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7章 王道の章

卑怯の末路

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 アスモが立ち上がり、リリスとテイルがパンチを仕掛けると、アスモの姿が一瞬いっしゅんにして消えました。
「ぬ!?」
「あいつ、どこに行ったの・・・?」リリスとテイルがあちこち見まわすと、後ろの方から声がしました。

「ここだよ!」振り向くと、アスモは何事もなかったように立っています。すぐるが魔法弾まほうだんっても、アスモはまた姿を消しました。
「くそっ・・・!ぼくの魔法使いのかんをもまどわすなんて・・・!すごい魔力だ・・・!」

「どうだい?悪魔の力は?所詮しょせん武闘家ぶとうかなんて、近づいてなぐるしか能のないただのバカさ!ハハハ!」その発言に、リリスとテイルの二人は、ひたいに怒りをにじませます。

「くそっ・・・!ヤツの姿が見えぬ・・・!」
「魔力がダメなら、これならどう?」テイルは生者のメダルを手に取り、精神を集中させます。
「・・・見えたわ!そこよっ!」テイルが振り向きざまにパンチを決めると、アスモの顔を捕え、アスモは顔を押さえてよろめきます。

「ば・・・バカな・・・!なぜオレの動きが読めた・・・?」
「魔力はごまかせても、私の風の気はごまかせなかったようね!覚悟なさい女の敵!」テイルがそのまま向かって行くと、アスモはカナンやアンナをたてにしました。
「どうだ!こいつらがどうなってもいいのか?」
「そうよテイル、私の顔をなぐれるの?」アスモとアンナがこう言うと、テイルやリリスは足を止めざるをません。

「くっ・・・!卑怯ひきょうな・・・!」
「そうさ!卑怯こそ最強の手段だ!ハハハ!」アスモが高らかにさけぶと、カインは精神を集中させ、めていた魔力を一気に放出しました。

はなて、クリアーオール!」カインの両手からいやしの光がはっせられると、みんなはぎゅっと目をつむり、周りの魔力はきりが晴れるようにき消えて行ったのです。目をゆっくりと開けると、今までいた城みたいな部屋はただの岩の洞窟になり、少女たちはハッとし、辺りを見回します。

「やっぱり、ヤツの幻術げんじゅつで洞窟を立派に見せたり、彼女たちをあやつったりしていたんだ!」
「くそっ!それがさっきの癒しの魔法で全て解けてしまうとは・・・!」これに、少女たちは口々に言います。

「ここはどこなの・・・?あっ、コイツの事は覚えているわ!」
「私、アスモに胸をさんざん触られたわ!」
「私もよ!絶対許さないんだから・・・!」テイルとリリスは少女たちと共に怒りの目でアスモを見据え、アスモは顔を青ざめます。そして、間もなくアスモは女性たちによる袋叩ふくろだたきの洗礼せんれいを受けることになったのです。すぐるとカインはただ、女のこわさにふるえるしかありませんでした。

「・・・うぐぐ・・・なんでこうなるの・・・?」アスモはあお向けの状態でぼこぼこになった顔でこちらを見ます。

「どう、これで分かった?女の子の胸を触ったら、これくらいのばつは受けて当然なんだからね!」テイルはアスモを指さして叫びます。リリスも軽蔑けいべつを込めた眼差しでアスモを見据えます。

「貴様のような不埒者には・・・妾の毒の爪を・・・と、言いたいところじゃが、貴様にくれてやる毒など一滴いってきもないわ!代わりにこれでも受け取れ!」リリスはアスモの顔にツバを吐きかけます。テイルたちは倒れているグレイを起こしたり、少女たちを洞窟の外へと連れ出そうとすると、テイルは最後アスモにこう言います。

「覚えておきなさい!これが卑怯の末路まつろよ!」
 洞窟の外で、アンナはテイルと抱き合ったり、カナンもグレイと再会できて安堵あんどの表情を見せました。
そして、みんなはスピネル王都へと帰って行きます。
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