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61 自分のせい
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ぼうっとしながらペンを指で触っていると、デスクの前に人が立った。
冬次は視線を上げる。
「社員の女性が何度か声をかけてくれたみたいだけど冬次さん真剣に考え事してたみたいだから、直接どうぞって席に通してくれました」
「善光くん、ほんとごめんね」
「いえ、僕こそ職場まで押しかけてごめんなさい」
弱々しく微笑む七草の頬はデートした時より痩せて疲れてみえた。
「どっか具合悪いんじゃない?」
「大丈夫。それより冬次さんに会いたくて」
さっそくきたかと、冬次に緊張が走る。七草が詳細を話し出す前に、冬次は止めた。
「外で話そっか」
勤務時間だがプライベートな話。不動産屋内は人目が気になる。
最寄りのチェーンのカフェに場所を移すと、パソコンを広げた仕事中の会社員や勉強中の学生客で適度に席が埋まっていた。ふたりで同じブレンドのアイスを頼み、テラス席に腰を落ち着かせる。一口飲んだ。好きな味だが、喉が乾くような苦味。コンビニで缶コーヒーを飲んだばかりであることを思い出す。カフェインの過剰摂取でやや頭痛がし、無意識にこめかみを揉んだ。
「寝不足ですか?」
自分の方こそ疲れた顔をしているのに、相手の心配をする七草に苦笑を返さずにいられない。
「俺はただのコーヒーの飲みすぎ。何があったのか話してくれる?」
「うん」
七草は気取ったふうに電子タバコを咥えた。
「善光くんってそういうの吸うんだね」
「うん。でも家族の前じゃ絶対吸わないですよ」
「だよね」
冬次は感想に悩む唇をつまむ。七草がぷっと吹き出した。
「似合わないって思ったでしょ」
「えっ、まぁね。ごめん」
「僕も自分で思う時あるから。だから吸ってるんだよ。どうしようもなく自分を裏切りたくなる時ってあるでしょ?」
オメガらしく慎ましやかなふるまいと品性を求められ続けてきた七草。彼は紫炎を吐き出して、声の調子を不自然に繕う。
「まぁこんなの何の反抗にもならないけど。昔と違って改良されてほとんど体に無害だっていうし。子供だよね、僕って」
そして彼はうつむいた。
「知られたくない姿なのに俺には見せてくれるんだね。俺はまだまだ他人ってことかな」
「その言い方ってちょっといじわる。逆なのにな」
冬次は、やんわり避けようとした七草からの好意をあまんじて受け止める。きゅっと下唇を噛む七草と視線が絡んだ。
「話聞くよ」
そう言って話を戻す。
「僕は」
「うん」
「僕はそれなりにがんばってきたと思う。でも、やっぱりオメガだから・・・・・・仕事から外されちゃった」
七草は目のふちに涙をいっぱいに溜め、こぼれないよう顎を上向ける。
けれど盛り上がった涙が一粒こぼれ落ちると、諦めたのか、静かに嗚咽を洩らした。
「君が悪いんじゃないと思う」
咄嗟に慰めを言いながら、血の気が引いた。冬次のせいだ。冬次がやらかしたあのことのせい。
兄貴が七草ごと南雲から遠ざけようとしている。
ぼろぼろになって涙を流す七草を見ていると、南雲を想ってした行動が正しかったのか自信がなくなってくる。自分勝手な暴走の巻き添えを喰った七草は真面目に勤務していただけで、ナナクサ製薬の悪事に加担していた事実とそうせざるえなかった環境を天秤にかけ、七草が職を解かれたことをはたして自分は喜べるか。喜べない。
「ごめん。申しわけない」
「あはは、どうして冬次さんが謝ってくれるの」
冬次は適切な説明が出てこず膝の上で拳をくしゃりと握った。
恨まれるべきなのに、兄貴が冬次の関連をいっさい喋っていないせいで、七草は一途に冬次を頼ってきた。
