え?私、最強なんですか?~チートあるけど自由気ままに過ごしたい~

猫野 狗狼

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31、第二小隊での一日 5

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「いやぁ、うまそうな匂いに誘われたんでな。つい、うっかり」

 いやいや、うっかりで済まないし。

「ヒライのご飯は魔力なんでしょ」

「あぁ、そのとおりだ。ただ、楽しむために普通の人間が食べるものを俺も食すことがある。微量だが、魔力もこもってるからな」

(え?それって凄くない?)

魔力がこもってる=魔力回復ってことだよね。でもそう考えたら、作った人の魔力量はどうなるのかが気になる。今度暇な時でも調べとこーっと。

「じゃあ、アズマは?」
『我もヒライと一緒じゃ。ただ付け加えるとしたら、始めて見る人間の食べ物に興味が湧いたからかのぅ』

そうだった。アズマは今まであの森から出たことがなかったんだっけ、仕方ないなぁ…。

「ということで、ザンさん、ネロさん、皆さん。この二人も一緒に食べてもいいですか?」
「いやいや、意味わかんないし 」
「はははっ、面白いじゃないか!いいぞ 」

 ツッコミを入れてくるネロさんに対して、ザンさんは脳天気な反応だった。バカがなせる技とでもいえばいいのか。

「おいコラ、バカザン。なにいってんの?こんな得体の知れないヤツら…」
「やっぱり、ダメ…ですか?」

 ネロさんはヒライ達を歓迎していないようだ。
 ……うぅ、どうしたらいいんだろう?ちょっとテンパってきたし、涙でそう…。

「うっ……、仕方ないなー、特別だよ!後でちゃんと説明してもらうからね!」
「ありがとうございます。でも、それはカイン団長の許可をとってからで」
「わかったよ!」

 彼は不貞腐れたようにそっぽを向きながらも了承してくれた。

 あぁ、よかった。一先ず安心だ。
 私はヒライとアズマを私のサイドに座らせ、「いただきます」をやり直し、黙々と食べた。

(んー、やっぱり普通の材料じゃないからちょっと違うな。例えるなら、日本料理を外国の食材を使って作ったような…って、例えになってないか)

黙って口に料理を運んでいると、ヒライが私のほうに寄ってきて

「なぁ、今の俺どうよ?」

意味のわからん質問をしてきた。

(え?どうよって言われても、とくに変わったところは…あぁ、一つだけあるね)

「えっと、ケモミ…じゃなかった、普通の人と同じ耳だね」
「ふふん、気づいたか。あっちの耳だと獣人に思われるからな」

 ヒライはいつもだったらしっぽを振っているだろう上機嫌な表情で、胸を張って答えた。

「別にいいんじゃないの?可愛いし」
「よくない。それに、可愛いってなんだ?俺は男なんだぞ。女になれないことはないが…」

 そうなんだ。なんだか面白い話を聞いた気がする。

「へぇ、そうなんだ…今度見せてくれる?」
「むっ、うぅ、わかった。まったく、お前さんにゃ敵わんな」

 はぅっ、イケメンの照れ顔&はにかみスマイル頂きました!

 あまりしたくは無いようだけれど、私の為にと了承してくれるところに彼の優しさを感じた彼の優しさを感じた。

(ちょっと顔熱くなってきちゃった)

 平常心、平常心…と考えてると、アズマも寄ってきて。

『ヒライばかり狡いぞ。我も仲間に入れよ』

 上から目線で子どものような発言をした。
 女性にも見える上、ドキッとするような色っぽさもあって困る。

(面倒だなー)

「はいはい、二人で勝手にやってねー」
「『なっ、お前さん(そなた)がいねぇ(おらん)とダメだ!』」
 
 ワオ、息ぴったり。
 いつも不仲なのに、こういう時だけは息がぴったりな二人に呆れて言葉が出ない。

「そうなんだ、でも私はご飯食べるのに忙しいから、これ以上騒ぐんなら契約破棄しちゃうよ?」

 そういう面倒な時は脅しが一番だ。すると、効果はてきめん。

「やめてくれ!」
『申し訳なかった、すべて我が悪かった』

 取り乱しながら私に謝ってくる。
 あまりにも一生懸命に謝ってきて、可哀想に思えたので許してやった。
 何とか二人が大人しくなったので食堂の中を一度見渡してみると、皆呆然としていた。

「あははー、気にしないでください」

 私がそういった時、全員が思った。

((((((((お前、何者だよ!?))))))))

