『鬼神の救済記』

影狼

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自己満足

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自己満足だ、こんなもん。
分かってる。
あいつのためじゃないことも。
あー、そういやぁ名前だったな。

そんじゃてめぇの名前、借り受けるとしようかぁ。

ロイロ・クォーツだ、よろしく。
…ちっとめんどくせぇが、ま、お前さんたちにゃぁ些末なことだと思ってくれたら嬉しいぜ。
ま、この状況を見てくれや。
周りには、ただ人じゃねぇもんが、わらわら集まってきてるような状況ってこった。

ひしめいているってこたぁ、まさにこのことを言うんだなあ。
勉強になるよ、ほんとにな。
「で、よくもまあ…」

ぬけぬけとくっちゃべる余裕のある事だ。
「お頭さんよぅ、これの始末手伝ってくれるような優しいお人だと思っていたんだがなぁ。」

「ははは、すまないな。
それにくみすることは、私のポリシーに反することなんだよ。君ならわかってくれると思うんだがどうかね?」

はっはは、全く…「愉快」なことを言ってくれる。
目の前にいた、黒髪のガスマスクのような『黒面』をつけた男が嗤いを深める。
髪と輪郭をぼんやり、それもほんのりにしか映し出す事のない影に、隠れて顔はあまり見えなかった。

まるで_______……なんてね。

が、「目の前の男の」その余裕に満ち溢れていて、だが笑みとは全く違う。
嘲笑われている、と理解するのが少し遅かったようで攻撃を食らった「自分」がいた。
「彼」の状況などお構いなく、ついでに言わせてもらうのなら追撃を許したのも「自分」なわけなのだが、血が飛び散り脳漿ごと頭を貫かれさらに記憶が薄れていっているのは何なのか。
と、「彼」が思考しつつも攻撃をやめもしない、美麗なその御仁の御名は到底、到底書けもしないが偽名ならば書ける程度にしてくださるだろう。
まあその間にも彼の御仁の矛先は、不埒を働いた「ルシファー」へと向いているわけで、皆様はたいそう驚きのこと、このような些末なことを水に流していただければ至極光栄に存じ上げる。
それは何だったのだろうか、蹂躙に等しい行為を働いたからと言って「自分」の頭を穿つことなどないというのに、だ。
だが、だが。
目の前にいる男の名前を知っているはずで、その正体も、配偶者も知っているはずなのに。
忘れてゆくのか、と気づいた己を嘲笑うかのように数多の武器が出現して、遠慮も油断もいっそ清々しくなく貫く。それから。
それから。
『愉しませてくれ』、と。
あのいけ好かない奴と、同様に幽かで歪んだ笑みを浮かべながら。
…本当に残念なことに口元は見えないのだが。
『愉しませてくれ」と言い放ったのである。

…………こぽっ……。

遠くに笑い声が響く。遥か彼方に。嗤う。いけ好かない奴の笑い声が。
聞こえた気がした。ーーーーーーーーーーーーーーーーーー…ああ、……空耳…………か、「口惜しい」。
特筆事項は特にないな。
...さあて、愉しませてくれ、「ルシファー」。
おれも、あの方も引き裂いてくれたおまえを悦ばせよう。存分に囚われていてくれよ。
それまでふんだんに「取り込んで」やるから。
「全く、お頭さんも悪趣味なことをしてくれるね。こんなことをやらかしてくれたってんでまあ、ご立腹のようでな。俺たちがこうして来たってわけだよ。」
「それでも…あの方のやり方は気に入らないのですがそれに対してあなたも賛同しましたよね?」
忘れてゆく中で問いかけに徹する性質なのは変わらないようだ、問いかけた相手が陽炎のように揺れて消えて行くことを除けば。
「また逃げるのですかっっ、嗚呼、嗚呼!恋い慕う二人の「友人」に語らせたのはあなた方でしたか、それからは世界が!星々が!終焉を、滅亡を始めたというのに!」
追いすがる、或いは「    」ように声を張り上げるも。
届かない、何故ならば彼らは「空腹」だ。
正確に言えば彼らの従えている「獣」たち、になる。
人の形に整えてはいるが、その内面は本能のままに跋扈し、蹂躙する。
ただひたすらに、飽きもせずに。突き動かされる。
それは有り体に綴るのならば、腐乱死体がそこら中にある中死体をむさぼったりするかも。
あるいは生ごみの中から食べられそうなものを探そうとしている、野良犬や狂犬の群れといったところだろうか。
少しばかり説明が難関だがね。
それであんさんらも満足だろ?
んじゃ感謝しながら腹いっぱいになるまでクイナ、おちびさん。

「これでようやっと食べられるのう、「いただきます」じゃ。…嗚呼、妾か?妾の名は…そうさなあ…。」
耳元でささやくその唇はみられることはなかったけれど。
相手方のその表情は陶酔して、絶望に落ちる浮遊感を感じているように、そんなないまぜの感情だったに過ぎない。
………。
…せっかちな「花」達だな。
お楽しみをさせてやりたかったんだがちったあ我慢できねえのかね。
「………」
口には出さず黙った。
男が口を噤んだと思ったら、怪しい紫の光が湧き出て男を包んだ。
状況が理解できずに呆然としていたら男が消えていた。
いつの間にか血を吐いていた、痛い。
確認をしたかったが、言わずもがな限界のようだ。
「彼」の身体はそのまま、ずり落ちる形になった様子だが。
またこっちに来てご覧、君のそばにある手の温もりも全部。全部欲しくなっちゃう。

だけどいついくかわかんない、君が望まない展開の時?それとも君が望む展開の時?
全部。ーーーーーー。欲しくなっちゃう。ねえ。
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