』を運ぶことと相成りますなァ。
ふわっ、と濃厚な血の匂いが『扇子』から、『男性』から致します。
『世界』を隔てた“あなた達”にへと、届くことはございません。
『業火』の燃え盛る音は、足音は、密かな笑い声は、弓矢がきりきりきりきり、と鳴る幽かな音は、止むことなく『貴方』の耳に僅かに、また明確に聞こえるか差異はあれど、こうして届きます。
ゆらゆらと、『黒い業火』が艷麗に相変わらず誘うように、揺れますね。
扇子を『国民』達へと向けると、誰ともしれない『数多の魔法』が向かっていきますね。
それらは全て、防御魔法で御座いやす。)
(……すい、と扇子が『かの大国の王』へと
『異形は彷徨する』
考えあぐねるように、ゆっくりと……近づいてくる。
足音が聞こえた気がする、秘かに…。
黒い業火に包まれた男が、暴れている。
『かの大国の王』の国が、包まれるまであと少し…で御座いますよォ。
ゆらり、と空間が揺れる。
すると国の内外に、黒い面がいくつもいくつもいくつもいくつも、現出する。
そして。
黒い弓が現れ、矢がきりきりきりきり、と番えられていく。
鏃がそちらを向く、何千万も黒い面が現れる。
厄災の如く、まろび出るようだ。
(“あなた”にだけ、“あなた達”にだけ見える光景が御座いますよォ………。)
(黒い業火の壁を隔て、その中に見えるは。)
(黒色の要に金箔が装飾され、桃色の桜の花びらが描かれている扇子のみが見え、更には開かれている状態だったのですが…閉じられ。)
(“あなた”方にすい、と向けられるので御座います…。)
《お前達が選べ》
《そうすれば我らが動ける》
(……淡々と、『頭の中』に浮かぶ文字があります。)
(あんなに投げやりな呼び方ではございやせんでしたが、例えばもっと柔らかく優しい呼び方だったのでごぜぇやす。
…ですがねェ、“あなた”は思い出せないままで御座います。
寧ろ、どんどん記憶が曖昧になっていくばかりでございやす。
………まるで、誰かが“あなた”に命じたかのように。
それも『二人』の人物が“あなた”にへと命じるかのように、有無を言わさず。
その間も黒い面は増え続け、空中に浮かんでございます。
きりきりきりきり、その度に弓が増えていきその度に弓に矢をあてがい、また番えられ待っています。
《哀れむ価値もなく疾く去ね》
(……倒れ伏して痛みに悶えているままの、『貴方』の首筋になにか冷たいものがあてがられますね。)
(微かな痛みが首筋にしますが……ふふっ、それはなんでしたかね。)
(………けれども、“あなた”には覚えのないものでしょう。)
(…誰何されることもなく、それでもあたしらは知って御座います。)
(ですが『貴方』は、知らないのでございます!
あまつさえ誰ともしれぬ扇子は、業火の壁を隔てその中から『貴方』に向けられ、気まぐれによりお命じになられたとおりに。白光を放っている、その刀身を現しているなにかが、命を奪うこととなるのです。
…いずくんぞこの命令を違えることがありましょうか。…“ヒト”を使うことは、こういうことでごぜえやす。
……安全な場所から悲鳴を、罵倒のひとつも浴びず、浴せずにいられることを。
“あなた”は覚えていた、でしょう?
…あァ、責めている訳ではございやぁせん。
…ただ、このことを通してゆめ忘れることのなきようあたし達から申し上げまさァ。
……“過去”のことなど、わすれて良いのです。
…その代わり、『彼ら』が血の香りを『絶対的な死』を運ぶことと相成りますなァ。
ふわっ、と濃厚な血の匂いが『扇子』から、『男性』から致します。
『世界』を隔てた“あなた達”にへと、届くことはございません。
『業火』の燃え盛る音は、足音は、密かな笑い声は、弓矢がきりきりきりきり、と鳴る幽かな音は、止むことなく『貴方』の耳に僅かに、また明確に聞こえるか差異はあれど、こうして届きます。
ゆらゆらと、『黒い業火』が艷麗に相変わらず誘うように、揺れますね。
扇子を『国民』達へと向けると、誰ともしれない『数多の魔法』が向かっていきますね。
それらは全て、防御魔法で御座いやす。)
(……すい、と扇子が『かの大国の王』へと
『異形は彷徨する』
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