『鬼神の救済記』

影狼

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名も無き物語。

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(……ふふ、そうなのかもしれませんね!!!
………………………………彷徨い始めてしばらく経った頃でしょう。
……与太話と【主】の『皆様』が仰る物語を二つほど「演じさせて」いただきます。
…演目 名は「訪れた宝石商と少年 に起こる喜劇」で御座い ますよォ。
もうひとつの演目名は「滅びゆく世界にあった廃神社」だよ!
………………どうぞ『皆様方』、話半分に聞いて下さいませ!
…………構いません。
『赤い霧』が未だ嘆き彷徨い続けて、啼いているであろう『×××』様の周りに出現致します。
すると、ふわっと鉄の香りがしました。
それから黒猫が現れ、鳴きます。
それはまるで哀しいことが起こったかのように、胡乱な黒猫は切なげに鳴きます。
こうして猫は往々にして何処かにあるいはあなたか、または名も知らない厚ぼったく可愛らしいぷくりとした頬をほころばせる幼子に。
それからするっ、と滑り痩けたような容貌をしておいでの素性も知れぬ君に、けれども別の斑痣をまんまと顔にせしめた冷笑を貼り付けた細顔で『何処か』に行きたそうな美しい愛を語る天女の羽衣を剥ぎ取りそのかんばせを歪ませ飛び立とうとしたであろう繰った『彼女』をその末に棄てる意地悪なボロボロのふきとうのようなパサついた髪を振り乱しながらこちらに悪態を吐く一筋の灰がかった髪を持つ女性か、はて。
閑話休題としましょうね。
翁のごとく、堅実でどこか人好きの雰囲気を醸し出しながら佇むお若い男性に、すると。
不意に語りました、往々にしてございましたと。
こうして猫は往々にしてかく語りき、されど此度はゆるされるか。
すきは、ゆらりと揺れるばかりでも風に花弁を。
あるいは一輪のくっついた証を見せびらかすことなくそっと、下にクナイをありがとうと受け取って刺すかのように滑空しながらはためくことでしょう。
それまでに放っておきましたとて、死はこの瞬間も御身に刃を向けることと相成りましょう。
あるいは躯が駆け回りそれを合図にダンスを始めるのも貴方の役割なのですよ、Lady。
さあ、沈黙なき後も声を上げ続ける罰を受けたはずの清純な聖女の氷を奪った罪多き者よ。
その代償を願いなさい、海に沈みながらも万能の通貨たりえないなにかに。)

とある国に訪れた宝石商がおりました。
その宝石商が売る宝石はどれも美しく、それなのに欲しいと思う方の手を離れてしまう気難しい宝石達なのでした。
それでも欲しいのだと人々が、様々な御仁が、宝石商の元へと集まって参りました。
其処へ現れたのは年端もいかないボロ布を着て面で顔を隠した少年です。
手には不思議な形の弦楽器を持って御座いました。
少年は行われる正義の執行も気にせず弾き語りをしました。
宝石商も気にせず宝石を売りました。
少年は「喪われた世界」の物語を。
それから「囃子の音に誘われた可愛らしい女の子」の物語を弾き語りました。
それから少年は「正義とは空恐ろしいもの」、「喪ったモノ共の怨嗟はここまで届くんだよ」とも歌に乗せたのです。
なんということでしょう、人々の形をしていたモノ達が数多の攻撃を受け異形へと変わったではありませんか!
骨は裂け、内臓は砂のごとく体外にさらさらと流れ出し、皮膚はボロボロと落ち、目も原型を保てなくなり、外にまろび出た状態で更に膨れ上がり、弾け飛びました。
それでも一部は「保って」いたのです。
「保てず」狂ってしまえた方がよほど楽だったのにもかかわらず。
すると、攻撃させる暇も与えず宝石商がトドメを刺したのです。
そして、『世界』は悲鳴を上げる暇さえも与えられず引きずり込まれて「宝石商」と「少年」は次へと探訪することとなりました。
…之にて、「訪れた宝石商と少年に 起きた喜劇」の演目は終幕と 相成りました。

「宝石商」と「少年」だけでなく「可愛らしい女の子」も、「世界を喪った」モノも、“皆様方”、“皆様方”も【人間】を信頼することも、好きになることも、よりかかることも、しなくなり、それすらも何もかもなくなりました。
胡乱な黒猫が赤い霧に紛れて消えていきます。

……次に演じさせていただくのは「滅びゆく世界にあった廃神社」でございます。
白い身体に赤い粒子を纏った不思議な犬が『   』様の目で判別できないほど速くやって来ました。
囃子の音に誘われた女の子が訪れたのは、ボロボロに朽ち果てた廃神社にございました。
すると「秘色」の炎が廃神社から立ち上ったのです。
そこに映るのは、同色の炎に包まれたかつての神社でした。
遠くに悠々と逃げていく黒色の袴を着た、目つきの悪い男性の姿が微かに見えました。
口元は不愉快げに歪んでいました。
上空の方に、黒い翼が見えました。
面白そうに、心底愉快そうに笑い声を上げる『男性』の低い声も聞こえたのです。
炎の中にいるのは赤い角を持つ、黒い面を着けた細い体躯の人の形をしているとは言えど異形の鬼そのものでした。
その雰囲気は眺めることしかできないのに、人の仔を惹き付ける程に妖しかったのです。
囃子の音に誘われた女の子の記憶に刻まれるほど引き込まれることとなりました。
細い腕、腕にあった刀傷、頬の部分に描かれていた模様、胸に苛烈に蠢く呪印がどれもこれも妙に目につくのです。
それから隠された素顔でございます。
その神社はかつて知る人ぞ知る神社だったのですが、巫女に迫る男性がおりました。
かつて、美しく流れる仕草をするお人がおりましたよォ。
世界を終わらせる力を持っていたのですが、黒色の袴の男性に攫われて無理やり襲われ食欲に負け、異形になり、それでも美しい御仁でした。
それから協力者と共に、逃げ出そうとしたのです。
言葉足らずの悪逆非道と言われる男たちの力も借り、それでも逃げることは叶いませんでした。
【世界】の『皆様』が助けてくれることなどないと理解しておりました。
それは聡明なお人でした。
ことごとく謀略を破られ、暴走を仕向けられ、その住む神社も燃やされ、巫女様ももう既にいなくなった後、【世界】すらも殺された後に自害したのでございます。
それすらも謀略でした。

