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顔合わせしたら驚かれた
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※※※
次の日の朝も何時もの様に、ミークは朝食時の忙しいネミルの宿屋の食堂を手伝い、その後ネミルの両親が用意してくれた朝食を美味しく頂いた。勿論それはミークが狩って来た一角猪の肉。そして外出する用意をして、昨晩遅く帰ってきていたネミルと共に宿屋を出た。
仲良しな2人はいつもこうやって、ほぼ毎日一緒にギルドに向かっている。
「昨晩ミークがやっつけた、あの偉そうなゴールドランクがうちの宿屋に来たみたいじゃない。大丈夫だった?」
「うん、暴れる事も無かった。ちゃんと約束守って私に謝って、で、一角猪のステーキをパクパク食べて直ぐ帰って行ったよ」
「しかも私に配慮して、うちの宿屋は使わずギルドの休憩室に泊まったらしいじゃない。ミークにやられてから急に大人しくなったみたい。不思議」
「ま、何にしろ良かった。ずっとあのまま偉そうだったら鬱陶しいもんね」
そういやここファリスに来た当時、髭面禿頭で同じく偉そうだった輩が居た様な? ミークはふと思い出すも良い思い出じゃないので即頭の中から掻き消した。
そして2人一緒にギルドに到着すると、大きな穴が空いている壁の修理の為、あの大きな鷲鼻のドワーフと呼ばれる種族が、溜息吐いて「最近直したばっかりなのによぉ」と悪態を言っているのが聞こえた。ミークは通りすがり軽く会釈すると、「おう」と気さくな返事が返って来た。返事された事に少し驚くミーク。
……前は無視されたのに返事してくれた。ドワーフってのは無愛想だからそれが当たり前って聞いてたけど。私もここファリスの一員だって認めてくれたのかな?
そんな事を思いほんの少し嬉しく感じながらギルドの中に入る。いつも通り朝は賑やかなギルドの広間。だが今日は何だか様子が違う。とある一角のみ遠巻きに皆距離を置いていて、時折冒険者達がそっちを見てヒソヒソしている。
2人は何だろう? と顔を見合わせその一角に目を向けると、そこには普段2階に居る筈のラルが居て、他にもバルバ、そして町長の執事のノライ、更には紺色のローブを身に纏い、同色の膝丈スカートを着て大きな杖を持った、初見の赤毛の美女が居た。
……誰だろう? そういや受付以外の女の人がギルドに居るの、初めて見た。
少し物珍しそうにミークがその赤毛の美女を見ていると、向こうもミークが気になる様で、怪訝な顔でジロジロ見ている。そこでラルが「よう」と声を掛けてきた。
「お早うミーク。待ってたぜ。今日は折り入って話があってな。ああ、ネミルはそのまま業務に入ってくれ」
ラルに指示され「分かりました」と答え、ネミルはミークに目配せしながら受付の仕事に取り掛かる。そしてミークはラル以外の3人が居るその一角に歩み寄った。
「お早うございます。私を待ってたとは?」
「実は例のダンジョンに潜って貰いたいと思ってな。彼等と一緒に。今日はその顔合わせだ」
そこで赤髪の美女が急に大声を上げる。
「ちょ、ちょっと待って! ラル、今ミークって呼んだ? この女がミークって事なの?」
驚いた様子で質問する赤髪の美女、ラミーに、バルバがラルの代わりに「ああそうだ。こいつがミークだ」とさも当たり前の様に答える。
「いやいやいやいや! 何でバルバも平然としているの? こんな華奢な女がミーク? あり得ないわよ! ……今鑑定してみたけど魔素全く無いじゃない! じゃあ魔法使えないわよね? 普通の女じゃない! ほらこう、筋肉もりもりの、オーガみたいな巨人だろうって、バルバだって言ってたわよね?」
矢継ぎ早に大声で訴えかける様に叫ぶラミーに、バルバは「そう言えばそうだったな」と事も無げに返す。
「だが彼女がミークで間違い無い。昨日勝負を挑んで負けたからな」
バルバの言葉にラミーは「へ?」とキョトンとする。
「ちょっと待って? バルバ、このミークって女と戦って……、負けた……ですって? ……あなたが?」
ラミーが信じられないと言った表情で質問するがバルバは一言「そうだ」と答える。ラミーは真偽を確かめたいのか、バッとラルに顔を向ける。ラルは両手を上に上げながら溜息を吐く。