「今夜、会えるかな」
そろそろ戻らなければならない時間だ。話を聞いてあげただけで終わりにはどうしてもできない。
「ほんと? うちに来てくれる?」
潤んだ目がハッと大きくなった。
「わかった。仕事終わったら連絡する。あー・・・・・・俺は会社戻るけど善光くんはどうする」
「僕はコーヒーを飲み終えるまでいます」
七草は嬉しそうにはにかんでテーブルからグラスを浮かせる。
「そっか、じゃ、あとでね」
「うん」
七草と別れカフェから出ると冬次のスマホが着信を告げた。道路向かいに兄貴の車が停まっており、ウィンドウ越しに冬次を見ていた。
「もしもしクソ兄貴、善光くんは悪くない。元の役職に復帰させろ」
冬次は唸るように応答する。
「彼は可哀想になぁ。お前が責任取らなくちゃな?」
「ふざけるなよ」
「ふふ、これで冬次も懲りたかな。私は大事なプロジェクトを守るのに必死なんだよ。これ以上お前に引っ掻き回されたくないからね」
「ああ俺が悪かった。だから、はっ?」
呆然と通話の切れたスマホを見つめる。兄貴は一方的に言いたいことだけを言って走り去った。
「今の電話するためだけにあそこにいたのかよ」
気合いの入れた仕返しをご苦労さまだ。
自分で蒔いた種に足をすくわれてしまった。
◆
それから数日。デスクワーク中に目線を感じる。金子にジトッと凝視されていた。こちらが視線に気づいていることに、金子も気づき、彼女は勢いよく席を立った。
「社長、今日も残業なしで帰ります?」
なんだろう。何かのテストだろうか。
「びっくりした。そのつもりだよ。なんで?」
彼女はにっこり笑う。冬次は頬をひくつかせた。
「みんなで飲みに行くんですけど社長も行きましょーよ」
普通のお誘いに冬次は胸を撫でおろし、首を横にふった。
「俺は予定があるからみんなだけで楽しんできなよ」
この言葉に、にたりとエクボをへこませる金子。
「やっぱり今日も予定があるんですねぇ・・・・・・」
「えっ、そんな目で見ないでよ」
「だってぇ、社長ってば休み明けぼんやりしたり帰りが早くなったり変なんですもん。あやし~なぁ」
「やだな。克己さんのお見舞いだよ」
「ほんとに~?」
怪しんで上げられた語尾に冬次は何度もうなずく。色恋の話を期待する金子の表情と目を合わせずらく、重要書類に集中するふりをして眉間にぐっと皺を寄せた。
金子が目を丸くして態度を改める。
「藤井さんの調子はいかがですか」
おずおず訊ねられ、冬次は紙面に視線を置いたまま答えた。
「見た目は元気そうだよ。病気のことは俺にはあまり教えてくれないからさ」
「そうですか。そのうち会社のみんなでお見舞いご一緒させてください」
「ああ、今度な。都合のいい日を聞いておくよ」
「ありがとうございます」
金子はしおらしく頭を下げて席に戻り、今度は他の社員に呼ばれて話しはじめた。
冬次はふぅと息をつき、読んでいた書類を引き出しにしまい鞄を手に取った。この後は付き合いのある大家と会う予定があり、そろそろ出なければ待ち合わない。
戻りは時間的にも距離的にも直帰の予定。ホワイトボードに予定を書き込んで出かけた。
◆
伸び放題の雑草の中を進むのに革靴は向いてない。大家との約束を終えて、直帰前に寄る場所ができた冬次は田舎道を歩いていた。
太陽が隠れたというのにしつこい残暑が追い打ちをかけ、冬次のビジネスシャツは汗で肌にはりついて、来たことを後悔する不快な気分を味わう。
滝のように止まらない首の汗をぬぐうと、冬次はスラックスのポケットに手を突っ込み、先ほど訪問した大家に借りた鍵を触った。
キーリングにつけられた錆びた二本の鍵は新規に取引させてもらえることになった空き家の鍵だ。うち一本は納屋だが、鍵の錆びつき加減からほったらかし具合が察せられた。
