最後はパー

堂場鬼院

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第1話 国民総じゃんけん法

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 良樹《よしき》が学校から帰ってくると、母親の千代子《ちよこ》が珍しくリビングでテレビを見ていた。
「ただいま母さん」
「ちょっと良樹。きてごらん」
 手招きされていくと、午後の国会中継だった。
「どうしたの? 何かあった?」
「しーっ」
 千代子が人差し指を立てて制した。壇上には総理大臣が登壇している。
「……最後に、あらためまして私から本法案の趣旨について国民の皆様にご説明いたします。この『国民総じゃんけん法』は、我が国の国難を突破する上で非常に欠かせないものであります。長年続いております物価高、少子高齢化、貧困、環境、災害、都市への一極集中、地方の過疎化問題、ジェンダー平等、人材不足ならびに後継者不足、長時間労働、介護、そして教育格差という諸問題の根本的要因は、ひとえに悪運を有する国民であります。我が党、責任与党としていままで様々な対策を講じてまいりましたが、残念ながら有効に機能したかといわれますと必ずしもそうではないといわざるを得ません。ではなぜ上手くいかないのか。与党のせいなのか野党のせいなのか。あるいは外国のせいなのか。違います。国民のせいなのです。それも、悪運を有する国民のせいです。この一人の人間が生きている限り我が国の発展はない。先般、野党の皆さんとも協議を重ね、公平かつ公正、ほとんどすべての国民の皆様に対し、手厚く幅広い利益をもたらす本法案がまとまりました。ご協力いただきありがとうございます。この『国民総じゃんけん法』は、私の政治生命をかけた、最大かつ最善の法案です。私は本法案、全会一致で可決されるものであると信じております。どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました」

 割れんばかりの拍手喝采だった。
 その後、採決が行われ、国民総じゃんけん法は一部野党を除き、賛成多数で可決、成立した。
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