「昨日こいつらが俺の了承も無く勝手に闘技場を使い、そしてこの偉そうなゴールドランク様がミークに挑んで負けたのは紛れも無い事実だ。俺が知った時には、バルバはミークにここの休憩室に運ばれ寝てたからな。最も、俺はその一部始終を見てないが」
「……信じられない。バルバが……。負けた、なんて……」
狼狽えるラミーに、バルバが「本当だ。先に言っておくが毒や麻痺と言った手は一切使われてねぇ。正々堂々と正面からぶつかって負けた」と告げる。
淡々と答えるバルバに、ラミーは違和感を感じる。
「……えらく殊勝な態度ね。普段のバルバなら大暴れしてそうなのに。何かあったの?」
ラミーの疑問にバルバは他人事の様に「そうだろうな」と答える。
「お前がそうやって、俺が負けた事が信じられないって思う位、俺自身相当強い自覚があった。もうすぐプラチナランクになれるだろうって常日頃言ってたのは、別に自意識過剰じゃなく真に王都で日頃噂になってたからだしな。だが昨日、このミークに鼻っ柱を折られた。だからこれまでの態度を反省した。それだけの話だ」
「バルバが……。反省? それこそ信じられない」
ラミーの口から溢れる本音に、煩ぇ、と返すバルバ。そこで2人の会話を遮る様に、ラルが「とりあえず話を続けるぞ」と割って入った。
「さっきも言った通り、この4人でパーティを組んでダンジョンに潜って貰う。ミークが見つけたと言う魔族の存在を確認するのが目的だ。ミークによると、あれからダンジョンの外に出てきてないらしいからな」
ラルがそのまま説明を続けようとするが、ラミーが「ちょっと待って」と遮る。
「その女魔素持っていないじゃない。どうやって魔族の動向を把握したのよ?」
ラミーの問いに「ああそうか。そこから説明しないといけないな」と頭を掻きながら呟くラル。そして「ミーク。何か証明できるか」と聞くと、ミークは「んー」と顎に手を当て考える。
するとずっとやり取りを黙って聞いていた、執事のノライが「ミーク。腕は?」と聞いて来た。
「でもそれで証明になるかな?」
「僕達の常識じゃあり得ない事だから、多少の証明にはなるんじゃないか?」
そう言われてとりあえず、ミークはスッと左腕を離脱させる。そしてふよふよ浮かびながらラミーの肩をトントンしてみる。ラミーはあわあわと齒をガタガタ言わせ怯える。
「……ヒ、ヒィイイイ!!! な、何これーーーー!!」
そして大声で叫びその場で腰を抜かすラミー。一方そんなに驚く? と、ラミーの様子にミークも驚いている。
「う、う、腕、腕……、う、腕ーーーー!」
ふよふよ浮かぶ左腕を指差し叫ぶラミー。未だ腰が抜けて立てないのを、ノライが苦笑いしながら手を取り立ち上がらせる。
「びっくりするのは無理も無いけど、それでも驚き過ぎだよ」
「だ、だ、だってだって! 魔物でもこんなの見た事無いわよ!」
狼狽えながら大声でノライに反論するラミー。ギルド内に響き渡る声のせいで、そこに居る他の冒険者達も一斉に注目してしまう。だが各々ラミーの気持ちは分かるので、温かい目で見守っていたりする。
そこで仕切り直し、とラルが話し始める。
「ま、とりあえず、ミークが俺等の知らない不思議な能力を持ってるってのは判ったな? その能力の一旦で、ミークは魔素を感知出来るんだ。それを証拠にミークは昨日、夜行性である一角猪狩って来たんだが、それも魔素を感知して見つけ出して狩って来たらしい」
「……信じられない」
「ミークを僕達の常識で図らない方が良いよ」
少しノライにしなだれかかっているラミーの呟きに、ノライが傍らでそう告げる。そこで密着しそして手を握っていた事に気付いたラミーは、赤面しながら手を離し自身で立つと、「そ、そういう事にしておくわよ」と言った。だが未だ納得いかない表情ではあるのだが。
※※※
顔合わせが終わった後、ミークは1人ファリスの入り口の高い場所に腰掛けている。入り口は他の外壁に比べ5m程高く、その下に約5m程のアーチ状の入り口を囲う様に聳え立っている。
眼下にはいつもの2人。リケルとカイトが時折欠伸しながら門番をしているのが見える。その上でミークが腰掛けている事には全く気付いていない。
空を見上げると今日も晴天。白い雲が流れていくのが見える。そういやこの世界来てから雨降ったの経験してないや、と思いながら。
