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58、学園入学式 当日 3
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私が言った言葉に、ピシリと固まる王女様達。それもそうだろう。蝶よ花よと育てれて、なんでも手に入ってきたことだろう。だいたい、王族に向かって逆らおうなんて馬鹿ものはおそらく私以外いない。そう、私以外は。
「それでは、失礼します」
沈黙が重かったため早々に立ち去ろうとしたら……グイッ
「うわっと!」
美少女二人に軍服の裾を掴まれた。
「お待ちなさい…無礼よ」
「そうだわ、わたくし達は王族よ?ものの言い方を考えなさい」
(うん、分かるよ?不敬罪かもしれないね。でもさー、一つだけ。ボーってしてた私でも聞き取ったことがあるんだ。それはね…)
「お言葉ですが、学園内では権力を振りかざして言うことを聞かせるのは原則的に禁止されているのではないのですか?」
そう、校則だ。この学園には、権力を振りかざしてはいけないというルールがある。これは、平民が貴族に脅されないためだ。貴族間では爵位によって身分が大きく変わる。そういう人達は、自分よりも上の人たちに大抵逆らえない。だから学園ではこういうルールがたくさんある。私にとってはいいことだ。
「っ、それは……」
「……っ」
羞恥に真っ赤に顔を染める王女様達。
思わず、ふっと笑ってしまった。それを見た王女様達はますます赤くなる。
しばらく無言の沈黙があり、それを破ったのはひとつの高笑いだった。
「あっはっはっはっ!」
全員が、ばっと顔をそちらに向ける。そこにいたのは、予想通り王様だった。
(まぁ、国のトップだし来賓席にいるのは結構当たり前だよねぇ。でも、なんだかあの笑い方少ーしだけ、嫌な予感するんだけど…?)
王様がひとしきり笑い終えるのを黙って見ていたが、気づいた時にはもう私の目の前に立っていた。
(…!?)
あまりに驚きすぎて固まる体。ヒライ達は少し警戒するようにピリピリしている。
私の目の前に現れた王様は、私と目を合わせるように屈み話し出す。
「久しぶりだね、ナナキ君。六年ぶりかな?随分大きくなったね?」
平静を装いながら、私も言葉を返す。
「はい、お久しぶりです。こうしてまた会えるとは思っておりませんでした」
そんな私に目をキラキラと輝かせながら、王様は言葉を続けた。
「ははっ、そうだね。そう言えば、さっきすごく面白い事言ってたね」
「面白いこと?」
そんなこと言っただろうか…?
「ああ、身分がなんちゃらって」
「あぁ、それですか。はい、学園長の話した内容の中にあったので…まさか、王族には不適用なんですか?」
だとしたら不敬罪になる。少し怯えながら見つめ返すと、クスッと笑う王様。
「いや、大丈夫。不敬罪ではないよ」
よかった。
「でも…」
「でも…?」
でもなんだと言うのだろう…?
「それは俺の子ども達に限ってのことで、俺は振るえるんだよねー権力を。何てったって、王様だから。でも、振るいすぎは絶対にアウトだから、今回限りのこれっきり最初で最後にするから、権力振りかざしちゃって悪いけどー、ナナキ君には俺の子ども達と一緒の生徒会に入ってもらうね?大丈夫、約束は守るよ?でないと、そこに居るやばいヤツらに国を滅ぼされそうだし…。子どもを甘やかしすぎるのもダメだと思うからね。今後俺は子ども達の私利私欲のためには何も干渉しないよー」
(な、何だって!?権力を振りかざすなんてせこいぞ!しかも、王様だから適用されないとか…今回限りって言ってもずるいでしょ。でも、まぁ確かにヒライ達は国なんて簡単に落とせるから約束は守ってくれそうだけど…うーん)
なんとも腑に落ちない気分になった。釈然としないまま、王女様たちの方を見てみると…
「きゃっ、やりましたわ!」
「えぇ、お姉様。これで取り込…コホンッ、手中に収めやすくなりましたわ」
手を取り合って喜んでいた。しかも、妹の方は物騒なことを言っている。取り込まれるのはごめん被りたい。引きつってしまう顔をどうにか笑顔に保ち、先生達に誘導されながら教室に向かったのだった。
行く途中、また友達づくりにチャレンジしたが…結果はさっきと変わらず、というか、さっきよりも遠巻きにされる結果に。絶対に王様達のせいだ。
こうして、私の学園ライフは最悪なスタートを切ったのだった。
「それでは、失礼します」
沈黙が重かったため早々に立ち去ろうとしたら……グイッ
「うわっと!」
美少女二人に軍服の裾を掴まれた。
「お待ちなさい…無礼よ」
「そうだわ、わたくし達は王族よ?ものの言い方を考えなさい」
(うん、分かるよ?不敬罪かもしれないね。でもさー、一つだけ。ボーってしてた私でも聞き取ったことがあるんだ。それはね…)
「お言葉ですが、学園内では権力を振りかざして言うことを聞かせるのは原則的に禁止されているのではないのですか?」
そう、校則だ。この学園には、権力を振りかざしてはいけないというルールがある。これは、平民が貴族に脅されないためだ。貴族間では爵位によって身分が大きく変わる。そういう人達は、自分よりも上の人たちに大抵逆らえない。だから学園ではこういうルールがたくさんある。私にとってはいいことだ。
「っ、それは……」
「……っ」
羞恥に真っ赤に顔を染める王女様達。
思わず、ふっと笑ってしまった。それを見た王女様達はますます赤くなる。
しばらく無言の沈黙があり、それを破ったのはひとつの高笑いだった。
「あっはっはっはっ!」
全員が、ばっと顔をそちらに向ける。そこにいたのは、予想通り王様だった。
(まぁ、国のトップだし来賓席にいるのは結構当たり前だよねぇ。でも、なんだかあの笑い方少ーしだけ、嫌な予感するんだけど…?)
王様がひとしきり笑い終えるのを黙って見ていたが、気づいた時にはもう私の目の前に立っていた。
(…!?)
あまりに驚きすぎて固まる体。ヒライ達は少し警戒するようにピリピリしている。
私の目の前に現れた王様は、私と目を合わせるように屈み話し出す。
「久しぶりだね、ナナキ君。六年ぶりかな?随分大きくなったね?」
平静を装いながら、私も言葉を返す。
「はい、お久しぶりです。こうしてまた会えるとは思っておりませんでした」
そんな私に目をキラキラと輝かせながら、王様は言葉を続けた。
「ははっ、そうだね。そう言えば、さっきすごく面白い事言ってたね」
「面白いこと?」
そんなこと言っただろうか…?
「ああ、身分がなんちゃらって」
「あぁ、それですか。はい、学園長の話した内容の中にあったので…まさか、王族には不適用なんですか?」
だとしたら不敬罪になる。少し怯えながら見つめ返すと、クスッと笑う王様。
「いや、大丈夫。不敬罪ではないよ」
よかった。
「でも…」
「でも…?」
でもなんだと言うのだろう…?
「それは俺の子ども達に限ってのことで、俺は振るえるんだよねー権力を。何てったって、王様だから。でも、振るいすぎは絶対にアウトだから、今回限りのこれっきり最初で最後にするから、権力振りかざしちゃって悪いけどー、ナナキ君には俺の子ども達と一緒の生徒会に入ってもらうね?大丈夫、約束は守るよ?でないと、そこに居るやばいヤツらに国を滅ぼされそうだし…。子どもを甘やかしすぎるのもダメだと思うからね。今後俺は子ども達の私利私欲のためには何も干渉しないよー」
(な、何だって!?権力を振りかざすなんてせこいぞ!しかも、王様だから適用されないとか…今回限りって言ってもずるいでしょ。でも、まぁ確かにヒライ達は国なんて簡単に落とせるから約束は守ってくれそうだけど…うーん)
なんとも腑に落ちない気分になった。釈然としないまま、王女様たちの方を見てみると…
「きゃっ、やりましたわ!」
「えぇ、お姉様。これで取り込…コホンッ、手中に収めやすくなりましたわ」
手を取り合って喜んでいた。しかも、妹の方は物騒なことを言っている。取り込まれるのはごめん被りたい。引きつってしまう顔をどうにか笑顔に保ち、先生達に誘導されながら教室に向かったのだった。
行く途中、また友達づくりにチャレンジしたが…結果はさっきと変わらず、というか、さっきよりも遠巻きにされる結果に。絶対に王様達のせいだ。
こうして、私の学園ライフは最悪なスタートを切ったのだった。
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