『完結』夜の姫君 シャノン

マイマイン

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3章 闇の魔女クドラク

クドラクとの決着

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 シャノンが麗華を背負って麻里子の家に戻ると、麗華は麻里子のベッドに寝かしつけられました。

「何とか麗華を救い出すことはできたけど、ブライアンに黒のオーブを持ち逃げされてしまったわね。麗華は私とリリスが面倒めんどうを見るから、あなたたちはクドラクのところに行って!」

「クドラクの居場所はぼくが知っているから、ついてきて!」
「わかった、いってくるね、気を付けて麻里子」
「あなたもね」
「安心するがよい!妾もおるからの!」

 シャノンとまさるはすぐるの案内で中央街の北の方を目指すと、たどり着いた場所におどろきました。
「ここ、聖クルス校じゃない!」

「そう、問題は校舎こうしゃじゃない、こっちだ」すぐるに案内されたのは、校庭のはずれにある物置ものおきでした。すぐるは封印のカギで物置を開けると、扉を閉めて中にあるレバーを下げました。すると、物置全体が音を立てて振動しんどうしたのです。

「な・・・何!?」物置がガタンと言う音を立てて止まり、出口を開けるとそこは、学校の敷地内しきちないではなく、円柱の柱で支えられた地下ダンジョンだったのです。

「な、なんなのここは!?」
「ここはクドラク教の地下ちか寺院じいんだ!」
「まさか、あの平凡へいぼんな物置が地下へのエレベーターになっていたなんてね・・・!行こう!」

 シャノンたちは円柱のかがり火に照らされながら奥へ進んでいきます。突き当りに金縁きんぶちの両開きの扉があったので開けてみると、そこは天井の高い広い空間で、中では大勢おおぜいの信者が、壇上だんじょうにいる黒いドレスの黒髪の女性に向かっていのりをささげていたのです。その異様な光景にシャノンたちは圧倒あっとうされます。

「なんなの、この光景・・・!?」
「みんな一心不乱に祈っている・・・!」
「あの壇上にいる黒いドレスの女性がクドラクだ!」

 シャノンたちは、祈りの間の中央のレッドカーペットの道をっ切って、クドラクの前におどり出ます。
「クドラク!あなたは私たちが止める!」祈りの声が止まり、クドラクはシャノンたちを見据みすえます。

「やっぱり来たわね、公爵家こうしゃくけノーブル一族の姫シャノン!」それを聞いたシャノンはハッとします。

「なんですって!?私を知っているの!?」
「知っているも何も、私をジャマした一族の事を忘れるわけがないでしょう?」
「私たち一族が邪魔をした!?どういう事!?」クドラクはフンと鼻を鳴らして言いました。

「いいわ、話してあげる。あれは十五世紀ごろ、住んでいた村を全滅ぜんめつさせた私はその力を使い、ワラキア公国の伯爵家はくしゃくけとついだ。元々、伯爵家と公爵家は仲がよく、協調きょうちょうし合っていたけど、公爵家はバンパイアの由緒ゆいしょ正しい生き方をて、人間たちと協調し合う生き方をすすめた!私は自分をおとしめた人間どもにびを売るなんて我慢がまんならなかった!だからこそ、人間どもに誰が支配者なのかを教えるために、私はクドラク教を広めたのよ!」それを聞いたシャノンはハッとします。

「・・・じゃあ、何百年にもおよぶ公爵家と伯爵家の争いは、あなたが始まりなの!?」
「いいえ!あなたたち公爵家が長きにわたる因縁いんねんの始まりよ!」

「そんな・・・!私たちの先祖が・・・バンパイアの生き方を否定ひていする生活をいたから、このみにくい争いを起こしたって言うの・・・!?」これに、まさるは首を横にって叫びます。

「違う!話を聞く限り、シャノンさんのご先祖は正しいことをした!だって、今のシャノンさんのしてきたことが間違っているとは思わないし、他者を支配する生き方が長続きをしたためしがない!」

「まさる君・・・!」
「君の言うとおりだよまさる君、何百年にも及ぶ争いの原因は間違いなくクドラク、お前が起こしたことだ!」これに、クドラクは怒りに体を震わせました。

「やっぱり公爵家と伯爵家は水と油ね!いいわ!こうなったら私が直々に鉄槌てっついを食らわせてやるとしましょう!」クドラクは黒のオーブを手に取り、天にかかげます。すると、クドラクの背丈せたけが二倍になり、背中には翼、頭にはねじ曲がった二本の角のある姿に変わり、額に黒のオーブが輝いています。

「これが・・・クドラクの真の姿・・・!?」それを見た信者たちはハッとします。
「えっ!?クドラク様ってあんな恐ろしい化け物だったの!?」
「嫌だー!」信者たちはハッとして、神殿の奥へと逃げ出しました。

「さぁ!消し炭になりなさい!」クドラクは炎を吐きだすと、すぐるも炎の魔法を放ってクドラクの火を防ごうとしますが、すぐるの火はじわじわと押し負けていきます。
「くっ・・・絶体絶命ぜったいぜつめいか・・・!?」すると、クドラクの頭上に稲妻いなずまが落ちてきました。

「ぎゃああああっ!」すぐるがハッとすると、そこにはブライアンが立っていたのです。
「ブライアン!」
勘違かんちがいしないでくれよ!お前を打ち負かすのはこのぼくだ!他の奴には渡したくないだけだ!」
「・・・ありがとう!」

「おのれぇ!」クドラクは上空に浮かび上がると、狼に変身したまさるはシャノンに言いました。
「シャノンさん、ぼくをクドラクまで投げて!ぼくがこの白虎の牙をヤツのひたいに!」シャノンがうなずくと、すぐるが氷の魔法でクドラクの動きを封じます。

「今だ!」シャノンが翼を広げて上空に飛び上がり、まさるをクドラクの方へ放り投げ、まさるが白虎の牙をクドラクの額の黒のオーブに突き立てます!
「ぐぅあああああああああっ!」

クドラクの黒のオーブにひびが入りくだけ散ると、クドラクの体はくずれ落ち、灰のかたまりになりました。
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