涼しい風がミークの美しい黒髪を靡かせ、頬を撫でながら過ぎて行く。
そんな、とても心地良い状況の筈なのに、ミークの顔は晴れない。
「はあ……」
溜息1つ。腰掛けた門の上で何の気無く足をぶらぶらさせる。
出来れば1人でダンジョン探索に行きたかった。でも今回は流石にそれは許されないらしい。何故なら未だ踏破されていないダンジョンである上、ゴールドランク2人はその確認の為に来たのだから。
理屈は通ってるし理解は出来る。だが正直言って、
「足手まといなんだよなあ……」
溜息混じりに呟くミーク。とにかくダンジョン捜索は3日後に決まった。それまで各々準備する様言伝されている。
そして、まだ昼前なのに迷いの森にも行かず、ミークがこんな高い場所に来たのにはとある理由があったから。
「さっきAIから、衛星のエネルギー充填が終わったって聞いたんだよね」
打ち合わせが終わったタイミングでAIからそう報告を受けたミーク。もう一度澄み切った青空を見上げる。その合間を見てみるも衛星はこの星の大気圏より外側、宇宙空間に居るので当然目視出来ない。
「地球に居た頃は早々に壊されちゃって、その機能を一切使えなかったどころか、どんな機能があるのかさえ知らなかったんだよね」
AIがマニュアルを持っていた事さえもついさっき知った位に、衛星については何一つ知らなかったミーク。
よし、と一声ミークは高い塔の上にすっくと立ち上がり、左目を紅色に変え左腕を上空に翳す。そして「アクセス」と呟くと、少しして、遥か上空にキラーン、と星の様な白い光が小さく輝いたのが見えた。
「……あれか」
左目でズーム開始。望遠機能がどんどん上空の映像の脳内に映し出される。数分程して、大きな羽の様なジグザグの太陽光熱を受けるアンテナと、複数の長い白い突起物が付いた、大きさにして一戸建位の人工衛星が脳内の映像に反映された。
「思ってたよりでかいな。流石に大気圏内には入って来れないか。重力に引っ張られちゃうからね。でもギリギリまで降りて来たみたい。では、衛星についてデータ転送」
ーー了解。衛星の状態・内包物・武器・その他便利機能について、全ての情報を転送しますーー
AIの回答と同時に一気にミークの脳内に衛星の機能とその内部に保管されている様々な物について送られて来る。
忙しなく動くミークの紅色の左目。それは多くの情報を高速で受け入れているが故の現象。だがその情報を見ていくうち、ミークの顔が徐々に強張っていく。
「ちょっとこれ……。マジで?」
次に衛星の各機能について、脳内でAIが補足で説明を追加し始める。黙って聞いているミークの表情が徐々に硬くなる。
「……いや待って? ……こんな凄い能力だったの?」
次の日の朝も何時もの様に、ミークは朝食時の忙しいネミルの宿屋の食堂を手伝い、その後ネミルの両親が用意してくれた朝食を美味しく頂いた。勿論それはミークが狩って来た一角猪の肉。そして外出する用意をして、昨晩遅く帰ってきていたネミルと共に宿屋を出た。
仲良しな2人はいつもこうやって、ほぼ毎日一緒にギルドに向かっている。
「昨晩ミークがやっつけた、あの偉そうなゴールドランクがうちの宿屋に来たみたいじゃない。大丈夫だった?」
「うん、暴れる事も無かった。ちゃんと約束守って私に謝って、で、一角猪のステーキをパクパク食べて直ぐ帰って行ったよ」
「しかも私に配慮して、うちの宿屋は使わずギルドの休憩室に泊まったらしいじゃない。ミークにやられてから急に大人しくなったみたい。不思議」
「ま、何にしろ良かった。ずっとあのまま偉そうだったら鬱陶しいもんね」
そういやここファリスに来た当時、髭面禿頭で同じく偉そうだった輩が居た様な? ミークはふと思い出すも良い思い出じゃないので即頭の中から掻き消した。
そして2人一緒にギルドに到着すると、大きな穴が空いている壁の修理の為、あの大きな鷲鼻のドワーフと呼ばれる種族が、溜息吐いて「最近直したばっかりなのによぉ」と悪態を言っているのが聞こえた。ミークは通りすがり軽く会釈すると、「おう」と気さくな返事が返って来た。返事された事に少し驚くミーク。
……前は無視されたのに返事してくれた。ドワーフってのは無愛想だからそれが当たり前って聞いてたけど。私もここファリスの一員だって認めてくれたのかな?