それから翼が動き、不気味な笑みを浮かべるだけの男性の姿と燃えていく神社を最後に、廃神社は「秘色」の炎を立ち上らせ揺らめくうちに消えてしまったのでございます。
そして女の子は眠気に襲われ、眠ってしまいました。
……之にて「滅びゆく世界にあった廃神社」の演目は終幕と相成りました。
白い身体に赤い粒子を纏った犬が再び、素早く走り『何処か』へ消えていきました。
(……つまらない、ろくでもない、どうでも良い【悪辣な【主】の“皆様方”】の織り成す【闇】の物語に御座いました。
………長々とかたってしまいましたね。
……【人間】なんぞ信頼するに値せぬ。
ど、どうしたんですか?!『かの劇場のモノ』!
ああ、やはりそうなってしまうんだね。『ナイスガイ』。
やはり……あの御方の……あの御仁達の護衛だから……眷属だから。
………大丈夫、ちょっと混乱しているだけ。
僕がなだめておくから……『続き』頼むよ。『かの劇場のモノ』。
は、はいっ!?
………ああ、行ってしまわれた。
それはまるで愚かな【人間】のようですね、『人の仔』様。
私達の世界にいる『人の仔』達とは大違いです。
【反神】様方は信じるのを、信頼をほとんどなされません。
永い永い時間をかけて……それこそ気が遠くなるほどの時間をかけて『人の仔』達と共に居られるのです。
『人の仔』達は何京も……何正も……星の数ほど転生しているのです。
生まれ変わっているのです。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も……。
…『人の仔ら』も 元々は【人間】で御座い ました。
……救いようのない【人間】でございました。
……何度もの救済も意味をなさない程の。
……けれどその星の数ほどの中に「聡明」な【人間】が一人だけいました。
………「聡明」な【人間】は自身がどのくらい愚かなことをしていたのか……内省したのです。
省みたのです。
その上で自身を罰しました。
すると『人の仔』に生まれ変わりました。
【反神】様方はそれを見て、大層喜びました。
それからすぐさま『人の仔』を使い、【人間】を殺しました。
すると【反神】様方の目論見通りに、『人の仔』に生まれ変わったのです。
…自らの信じるべきモノ達の、【主】の皆様方の為では御座いやせん。
自らの為です。
あくまで自らの信じるべきモノの、為ではなく。
自らの為に、なのです。
それが廻りに廻って【主】の“皆様方”の為になっているだけなのでした。
…それだけで御座いますよォ。
それ故に。
蘇生はできません、転生はできますが。
生まれ変わることはできるのです、生き返らせることができません。
それ相応の条件、それ相応の代償があるのです。
失うものがあるのです。
ですが、それを私達の口から申し上げることはありません。
………宝石商、ですか、あれは生きている宝石なのです。
…それは『人の仔ら』と【人間】を見分ける力を持っているのでさ。
…あの御仁は、『人の仔』の姿をしているだけの【反神】様で『人の仔ら』を逃がして御座いました。
……協力者と悪逆非道と言われているモノ達の手を借り、力も借り受けたのです。
…………『案内人』の中にいるモノ共の一匹にすぎません。
……『赤い霧』が晴れると数多の武器が『人の仔』様の目の前に現れることでしょう。
「まだ」騙るつもりなのですね、忌々しい『神々』よ。
……『ーーー』様。)
「おいおい……始めてみる顔じゃねぇか。
見てたよ、「ーーー」サマ。」
(……私、ですか?
……生きている宝石、と確かに言いましたが……。
あなたが言ったのですよ、「語らなくてもいいのだと」そう言っていたのです。
ですので私は何も語りません。
我らは【人間】など信じません。
……『人の仔』ら、そのモノら、あるいは……。
それから【主】の“皆様方”なのです。
………「神々」が語ることはしません、しようはずがありません。
しようとも思いません、それらが。
騙ることしかしてこなかったのですから。
【人間】共もそう、騙るのみです。
「それら」が語ることは致しません、騙ることは致しますが。
『我ら』は語ることは致しますが、騙ることは致しません。)
『ああ。見ていたぞ。お前を。お前達を。それもあるが『お前ら』をな。
……お前らなら知っているのだろう?
けど語ることはしない。そうだろ?
……残念、「彼奴」が仕向けていそうだ。俺はこの辺で。……ああ。土産だ、また死合おうや。屑ども。』
(ええ、そうです。
…茶色っぽい靄が周りに現れましたねェ。
………そうして、『人の仔』は眠ってしまいました。
その直前に目の前が赤くなり、『人の仔』様は幻覚を見ることでしょう。
……騙るのです、それらは。
………また目覚めたならばその時に、ああけれどその時は私ではなく『かの劇場のモノ』に……。)
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