10 / 81
7つ目の至宝
1話 リリスとキャリー
しおりを挟む
「助けてー!」レンガや石造りの家々が立ち並ぶ、平和な王国スピネルの朝に似つかわしくない少女の叫び声が響きわたります。
そこはスピネル王都の北東に位置するレンガ造りの倉庫が立ち並ぶ倉庫街、そこで、十四歳のフリルの付いた白いワンピースドレスを着用した外ハネの黒髪に、猫の手足と耳と尻尾を生やした獣人の少女が、麻の服を着た中年の男につかまっていたのです。
「わーっ!放してー!」
「こいつめ!逃がさんぞ!」
そこに、叫び声を聞きつけて、十九歳の赤いミニスカのワンピースドレスを着て、二本の角とコウモリの翼と、ハートの飾りのついた細長い尻尾を生やした、赤毛のツインテールの魔族の少女がやってきました。獣人の少女は魔族の少女を見て表情が明るくなりました。
「あっ!リリス姐さん!助けて!」これにリリスは頷きます。
「お主!キャリーを放すのじゃ!」
「ちょっと待て!こいつは・・・ぐはっ!」リリスは間髪入れずに、中年の男の腹にボディブローを放ち、男は腹をおさえてうずくまります。
「姐さん!怖かったー!」キャリーは泣きながらリリスに抱き着くと、リリスが尋ねます。
「キャリー、何があったのじゃ!?」これに、中年の男はよろよろと立ち上がりながら言いました。
「ひどいぜ・・・オレは・・・その小娘に財布をすられたから・・・取り返そうと・・・しただけなのに・・・!」それを聞いたリリスは真剣な目つきになりました。
「キャリー!それは本当なのか!?」これに、キャリーは小さくうなずき、ポケットから男物の財布を取り出します。
「あっ!それだよ!オレの財布!返せ!」リリスはキャリーから財布をふんだくります。
「すまなかったの!キャリーは妾からよく言っておくわ!」リリスはそう言って男に財布を返します。
「ったく!今日は踏んだり蹴ったりだぜ!」男が去っていくと、リリスは両手を腰に当てて、キャリーに向き直ります。
「キャリー!なんで人の財布を盗ったりしたのじゃ!?」キャリーはもじもじしながら言います。
「・・・だって、アタイの住んでいる孤児院が・・・経営難だって聞かされたから・・・それで・・・」
「その話なら、妾も知っておる!だが、他人の財布を奪う事には感心せんのぉ!」
「ごめんなさい・・・」
「まったく、浮浪児だったお主を弟子にとって数年たつが、その盗みグゼは全然、直らんのぉ!」
ため息をついたリリスと別れたキャリーはトボトボと歩きます。
「はぁ・・・アタイはまだ働ける年齢じゃないし・・・どうすれば・・・」
そこに、フード付きのコートを着込んだ怪しい黒ずくめの男が近づいてきました。
「ねえ、お金に困っているなら、うちの『店』で働いてみない?」
そこはスピネル王都の北東に位置するレンガ造りの倉庫が立ち並ぶ倉庫街、そこで、十四歳のフリルの付いた白いワンピースドレスを着用した外ハネの黒髪に、猫の手足と耳と尻尾を生やした獣人の少女が、麻の服を着た中年の男につかまっていたのです。
「わーっ!放してー!」
「こいつめ!逃がさんぞ!」
そこに、叫び声を聞きつけて、十九歳の赤いミニスカのワンピースドレスを着て、二本の角とコウモリの翼と、ハートの飾りのついた細長い尻尾を生やした、赤毛のツインテールの魔族の少女がやってきました。獣人の少女は魔族の少女を見て表情が明るくなりました。
「あっ!リリス姐さん!助けて!」これにリリスは頷きます。
「お主!キャリーを放すのじゃ!」
「ちょっと待て!こいつは・・・ぐはっ!」リリスは間髪入れずに、中年の男の腹にボディブローを放ち、男は腹をおさえてうずくまります。
「姐さん!怖かったー!」キャリーは泣きながらリリスに抱き着くと、リリスが尋ねます。
「キャリー、何があったのじゃ!?」これに、中年の男はよろよろと立ち上がりながら言いました。
「ひどいぜ・・・オレは・・・その小娘に財布をすられたから・・・取り返そうと・・・しただけなのに・・・!」それを聞いたリリスは真剣な目つきになりました。
「キャリー!それは本当なのか!?」これに、キャリーは小さくうなずき、ポケットから男物の財布を取り出します。
「あっ!それだよ!オレの財布!返せ!」リリスはキャリーから財布をふんだくります。
「すまなかったの!キャリーは妾からよく言っておくわ!」リリスはそう言って男に財布を返します。
「ったく!今日は踏んだり蹴ったりだぜ!」男が去っていくと、リリスは両手を腰に当てて、キャリーに向き直ります。
「キャリー!なんで人の財布を盗ったりしたのじゃ!?」キャリーはもじもじしながら言います。