そんな事を思いほんの少し嬉しく感じながらギルドの中に入る。いつも通り朝は賑やかなギルドの広間。だが今日は何だか様子が違う。とある一角のみ遠巻きに皆距離を置いていて、時折冒険者達がそっちを見てヒソヒソしている。
2人は何だろう? と顔を見合わせその一角に目を向けると、そこには普段2階に居る筈のラルが居て、他にもバルバ、そして町長の執事のノライ、更には紺色のローブを身に纏い、同色の膝丈スカートを着て大きな杖を持った、初見の赤毛の美女が居た。
……誰だろう? そういや受付以外の女の人がギルドに居るの、初めて見た。
少し物珍しそうにミークがその赤毛の美女を見ていると、向こうもミークが気になる様で、怪訝な顔でジロジロ見ている。そこでラルが「よう」と声を掛けてきた。
「お早うミーク。待ってたぜ。今日は折り入って話があってな。ああ、ネミルはそのまま業務に入ってくれ」
ラルに指示され「分かりました」と答え、ネミルはミークに目配せしながら受付の仕事に取り掛かる。そしてミークはラル以外の3人が居るその一角に歩み寄った。
「お早うございます。私を待ってたとは?」
「実は例のダンジョンに潜って貰いたいと思ってな。彼等と一緒に。今日はその顔合わせだ」
そこで赤髪の美女が急に大声を上げる。
「ちょ、ちょっと待って! ラル、今ミークって呼んだ? この女がミークって事なの?」
驚いた様子で質問する赤髪の美女、ラミーに、バルバがラルの代わりに「ああそうだ。こいつがミークだ」とさも当たり前の様に答える。
「いやいやいやいや! 何でバルバも平然としているの? こんな華奢な女がミーク? あり得ないわよ! ……今鑑定してみたけど魔素全く無いじゃない! じゃあ魔法使えないわよね? 普通の女じゃない! ほらこう、筋肉もりもりの、オーガみたいな巨人だろうって、バルバだって言ってたわよね?」
矢継ぎ早に大声で訴えかける様に叫ぶラミーに、バルバは「そう言えばそうだったな」と事も無げに返す。
「だが彼女がミークで間違い無い。昨日勝負を挑んで負けたからな」
バルバの言葉にラミーは「へ?」とキョトンとする。
「ちょっと待って? バルバ、このミークって女と戦って……、負けた……ですって? ……あなたが?」
ラミーが信じられないと言った表情で質問するがバルバは一言「そうだ」と答える。ラミーは真偽を確かめたいのか、バッとラルに顔を向ける。ラルは両手を上に上げながら溜息を吐く。
「昨日こいつらが俺の了承も無く勝手に闘技場を使い、そしてこの偉そうなゴールドランク様がミークに挑んで負けたのは紛れも無い事実だ。俺が知った時には、バルバはミークにここの休憩室に運ばれ寝てたからな。最も、俺はその一部始終を見てないが」
「……信じられない。バルバが……。負けた、なんて……」
狼狽えるラミーに、バルバが「本当だ。先に言っておくが毒や麻痺と言った手は一切使われてねぇ。正々堂々と正面からぶつかって負けた」と告げる。
淡々と答えるバルバに、ラミーは違和感を感じる。
「……えらく殊勝な態度ね。普段のバルバなら大暴れしてそうなのに。何かあったの?」
ラミーの疑問にバルバは他人事の様に「そうだろうな」と答える。
「お前がそうやって、俺が負けた事が信じられないって思う位、俺自身相当強い自覚があった。もうすぐプラチナランクになれるだろうって常日頃言ってたのは、別に自意識過剰じゃなく真に王都で日頃噂になってたからだしな。だが昨日、このミークに鼻っ柱を折られた。だからこれまでの態度を反省した。それだけの話だ」
「バルバが……。反省? それこそ信じられない」
ラミーの口から溢れる本音に、煩ぇ、と返すバルバ。そこで2人の会話を遮る様に、ラルが「とりあえず話を続けるぞ」と割って入った。
「さっきも言った通り、この4人でパーティを組んでダンジョンに潜って貰う。ミークが見つけたと言う魔族の存在を確認するのが目的だ。ミークによると、あれからダンジョンの外に出てきてないらしいからな」
ラルがそのまま説明を続けようとするが、ラミーが「ちょっと待って」と遮る。
「その女魔素持っていないじゃない。どうやって魔族の動向を把握したのよ?」
ラミーの問いに「ああそうか。そこから説明しないといけないな」と頭を掻きながら呟くラル。そして「ミーク。何か証明できるか」と聞くと、ミークは「んー」と顎に手を当て考える。
するとずっとやり取りを黙って聞いていた、執事のノライが「ミーク。腕は?」と聞いて来た。
「でもそれで証明になるかな?」
「僕達の常識じゃあり得ない事だから、多少の証明にはなるんじゃないか?」
そう言われてとりあえず、ミークはスッと左腕を離脱させる。そしてふよふよ浮かびながらラミーの肩をトントンしてみる。ラミーはあわあわと齒をガタガタ言わせ怯える。
「……ヒ、ヒィイイイ!!! な、何これーーーー!!」
そして大声で叫びその場で腰を抜かすラミー。一方そんなに驚く? と、ラミーの様子にミークも驚いている。
「う、う、腕、腕……、う、腕ーーーー!」
ふよふよ浮かぶ左腕を指差し叫ぶラミー。未だ腰が抜けて立てないのを、ノライが苦笑いしながら手を取り立ち上がらせる。
「びっくりするのは無理も無いけど、それでも驚き過ぎだよ」
「だ、だ、だってだって! 魔物でもこんなの見た事無いわよ!」
狼狽えながら大声でノライに反論するラミー。ギルド内に響き渡る声のせいで、そこに居る他の冒険者達も一斉に注目してしまう。だが各々ラミーの気持ちは分かるので、温かい目で見守っていたりする。
そこで仕切り直し、とラルが話し始める。
「ま、とりあえず、ミークが俺等の知らない不思議な能力を持ってるってのは判ったな? その能力の一旦で、ミークは魔素を感知出来るんだ。それを証拠にミークは昨日、夜行性である一角猪狩って来たんだが、それも魔素を感知して見つけ出して狩って来たらしい」
「……信じられない」
「ミークを僕達の常識で図らない方が良いよ」
少しノライにしなだれかかっているラミーの呟きに、ノライが傍らでそう告げる。そこで密着しそして手を握っていた事に気付いたラミーは、赤面しながら手を離し自身で立つと、「そ、そういう事にしておくわよ」と言った。だが未だ納得いかない表情ではあるのだが。
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顔合わせが終わった後、ミークは1人ファリスの入り口の高い場所に腰掛けている。入り口は他の外壁に比べ5m程高く、その下に約5m程のアーチ状の入り口を囲う様に聳え立っている。
眼下にはいつもの2人。リケルとカイトが時折欠伸しながら門番をしているのが見える。その上でミークが腰掛けている事には全く気付いていない。
空を見上げると今日も晴天。白い雲が流れていくのが見える。そういやこの世界来てから雨降ったの経験してないや、と思いながら。
涼しい風がミークの美しい黒髪を靡かせ、頬を撫でながら過ぎて行く。
そんな、とても心地良い状況の筈なのに、ミークの顔は晴れない。
「はあ……」
溜息1つ。腰掛けた門の上で何の気無く足をぶらぶらさせる。
出来れば1人でダンジョン探索に行きたかった。でも今回は流石にそれは許されないらしい。何故なら未だ踏破されていないダンジョンである上、ゴールドランク2人はその確認の為に来たのだから。
理屈は通ってるし理解は出来る。だが正直言って、
「足手まといなんだよなあ……」
溜息混じりに呟くミーク。とにかくダンジョン捜索は3日後に決まった。それまで各々準備する様言伝されている。
そして、まだ昼前なのに迷いの森にも行かず、ミークがこんな高い場所に来たのにはとある理由があったから。
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「地球に居た頃は早々に壊されちゃって、その機能を一切使えなかったどころか、どんな機能があるのかさえ知らなかったんだよね」
AIがマニュアルを持っていた事さえもついさっき知った位に、衛星については何一つ知らなかったミーク。
よし、と一声ミークは高い塔の上にすっくと立ち上がり、左目を紅色に変え左腕を上空に翳す。そして「アクセス」と呟くと、少しして、遥か上空にキラーン、と星の様な白い光が小さく輝いたのが見えた。
「……あれか」
左目でズーム開始。望遠機能がどんどん上空の映像の脳内に映し出される。数分程して、大きな羽の様なジグザグの太陽光熱を受けるアンテナと、複数の長い白い突起物が付いた、大きさにして一戸建位の人工衛星が脳内の映像に反映された。
「思ってたよりでかいな。流石に大気圏内には入って来れないか。重力に引っ張られちゃうからね。でもギリギリまで降りて来たみたい。では、衛星についてデータ転送」
ーー了解。衛星の状態・内包物・武器・その他便利機能について、全ての情報を転送しますーー
AIの回答と同時に一気にミークの脳内に衛星の機能とその内部に保管されている様々な物について送られて来る。
忙しなく動くミークの紅色の左目。それは多くの情報を高速で受け入れているが故の現象。だがその情報を見ていくうち、ミークの顔が徐々に強張っていく。
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