立地の悪条件もあり、取り壊しを検討されていた古い物件で、辺鄙な場所に建つ空き家に興味をもっていると話すとそりゃめちゃくちゃに驚かれた。ま、当然。しかしその場所というのが南雲が育った児童養護施設〝つばめの家〟の付近にあった。冬次の狙いはそこ。
ど田舎だが近所にもぽつぽつと家があり、昔から暮らしている住民ならつばめの家に活気があった頃から廃業になるまでの一部始終を見ている。彼らからなら情報収集も可能ではないのかと。
新規取引の話はこの近辺を探る用事を作るついで、ちゃっかり仕事したまでだ。
ちなみに大家は息子に代替わりしたばかりで情報はなしだった。普段は都会のマンション暮らしだそうで、当物件に足を運んだことはないと言っていた。
とのことで冬次は空き家に車を停め、つばめの家に歩いて向かっている。暗くなってきた道をスマホのライトを頼りに、足元の草につまずきなりながら進んでいく。前は南雲の案内があったので感じなかったが、雑木林に沿った道は前も後ろも左も右も似たような景色で、うっかり迷子になったら笑えない。
マジで引き返そうかと考えはじめた時、チカッと遠くに見える建物の窓が光った。
冬次はかけ出す。
空き家に着いてすぐ、家の中にこもった空気と湿気を追い出すため部屋中の雨戸を開けてまわっていた時、二階の窓から見えたつばめの家の敷地内で明かりが見えた気がしたのだ。明かりは窓の柱に隠れながら少しの間チラチラ移動して消えた。
「くっそぉ、誰もいねぇ」
ひと足遅かった。息を切らして建物内を見てまわったが明かりの犯人は去った後だった。
でも確かにこの目で見たのだ。幽霊じゃないなら先客がいたんだ。汗だくになって足を運んだ苦労に見合う収穫がなく、冬次は肩を落とした。
一刻も早くシャワーを浴びてさっぱりしたい。うんざりする道のりをふたたび歩いて車まで戻り、運転席に乗り込むとただちに発車させた。
言っておいた時間から少し遅れてしまったけれど彼は怒らないだろう。
不動産会社付近まで帰ってきた冬次は、通い慣れた道のように七草のマンションへハンドルを切ったのだった。
冬次は視線を上げる。
「社員の女性が何度か声をかけてくれたみたいだけど冬次さん真剣に考え事してたみたいだから、直接どうぞって席に通してくれました」
「善光くん、ほんとごめんね」
「いえ、僕こそ職場まで押しかけてごめんなさい」
弱々しく微笑む七草の頬はデートした時より痩せて疲れてみえた。
「どっか具合悪いんじゃない?」
「大丈夫。それより冬次さんに会いたくて」
さっそくきたかと、冬次に緊張が走る。七草が詳細を話し出す前に、冬次は止めた。
「外で話そっか」
勤務時間だがプライベートな話。不動産屋内は人目が気になる。
最寄りのチェーンのカフェに場所を移すと、パソコンを広げた仕事中の会社員や勉強中の学生客で適度に席が埋まっていた。ふたりで同じブレンドのアイスを頼み、テラス席に腰を落ち着かせる。一口飲んだ。好きな味だが、喉が乾くような苦味。コンビニで缶コーヒーを飲んだばかりであることを思い出す。カフェインの過剰摂取でやや頭痛がし、無意識にこめかみを揉んだ。
「寝不足ですか?」
自分の方こそ疲れた顔をしているのに、相手の心配をする七草に苦笑を返さずにいられない。
「俺はただのコーヒーの飲みすぎ。何があったのか話してくれる?」
「うん」
七草は気取ったふうに電子タバコを咥えた。
「善光くんってそういうの吸うんだね」
「うん。でも家族の前じゃ絶対吸わないですよ」
「だよね」
冬次は感想に悩む唇をつまむ。七草がぷっと吹き出した。
「似合わないって思ったでしょ」
「えっ、まぁね。ごめん」
「僕も自分で思う時あるから。だから吸ってるんだよ。どうしようもなく自分を裏切りたくなる時ってあるでしょ?」
