え?私、最強なんですか?~チートあるけど自由気ままに過ごしたい~

猫野 狗狼

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55、学園入学式 前夜

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 さて、騎士団に守られて数年。私は十二歳になった。いきなり歳をとりすぎだと感じる人もいるだろうが、気にしないことだ。六年間の間、私はひたすら魔法と剣術の訓練に勤しんだ…わけでもなくて、どちらかと言えばゆるい感じで訓練をしていた。
 変わったことと言えば歳をとったことと、騎士団に正式に入団させてもらえたことだ。女だから無理だと思っていたが、男の振りをしていたのでそこはセーフだった。反対する人がいるのでは?とも思ったが、全員反対せずむしろ喜んでいた。主に、食の方で。
 そんなこんなで、十二歳で騎士団入りした私は今「フェアリーエンジェル」…つまりアルフォンスのおじさんがいる店に来ている。来ているという表現は適切ではないかもしれない。正しくは、店の前で立ち往生している。
 理由は…

「ねぇ、団長さん。本当にここで私の軍服作ってもらってるの?」
「あぁ、間違いない。ここで作ってもらってる…まぁ、こんなキラッキラして可愛い感じの店の見た目じゃ疑いたくはなるよなぁ」

 そう、店の見た目が可愛すぎるのだ。数年前会ったあの厳ついおじさんからは想像ができないくらいには。
 隣にいる私の軍服を一緒に受け取りに来てくれた団長さんも少し遠い目をしている。しばらく外で二人並んでいると、店の中からおじさんが出てきた。

「おお、久しぶりだな嬢ちゃん。何年ぶりだったっけか?大きくなったなぁ」
「お久しぶりです、アルフォンスさん。今日は私の軍服を受け取りに来ました」

「あ?あれは嬢ちゃんのだったのか?なるほどな、だからサイズがちっさくてデザインも少し変えてくれって言ったわけだ」

 ん?団長さん達の軍服とは少し違うのだろうか。

「待ってな、すぐ持ってくっから」

 私の疑問は解消されないまま、すぐにおじさんは店内に消えていった。

 数分後…

「待たせたな、はいよ。嬢ちゃんの軍服だ。あと、六人分サイズが大きいのもあるが間違わねぇようにしろよ?」

「はい」
(あと六人分?一体誰の?)

 私が騎士団に来てから見習いの人は何人か来ていたがまだ入団はしていない。だいたい人数も十六人と数が合わない。誰の分なのか気になったので軍服を受け取った団長さんに聞いてみる。

「団長さん。あと六人分って誰の?」
「あ?あぁ、神達と聖獣、精霊王のだよ」
「何で?」

 彼らは別に騎士団に入団してはいないはずだ。

「あ?そんなの契約者であるナナキが入団したんだから当たり前だろ。それに、騎士団でもない奴が詰所の中をウロウロするのはあんま外見的に悪いからな。ナナキが入ったし丁度いいから一緒に入団させることにしたんだよ」

 団長さんの説明に納得する。

「そうなんだ」
「あぁ…てなわけで、軍服も受け取ったからさっさと帰って明日の学園の入学式の準備をするぞ」
「はーい」

 そうだった。明日は学園の入学式があるのだった。十二歳になった子どもは学園の中等部に入る決まりがある。正直面倒だと思ったが、いかないわけにはいかないので早めに帰って準備をしないといけないのだった。
 と言っても、私は学園には通いで行くことになっているので筆記用具やらなんやらを準備するだけなのだが。
 片方の腕で軍服の入った箱を担いだ団長さんに腕をひかれながら帰路を急いだのだった。

♦♦♦♦

 数分後…

 騎士団の詰所に着いたのだが、何だか様子がおかしい。
 静かすぎるのだ。普段はワイワイ騒いでいる声や、訓練の音、言っては悪いが騒音が響いているはずなのにそれが全くない。
 不気味に思いながらも、そーっと扉を開けると…

 パーンッパーンッパパパーンッ!……

「うひゃっ!」

 突然クラッカーのような大きな音が聞こえたかと思うとグイッと誰かに腕をひかれた。そして、ひかれて連れていかれた場所は訓練場だった。なぜここに連れてくるのかと思って顔を上げたら私の手を引いていたのは…ゼウスだった。なんでお前だよ。
 手を引いていた相手に気を取られていて、その足が止まっていたのに気がつくのが遅くなった。前を見てみると、そこには…

「「「「「「「「「「「ナナキ!入学&正式入団おめでとう!」」」」」」」」」」」

 第一小隊から第四小隊までの騎士団全員がいた。

「え?え?」

 私のことを祝ってくれているのはわかるが、なんと言うか、一団員に対してこの祝い用は過剰すぎないかと思ってしまう。だが、正直うれしい。
 自然とこぼれる笑顔。きっと今の私の顔はだらしなくヘラっと笑っているに違いない。しかし、そのくらい嬉しいのだ。

「ありがとうございます!皆さんに支えてもらえたからこそここまで来れました。これからもよろしくお願いします!」

 笑みを浮かべながら今の自分の正直な気持ちを伝えた。
 人垣の中からは「こちらこそ!」や、「もちろんだぜ!」とかいろんな言葉が聞こえてきた。そして、皆でご飯を食べて笑い合いながら夜を過ごした。
 二度目の人生、再び学び直すのはつまらないと思っていたが、こうして新しい仲間が学園で作れるかもしれないと考えれば楽しいかもしれない。
 その日の夜はぐっすりと眠ることが出来た。
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