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9.絶倫だった旦那様
しおりを挟むメイドたちは皆、いつも機嫌がよさそうだ。特に私と旦那様が遅れてしまっていた初夜を迎えてからは。
お互いに初めてだった私たちは、初夜を済ませた後に友人関係になろうと話し合った。旦那様もそれを受け入れている。
私は少しずつ旦那様を快楽に目覚めさせようと画策していた。だから、始めは夫婦の寝室で一緒に休みはしても、必ずしも体を繋げなくてもいいと思っていた。
ところが、なんだかんだそういう雰囲気になってしまって、毎日している。
旦那様の方は普段から鍛えているだけあって体力があるようで、朝になればいつもの顔で寝室を出て行く。でも私は違う。
始めは一度だったのに、だんだん回数が増え、この二日というもの、三回はしている。とてもではないけれど、午前中はゆっくりと寝室で寝て過ごさないと他のことが出来ない。
そんなわけで、通常は主人のいない隙に片づけや掃除をするはずのメイドたちが、私が着替えをし、朝食をとっている横で、作業に勤しんでいる。
そして、寝具を替えてもらったら、私はまたそこに倒れる予定である。
この世界では当然のことだと分かっていても、前世の記憶がある私は「情事の後始末を他人にされるなんて!」と心の中で叫んでいる。
シーツを満面の笑みで換えている彼女たちを直視できない。
とはいえ、ここまで消耗させられるとは思っていなかった私も、全く喜んでいないわけではない。
あの旦那様とセフレになるという状況はそう悪いものではない。
はっきり言って、旦那様は恋愛対象として全く魅力的ではない。
お金はあるに越したことはないけれど、それよりもやはり愛してくれる相手がいいのは当然だ。
でも彼にはそれは求められないわけだから、せめて子作りや、その過程を楽しみたい。
そんな私たちの情事は、あの艶本の力も借りて確実に進化している、と思う。気持ちよさが毎日増していってしまっているから。
「奥様。お体の具合はいかがですか?」
「ドレスの仮縫いが無理なようでしたら日を変えさせますが」
私は皆に向かって、気恥ずかしさを隠したような笑顔で「問題ないわ」と答えた。「夫に愛され過ぎて困っている妻」の演技だ。
生温い微笑みを返されたので、成功したと言っていいだろう。
この日は今度出席する夜会用のドレスの仮縫いの予定が入っていた。
私がこの屋敷で暮らし始めてから、あの日に初夜を迎えるまでの間に、急遽「新しくお二人の色味を合わせたお召し物をお作りになるべきです」という、メイド長らの進言により決まったものだ。
色だけではなくて生地までも合わせた衣装というのは、かなりの仲良しアピールになるらしい。
結婚式の日に初夜を済ませなかった旦那様に対する、家令やメイド長からのお小言の意味もあるのではないかと私は思っている。
ただでさえ急ぎの仕事だろうに、公爵家の意向には逆らえないだろう服飾職人が、私が起き上がれないせいで、今後さらに急いでドレスを仕上げなくてはならなくなったら、とても気の毒だ。
そう思った私はその日の朝寝はほんの少しの時間で切り上げて、職人らに会うための支度を始めたのだった。
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