オメガらしく慎ましやかなふるまいと品性を求められ続けてきた七草。彼は紫炎を吐き出して、声の調子を不自然に繕う。
「まぁこんなの何の反抗にもならないけど。昔と違って改良されてほとんど体に無害だっていうし。子供だよね、僕って」
そして彼はうつむいた。
「知られたくない姿なのに俺には見せてくれるんだね。俺はまだまだ他人ってことかな」
「その言い方ってちょっといじわる。逆なのにな」
冬次は、やんわり避けようとした七草からの好意をあまんじて受け止める。きゅっと下唇を噛む七草と視線が絡んだ。
「話聞くよ」
そう言って話を戻す。
「僕は」
「うん」
「僕はそれなりにがんばってきたと思う。でも、やっぱりオメガだから・・・・・・仕事から外されちゃった」
七草は目のふちに涙をいっぱいに溜め、こぼれないよう顎を上向ける。
けれど盛り上がった涙が一粒こぼれ落ちると、諦めたのか、静かに嗚咽を洩らした。
「君が悪いんじゃないと思う」
咄嗟に慰めを言いながら、血の気が引いた。冬次のせいだ。冬次がやらかしたあのことのせい。
兄貴が七草ごと南雲から遠ざけようとしている。
ぼろぼろになって涙を流す七草を見ていると、南雲を想ってした行動が正しかったのか自信がなくなってくる。自分勝手な暴走の巻き添えを喰った七草は真面目に勤務していただけで、ナナクサ製薬の悪事に加担していた事実とそうせざるえなかった環境を天秤にかけ、七草が職を解かれたことをはたして自分は喜べるか。喜べない。
「ごめん。申しわけない」
「あはは、どうして冬次さんが謝ってくれるの」
冬次は適切な説明が出てこず膝の上で拳をくしゃりと握った。
恨まれるべきなのに、兄貴が冬次の関連をいっさい喋っていないせいで、七草は一途に冬次を頼ってきた。
「今夜、会えるかな」
そろそろ戻らなければならない時間だ。話を聞いてあげただけで終わりにはどうしてもできない。
「ほんと? うちに来てくれる?」
潤んだ目がハッと大きくなった。
「わかった。仕事終わったら連絡する。あー・・・・・・俺は会社戻るけど善光くんはどうする」
「僕はコーヒーを飲み終えるまでいます」
七草は嬉しそうにはにかんでテーブルからグラスを浮かせる。
「そっか、じゃ、あとでね」
「うん」
七草と別れカフェから出ると冬次のスマホが着信を告げた。道路向かいに兄貴の車が停まっており、ウィンドウ越しに冬次を見ていた。
「もしもしクソ兄貴、善光くんは悪くない。元の役職に復帰させろ」
冬次は唸るように応答する。
「彼は可哀想になぁ。お前が責任取らなくちゃな?」
「ふざけるなよ」
「ふふ、これで冬次も懲りたかな。私は大事なプロジェクトを守るのに必死なんだよ。これ以上お前に引っ掻き回されたくないからね」
「ああ俺が悪かった。だから、はっ?」
呆然と通話の切れたスマホを見つめる。兄貴は一方的に言いたいことだけを言って走り去った。
「今の電話するためだけにあそこにいたのかよ」
気合いの入れた仕返しをご苦労さまだ。
自分で蒔いた種に足をすくわれてしまった。
◆
それから数日。デスクワーク中に目線を感じる。金子にジトッと凝視されていた。こちらが視線に気づいていることに、金子も気づき、彼女は勢いよく席を立った。
「社長、今日も残業なしで帰ります?」
なんだろう。何かのテストだろうか。
「びっくりした。そのつもりだよ。なんで?」
彼女はにっこり笑う。冬次は頬をひくつかせた。
「みんなで飲みに行くんですけど社長も行きましょーよ」
普通のお誘いに冬次は胸を撫でおろし、首を横にふった。
「俺は予定があるからみんなだけで楽しんできなよ」
この言葉に、にたりとエクボをへこませる金子。
「やっぱり今日も予定があるんですねぇ・・・・・・」
「えっ、そんな目で見ないでよ」
