上 下
62 / 97
6章 正義の章

正義の使徒

しおりを挟む
「さあ、アンタの負けよ!子供たちを解放しなさい!」テイルが言い終わった瞬間しゅんかんに、聖堂内にいた幼い少年少女たちが、この礼拝堂れいはいどうに現れ、みんなその光景を見てハッとします。
「あなたたちを助けに来たわ、さあ、いらっしゃい!」テイルが子供たちに呼びかけると、子供たちは、テイルたちをスルーし、倒れているメガロの方にかけよってきたのです。

「キャプテンメガロ、しっかりして!」
だれにやられたの!?」子供たちはテイルたちを見て言います。
「まさか、お姉ちゃんたちがメガロをいじめたの!?」
「キャプテンメガロをいじめないで!」子供たちはメガロをかばうかのように彼の周りを取りかこみます。

「ちょっと、これってどういう事!?あなたたち、メガロに誘拐(ゆうかい)されたんじゃないの!?」これに子供たちは首を横に振(ふ)ります。
「違(ちが)うよ!キャプテンメガロはぼくらを助けてくれたんだ!」
「わたしたちを誘拐したのは帝国よ!」
「ぼくらは、ゴーシャからトランバニアのお城に連れていかれたんだ!」
「帝国のやつらは、ぼくらを掃除(そうじ)なんかでこき使ったり、散々ムチで叩いたり、ろくにご飯もたべさせてくれなかったんだ!」

「キャプテンメガロはそんなぼくらを助けてくれて、ここにかくまってくれて、あたたかい食事も食べさせてくれたんだ!」しばらくして、メガロが頭をかかえながらゆっくりと起き上がります。
「・・・これで分かっただろう?全ては子供たちが言ったとおりだ・・・!」それにすぐるが言います。
「・・・やっぱり、メガロは悪者じゃなかったんだ・・・!」
「・・・いや、力ずくで金品を奪(うば)い、子供たちを無理やり連れ込んだのは事実だ・・・」

「でも、それは・・・弱き者たちを救いたいと言う思いが根底にあるから・・・」すぐるは聖者のメダルをメガロに手渡すと、彼の手の中で六角のメダルは青い光を放ちます。
「フッ・・・そうか・・・」メガロは祭壇の女神像の前に刺さっている白銀の十字杖を引き抜きます。
「・・・この神器『聖者の杖』にまだれられるとはな・・・!」それを聞いたすぐるはハッとします。
「聖者の杖!?あれが四つ目の神器・・・!?じゃあ、メガロが北の聖者『玄武げんぶ』だったんだ・・・!」

 すぐるたちはカオスから世界を救うために、神器やメダルを集めている事、生き別れになった父を探していることなど、旅の目的をメガロに話しました。
「・・・ほう、そういう事なら、おれも力を貸そう」
「ありがとう!」
「それで、すぐる、お前に紹介したいやつがいる、ファフナー!」メガロの呼びかけと共に、黒い覆面ふくめんをつけ、よろいに身を固めた騎士きしが礼拝堂に入ってくると、目の前で覆面を取ります。その素顔は、すぐるに生き写しでした。
「久しぶりだな、すぐる!」それを見たすぐるはおどろきました。
「・・・父さん!?」
「なに!?ラグーナ諸島で会ったあのカオス帝国の騎士がすぐるの父上じゃと!?」リリスも驚きをかくせません。

「・・・なんで!?なんで父さんがシルトの本拠地ほんきょちにいるの!?」これにファフナーこと、としおは話し始めます。
「話せば長いが・・・おれが世界を救うために、神のノートの封印を解くために、メダル探しの旅を始めたのは知っているだろう・・・メダルを探すべく、このラップランドにも入ったが、北の国のきびしい寒さにえかね、生死のさかいをさまよっている所を、冬将軍ふゆしょうぐんの二つ名で知られるメガロに命を救われた。それで、メガロが団長をつとめる聖堂騎士団の一員として、幻想界平和連盟の元で働いていた・・・。だが、キャプテンメガロは連盟の本当の姿を知り、連盟によって苦しめられている者たちがいるのを知った!それで、キャプテンは信頼しんらいできる仲間たちを集め、苦しめられている者たちを救うべく海賊団シルトを結成したのだ!」それを聞いたすぐるが言います。

「なるほど・・・でも・・・父さんが帝国にいた理由は何・・・?」
「信じられないと思うが・・・混沌の帝国カオスエンパイアと幻想界平和連盟はグルだ!」みんなは大いに驚きました。
「ウソでしょ!?」
「なんじゃと!?」
「そんなわけない!」

「いいや、まぎれもない事実だ!キャプテンは連盟と帝国のつながりをうたがっていた・・・!連盟が毎回、帝国に必ず余裕よゆうで勝利していたからだ。あまりにも出来すぎていると考え、連盟のデータディスクを持ち出して調べたり、おれのようなスパイを帝国に送り、情報じょうほうを流させた、それで、連盟と帝国のつながりが明らかになったのだ・・・!」
「そうだったのか・・・!だから、メガロはメトロポリスで、「連盟こそ世界の平和を乱している」って言ったんだ!」すぐるは両手を叩いて言います。

「そうだ、混沌の帝国カオスエンパイアとは、幻想界平和連盟が正義の味方をえんじるための、見せかけの悪者!そうやって人々を信じ込ませ、連盟の権力を強め、誰も代表のメシアに逆らえないようにしていたのだ!」としおがすぐるに説明しました。
「おれたちがラップランドを出る前に、セント・ニコラウス殿どの、つまりサンタクロース殿にあのディスクを渡しておいた。それで、他の騎士団員たちも連盟と帝国のつながりを知った。その証拠しょうこは、ディスクやファフナーの情報だけではない、ほら来たぞ」礼拝堂に、コートを着込み、緑のキャップをかぶったさる獣人じゅうじんが入ってきました。

「あ、あなたは、スピネルジャーナルの記者、ハヌマーンさん!」すぐるがハッとします。
「やあ、君たちもここにいたんだね、メガロ、例の物をトランバニアから持ってきたよ」ハヌマーンはいくつかの書類をメガロに渡します。
「よくやったぞハヌマーン、ほう・・・やはりそうか!」
「あれって、何の書類ですか・・・?」すぐるがたずねます。

「ああ、帝国と連盟のつながりを示す証拠しょうこ書類しょるいだよ」それを聞いたみんなは驚きます。
「全ては連盟が仕組んだことだ・・・!よし、これよりシルトは、ゴーシャに向かう!そして、その後トランバニアに向かうぞ!」これに、すぐるたちもついて行きます。
しおりを挟む

処理中です...