最後はパー

堂場鬼院

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第5話 友達のチョキ

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 十四回目となると届いた封筒が分厚くなっていた。中に入っていた紙には会場が都内になること、そのための交通費や宿泊費が国から出ることなどが書かれていた。
「良樹」
 明日は出発という日の夜、良樹と千代子はリビングで向かい合っていた。
「いい? もう遠慮しちゃだめ。絶対に勝ちにいきなさい。あなたは強いんだから」
「うん」
「ご近所の皆さんも良樹のこと心配してくれてる。大丈夫。勝てるからね。お母さん信じてるから」
 その日の晩ごはんはカツカレーだった。

 都内のホテルに宿泊した良樹は、自分と同じように負け続けた人たちが同じホテルに宿泊していることに気がついた。
 全国で約一万五千人にまで絞られたわけである。
「ここまできたらさ、不運というより強運じゃね?」
 ホテルで知り合った同い歳の涼介《りょうすけ》が皮肉交じりにそういった。
「何かもう勝てないような気がしてくるよな」
「心細いこというなって」
「SNS見た?」
「見てない。嫌なことしか書いてないし」
「勝った奴はいいよな。普通に生活できるんやから」
「でもおれらって国の金でホテルに泊まれてるんよな。ある意味ラッキーじゃね?」
「んなわけないやろ……絶対勝たなあかんねん……」
 良樹は頭を抱えた。スマートフォンには千代子からのメッセージが届いている。
「塞ぐな塞ぐな。気持ち前向きにいこ」
「前向きになったら勝てるんか?」
「当たり前やん! 最初から負けた気でいてるから負けるんやで」
 とはいったものの、良樹も涼介も負け続けた。十五、十六、十七までくるとお互いホテルの部屋で顔を合わせるたびに爆笑した。
「また負けたまた負けた!」
「誰や前向きにとかいってた奴は!」
「お前やろ!」
「「ハハハハハハ!!」」

 十九回目……約四百五十八人にまで絞られたとき、良樹と亮介はある種の達成感に浸っていた。
「すげえよ俺たち。国内でたった四百五十人くらいしかおらん人間なんや」
「激レア過ぎるよな。貴重種やで」
「いよいよ国に保護してもらわんと」
 二十回目……ホテルのロビーで顔を合わせたとき、涼介は戸惑っていた。
「ごめん良樹……勝ってもうた……」
「えっ……」
 涼介がチョキを作って見下ろしている。
「ずっとグーかパー出してたんやけど、今日たまたまチョキ出したら勝ってしまって……」
「そ、そうなん? そりゃ、よかったやん。おめでとう……」
 良樹は、自分がここまで狼狽えるとは思っていなかった。何となく、このまま涼介とともに負け続けるんだろうな、同じホテルに泊まって割と美味いもん食ってくだらないこと話して寝て……そんな生活が続くんだろうなと、勝手に思い込んでいた。
「ほんまごめん。何でおれ勝ったんやろ」
「勝てたのに変なこというなって」
「うん……」
 勝者はすぐにホテルを去らなければならなかった。気まずい空気の中、良樹と涼介は別れた。
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