「だってぇ、社長ってば休み明けぼんやりしたり帰りが早くなったり変なんですもん。あやし~なぁ」
「やだな。克己さんのお見舞いだよ」
「ほんとに~?」
怪しんで上げられた語尾に冬次は何度もうなずく。色恋の話を期待する金子の表情と目を合わせずらく、重要書類に集中するふりをして眉間にぐっと皺を寄せた。
金子が目を丸くして態度を改める。
「藤井さんの調子はいかがですか」
おずおず訊ねられ、冬次は紙面に視線を置いたまま答えた。
「見た目は元気そうだよ。病気のことは俺にはあまり教えてくれないからさ」
「そうですか。そのうち会社のみんなでお見舞いご一緒させてください」
「ああ、今度な。都合のいい日を聞いておくよ」
「ありがとうございます」
金子はしおらしく頭を下げて席に戻り、今度は他の社員に呼ばれて話しはじめた。
冬次はふぅと息をつき、読んでいた書類を引き出しにしまい鞄を手に取った。この後は付き合いのある大家と会う予定があり、そろそろ出なければ待ち合わない。
戻りは時間的にも距離的にも直帰の予定。ホワイトボードに予定を書き込んで出かけた。
◆
伸び放題の雑草の中を進むのに革靴は向いてない。大家との約束を終えて、直帰前に寄る場所ができた冬次は田舎道を歩いていた。
太陽が隠れたというのにしつこい残暑が追い打ちをかけ、冬次のビジネスシャツは汗で肌にはりついて、来たことを後悔する不快な気分を味わう。
滝のように止まらない首の汗をぬぐうと、冬次はスラックスのポケットに手を突っ込み、先ほど訪問した大家に借りた鍵を触った。
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立地の悪条件もあり、取り壊しを検討されていた古い物件で、辺鄙な場所に建つ空き家に興味をもっていると話すとそりゃめちゃくちゃに驚かれた。ま、当然。しかしその場所というのが南雲が育った児童養護施設〝つばめの家〟の付近にあった。冬次の狙いはそこ。
ど田舎だが近所にもぽつぽつと家があり、昔から暮らしている住民ならつばめの家に活気があった頃から廃業になるまでの一部始終を見ている。彼らからなら情報収集も可能ではないのかと。
新規取引の話はこの近辺を探る用事を作るついで、ちゃっかり仕事したまでだ。
ちなみに大家は息子に代替わりしたばかりで情報はなしだった。普段は都会のマンション暮らしだそうで、当物件に足を運んだことはないと言っていた。
とのことで冬次は空き家に車を停め、つばめの家に歩いて向かっている。暗くなってきた道をスマホのライトを頼りに、足元の草につまずきなりながら進んでいく。前は南雲の案内があったので感じなかったが、雑木林に沿った道は前も後ろも左も右も似たような景色で、うっかり迷子になったら笑えない。
マジで引き返そうかと考えはじめた時、チカッと遠くに見える建物の窓が光った。
冬次はかけ出す。
空き家に着いてすぐ、家の中にこもった空気と湿気を追い出すため部屋中の雨戸を開けてまわっていた時、二階の窓から見えたつばめの家の敷地内で明かりが見えた気がしたのだ。明かりは窓の柱に隠れながら少しの間チラチラ移動して消えた。
「くっそぉ、誰もいねぇ」
ひと足遅かった。息を切らして建物内を見てまわったが明かりの犯人は去った後だった。
でも確かにこの目で見たのだ。幽霊じゃないなら先客がいたんだ。汗だくになって足を運んだ苦労に見合う収穫がなく、冬次は肩を落とした。
一刻も早くシャワーを浴びてさっぱりしたい。うんざりする道のりをふたたび歩いて車まで戻り、運転席に乗り込むとただちに発車させた。
言っておいた時間から少し遅れてしまったけれど彼は怒らないだろう。
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