上 下
59 / 97
6章 正義の章

ゴーシャの現状

しおりを挟む
 すぐるたちは、イーストメイン大陸の北側にあるゴーシャ国へたどり着きました。そこは白い石の壁と青い屋根のきれいな建物が目立ち、そこかしこに高貴な服を着た貴族たちが行きかっています。
「ここがゴーシャ国か・・・きれいな町だね・・・」すぐるが言いました。

「確か、ここでは混沌の帝国エンパイアの本拠地であるナイトロードに行くための大きな船を建造けんぞうしているはずよ。幻想界世界会議ファンタジアサミットでそう決めたって」
「以前はもっと大勢おおぜい貴族がいたと思ったんだけど・・・そうか、トランバニア国の方に行ってしまったんだっけ・・・」テイルとカインが辺りを見渡しながら話していると、兵士たちが何やら困った様子で話していました。

「あの、どうかしたんですか・・・?」
「ああ、旅の者か・・・実はこの国では、帝国に対抗すべく、大型船を建造しているのだが、貧民街の代官だいかんマモンが高い利子で貴族や平民にお金を貸していて、もし、お金を回収できなければ、建造中の船をいただくと言ってきたんですよ・・・」すぐるは驚きました。

現実界リアリティでも、悪代官が貧しい人々をいじめる話はよくあるんだよな・・・」
「やつのせいで、貧民街の者たちは苦しめられているんだ。その財力に物を言わせてな」すぐるたちは、貴族街の東にある貧民街に行ってみることにしました。

 貧民街は、石の壁にわらぶき屋根の粗末そまつな家々が目立つ町で、その周りを貧しい身なりの人々が行きかっていて、そこから人々の不満を聞くことが出来ました。
「マモンの取立てはきびしいんだ」

「マモンはお金を貸す時、倍の利子をつけて来るんだ!いくら働いても、生活はゆたかにならない!」
「しかも、マモンのやつ、生活がゆたかにならないのは、おれたちの努力不足だって言って聞かないんだ!」
「でも、冬将軍ひきいる海賊団シルトが、いけ好かない金持ちどもがいるトランバニアから、金品をうばってきてくれるから、何とか食いつないでいけるぜ」今の会話を聞いて、すぐるとリリスが言います。

「やっぱり、代官のマモンが悪さをしているみたいだ」
「シルト首領のメガロは、この辺りじゃ、冬将軍と呼ばれておるのか・・・」これにカインとテイルも言いました。

「トランバニアの税金逃れの影響えいきょうは、ここまで来ているみたいだね」
「まるで、初めてここに来た時に戻ったようね・・・」そうやって行くうちに、ぼろの服を着た女性がすすり泣いているのを見つけ、テイルが話しかけてみました。

「あの・・・どうかなさいました?」ぼろの女性はテイルにすがりつき、こう言いました。
「ああ、私の娘のレナが・・・地主のマモンに、借金のカタにさらわれてしまいました・・・!」詳しい話を聞くために、家の中に入ります。

「ああ・・・ちょっと前までは貧しくとも、夫と娘のレナと一緒にそれなりに幸せな日々を送っていました。しかし、あのマモンがこの一帯の地主になってからと言うもの・・・税の取立てが厳しくなり、それでお金を借りると、倍の利子をつけて取立てに来ます・・・それで、返せないと言うと、娘のレナを借金のカタに・・・ううっ!」それを聞いたテイルは怒りのあまり、体がふるえています。

「・・・許せないわ!子供を借金のカタにするなんて・・・!」そばにいたレナの父親も言います。
「連盟のおかげで、隣国りんごくトランバニアに貴族たちが集まるようになって、その場所はとても豊かで治安のいい場所になったそうですが、その分のしわ寄せがこちらに来ているみたいです・・・!いくら働いても、家計は赤字続きです・・・!そんな中、メガロさんたちがトランバニアからお金を持ってきてくれて、なんとか生活できているという感じです・・・」これを聞いて、すぐるたちは、話し合い始めました。

「なんてことなの・・・!」
「あのパラダイスレポートに書かれていたことは、真実かもしれないね・・・!」
「この町はメガロのおかげで助かっておるようだの・・・ますますわからぬわ!」

「・・・メガロ・・・シルト・・・そうだ!もし、シルトの財宝が本当にあるのなら、この危機を救えるかもしれない!」こうしてすぐるたちは、北のミューダス国を目指して、船着き場から船に乗って行きました。
しおりを挟む

処理中です...