 私はそんな皆の思いもつゆ知らず、普通に食事を再開した。
 マイペースな私を見て、皆も食事を開始。

 モグモグ、モグモグ…………バンッ!

「ぐっ……」

 あ、危なかった。喉に詰まるところだった。
 音のした方を見てみると、ザンさんが机に突っ伏していた。

(ナニヤッテンノ?)

 私は謎の行動に戸惑っていた。
 彼は小刻みに肩を震わせている。

「う、旨い……旨すぎる!」

(え?)

 うめき声に近いそれは、聞き取りずらかったが確かに私の料理を美味いと言ったような気がした。黙ってザンさんを見ていると、突然顔をあげた。

 睨まれたわけではないが、自然と肩が跳ねた。
 視線があったかとおもうと同時に、ザンさんは席を立ち私の方へヅカヅカと詰め寄ってきた。 

「ガキんちょ、お願いがあるんだが…」
「嫌です」

 お願いごとの内容を聞かずに即答で断る。

「いや、まだ全部言ってないだろうが」

 最初から聞く気ないんで大丈夫です。

「どんな内容でも嫌です」

(絶対、料理当番とかそこらへんのお願いでしょ)

「これからも料理をお願いしたかったんだが…」

 ほらね。私の思った通りだった。

「嫌です」
「そんなに嫌か?」

 あまりにも私が表情ひとつ変えずに淡々と断り続けたからか、私の前にしゃがんで仕方から覗き込んできた。
 眉を下げ、こちらを覗うザンさん。
 その表情は、悲しげで……。
 強気そうなワイルドイケメンの顔がだんだんと捨てられた子犬のように見えてきた。

「……たまにだったら、やってあげてもいいかもしれません」

 結局、私の方が根負けしてしまう。

「本当か!」

 途端にザンさんは周りに花が咲くような笑顔になった。
 
 …チョロいと言われても仕方ない。甘んじてチョロインという不名誉な称号を受けようじゃないか。

「はい」

 つくづく私はイケメンとかに弱いな、と頭の片隅で考える。
 溜息をつきながら直さないとなと思っていると、ガバッとザンさんに抱きしめられた。

「『なっ』」

 ヒライとアズマは目を見開いてこちらを見てくる。

(うん、何を思ってるか手のひらのようにわかるよ。だって私と同じだもん)

 何やってんだこの野郎と考えながら、時間がただ過ぎるのを感じていた。ワンワンキャンキャン二人が吠えているが、何を言っているのか全く耳に入ってこない。
 その後、ネロさんが離してくれて何とか助かった。ご飯を食べ終わり、皆は訓練を再開した。夜になってご飯を作り食べ終わった後、本日寝る部屋へと向かい扉を開けると驚いた。

「よう、ガキんちょ」

 そこにはザンさんがいたのだ。私は無言で扉を閉めた。

「いやいや、何も閉めるこたぁないだろ?」

 私が閉めた扉を開けながら、彼は苦笑する。

「いえ、現実として受け止めたくなかったので」
「ひっでぇ」

 まぁ、単なるジョークだ。
 彼にもそれが分かったようで、口では酷いと言いながらもその表情は優しげに笑っていた。

「とりあえず、今日はよろしくお願いします」
「おっ、おう」

 私が礼儀正しくお辞儀したら、戸惑ったように頭を軽く下げるザンさん。

「私はどこで寝たらいいんですか?」
「あぁ、そこにベッドがあるだろ?そこに寝ていいぞ。俺はソファーに寝るから」

 紳士だ、ここに紳士がいるぞ!
 私の中にある彼の印象からは想像も出来なかった言葉だった。

「いえ、私はソファーでいいです。体も小さいし、なにより隊長さんをそんな所に寝かせるのはダメだと思います」

 しかし、素直にそれに頷くことは出来ない。それをしてしまったら、私的に厚顔無恥というやつだ。

「お前も強情だなぁ。なら、ベッドに一緒に寝るのはどうだ?」

 溜息をつき、頭を掻きながらザンさんはそんな提案をしてきた。
 まぁ、それなら…ということで、私は彼と一緒に寝ることにした。思ったよりも狭かったので抱きしめられながら眠ったのだが、意外と安心して眠れた。
 感想としては、

(しっかりしてる体って安心できるもんだねー)

 の一言に限る。
 そして、第二小隊での一日が終わった。
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