異世界で演技スキルを駆使して運命を切り開く

第三章

上演の危機

その時は突然訪れた。

劇団「ルミナス」の稽古が始まる前に、アレクシスが急いで劇団にやって来た。
彼の表情は深刻そのもので、リオネルと共に団長の部屋に入って行った。

しばらくして、私はリオネルに呼び出された。
呼びに来たリオネルの顔色は青ざめていた。

「失礼します。」

団長の部屋には、窓から外を見ているアレクシスの姿があった。
何かを警戒しているようだった。

「リオネル、彼女は大丈夫なのか？」

アレクシスが真剣な眼差しで尋ねた。

「ああ、サラは大丈夫だ。俺が保証する。」

「わかった。お前がそう言うなら、俺も信じるよ。」

声には出さないが、「どういうこと？」という疑念の表情をリオネルに向けた。

「サラ、アレクシスの話を一緒に聞いてほしい。」

「わかったわ。」

「すまないが、このまま話し続けることを許してほしい。」

アレクシスは外の様子を警戒しながら窓際で話し始めた。

私とリオネルは、アレクシスの方を向いてソファに座った。

「昨夜、マルコが帝国の兵士に捕らえられた。出版しようとした書物が原因だ。」

驚きと動揺が広がった。

「マルコが……。」

アレクシスが冷静に答えた。

「もしかしたら、劇団内にスパイがいるかもしれない。君たちを疑いたくはないが……。」

だから、私が大丈夫かと聞いたのか。
私たちは顔を見合わせた。
リオネルが口を開いた。

「まずは冷静になろう。具体的な状況を教えてくれ、アレクシス。」

アレクシスが深く息を吸い、続けた。

「マルコは帝国の非道を暴くための書物を秘密裏に出版しようとしていた。しかし、その情報が漏れ、帝国の兵士に捕らえられた。昨夜、彼の潜伏先に急襲があったんだ。」

「そんな……。」

私は信じられない思いで呟いた。

「俺たちは救出に動く。舞台を上演すべきかどうかは、危険が伴うため、そちらの判断に任せる。」

リオネルは眉をひそめ、深く考え込んだ。

「もし上演を続けることで、マルコの状況をさらに悪化させるならば、考え直さなければならない。しかし、演目を通じて世間に訴えることも重要だ。」

リオネルの言葉に、アレクシスが続けた。

「劇団にスパイがいる可能性も考えて行動してほしい。しばらくの間、外部との接触を一切禁止した方がいい。」

外部との接触という言葉で、先日のエレナのことを思い出した。

直接的ではなかったとしても、外での会話が聞かれている可能性もある。

「……分かった。」

私も頷いた。

「しばらく連絡が取れなくなると思う。」

そう言って、アレクシスは裏口から出て行った。