「・・・だって、アタイの住んでいる孤児院が・・・経営難だって聞かされたから・・・それで・・・」
「その話なら、妾も知っておる!だが、他人の財布を奪う事には感心せんのぉ!」
「ごめんなさい・・・」
「まったく、浮浪児だったお主を弟子にとって数年たつが、その盗みグゼは全然、直らんのぉ!」
ため息をついたリリスと別れたキャリーはトボトボと歩きます。
「はぁ・・・アタイはまだ働ける年齢じゃないし・・・どうすれば・・・」
そこに、フード付きのコートを着込んだ怪しい黒ずくめの男が近づいてきました。
「ねえ、お金に困っているなら、うちの『店』で働いてみない?」
0
あなたにおすすめの小説
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
星降る夜に落ちた子
千東風子
児童書・童話
あたしは、いらなかった?
ねえ、お父さん、お母さん。
ずっと心で泣いている女の子がいました。
名前は世羅。
いつもいつも弟ばかり。
何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。
ハイキングなんて、来たくなかった!
世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。
世羅は滑るように落ち、気を失いました。
そして、目が覚めたらそこは。
住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。
気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。
二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。
全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。
苦手な方は回れ右をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。
石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!
こちらは他サイトにも掲載しています。
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
不幸でしあわせな子どもたち 「しあわせのふうせん」
山口かずなり
絵本
小説 不幸でしあわせな子どもたち
スピンオフ作品
・
ウルが友だちのメロウからもらったのは、
緑色のふうせん
だけどウルにとっては、いらないもの
いらないものは、誰かにとっては、
ほしいもの。
だけど、気づいて
ふうせんの正体に‥。
おっとりドンの童歌
花田 一劫
児童書・童話
いつもおっとりしているドン(道明寺僚) が、通学途中で暴走車に引かれてしまった。
意識を失い気が付くと、この世では見たことのない奇妙な部屋の中。
「どこ。どこ。ここはどこ?」と自問していたら、こっちに雀が近づいて来た。
なんと、その雀は歌をうたい狂ったように踊って(跳ねて)いた。
「チュン。チュン。はあ~。らっせーら。らっせいら。らせらせ、らせーら。」と。
その雀が言うことには、ドンが死んだことを(津軽弁や古いギャグを交えて)伝えに来た者だという。
道明寺が下の世界を覗くと、テレビのドラマで観た昔話の風景のようだった。
その中には、自分と瓜二つのドン助や同級生の瓜二つのハナちゃん、ヤーミ、イート、ヨウカイ、カトッぺがいた。
みんながいる村では、ヌエという妖怪がいた。
ヌエとは、顔は鬼、身体は熊、虎の手や足をもち、何とシッポの先に大蛇の頭がついてあり、人を食べる恐ろしい妖怪のことだった。
ある時、ハナちゃんがヌエに攫われて、ドン助とヤーミがヌエを退治に行くことになるが、天界からドラマを観るように楽しんで鑑賞していた道明寺だったが、道明寺の体は消え、意識はドン助の体と同化していった。
ドン助とヤーミは、ハナちゃんを救出できたのか?恐ろしいヌエは退治できたのか?
ノースキャンプの見張り台
こいちろう
児童書・童話
時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。
進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。
赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる