影の力で護ります! ~影のボスを目指しているのになぜだか注目されて困っている~

翠山都

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魔術の修行

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 翌日、姉ヤミノの王都行きは一週間延期されたが、兄イオカルは予定通り王都へ向けて出発した。兄の顔は、心なしか昨日よりもさっぱりしたもののようにも見えた。父も何やら機嫌がよさそうだったから、昨晩あれから父と兄との間で前向きな話ができたのかもしれない。
 兄が領地を継ぐことに本腰を入れるつもりになってくれたのなら、俺としても嬉しい。頼りないところもあるけれども、周りが支えてやればきっといい領主になるはずだ。
 で、俺はといえばこの日から早速魔術の猛特訓がはじまった。
 姉が言うには、まずは魔術の行使に足るだけの魔力量と、魔力放出量を身につけねばならんのだという。この魔力量と魔力放出量というのは、例えるなら魔力を入れておく瓶自体の大きさと、その瓶の注ぎ口の大きさだ。魔力量が大きくても魔力放出量が少なければ、一度の魔術行使で使える魔力は少ないものになってしまい、逆に魔力放出量が多くても魔力量が少なければ、強大な魔術を行使できてもすぐに空っぽになってしまうということだ。
 なので、魔力量と魔力放出量の両方を鍛えて大きくするのが最初の課題であったのだが。
「まずは身体の中を巡る魔力の存在を、自分で掴み取らないとどうにもならないわ。体内を巡る血液、それとともに流れる魔力を意識しなさい。あ、今日一日やってわかんなかったら、たぶん一生かかっても魔術師にはなれないからすっぱり諦めなさいな」
 軽い口調でそんなことを宣う姉の前に座らされて、うんうん唸りながら、ようやくこれが魔力というものかという感触を掴めるまで半日ほどかかった。姉曰く「才能ないわね、あんた」ということであった……。
 で、それができたら、この魔力を身体の中で自在に動かせるようになれ、というお達しである。これは魔術師の基本的な鍛錬法で、これを続けることで僅かずつ、自身の魔力量と魔力放出量を増やしてゆくことができるのだとか。
 これがきつい。ギリギリながらなんとか掴んだ体内の魔力を、逃さないようにしっかり握りながら、中心から指先へとゆっくり動かすのは肉体に負荷のかかる行為であり、実際身体の普段使わないインナーマッスル的な筋肉を無理やり行使しているような感覚がある。だがこれも姉に言わせれば「無駄な力を加えているからそうなるのであって、上手な人間はそんな筋肉が突っ張るような感じにはならない」そうで。
 さらに、これだけでは終わらない。
「これ、読み込んどいて」
 姉に渡されたのは、数学の教科書だった。
 当然だが使われている数字は違うし、方程式や法則も若干違うが、前世の数学によく似た学問がある。そして魔術師にとって数学は必須教養であり、術式を練り構築するのにも必須の技能であるとのこと。
 転生先で、まさか数学を学びなおす羽目に陥るとは……しかも微妙に法則が違うから、前世で学んだことが役に立ちそうで役に立たなくてつらい。
 魔術を身に着けたいというのは俺自身の希望だったが、その鍛錬というのを舐めていた……。
 だが、これも前世ではファンタジーだった魔術を習得するためだ。がんばれ俺。

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