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手篭めにされて困ってるんです
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「カトリー。オルゴのとこまで、これ持っていっておくれ」
「……ええ~…」
俺のばーちゃんは薬屋だ。小さな街に一つしかない薬屋なので、毎日忙しい。
先日、川沿いに住むオルゴに珍しい薬を頼まれたが、材料が貴重で取り寄せるしかなかったらしく、今日ようやく調合が終わったようだ。ほんとはこういうの、魔法使いがぱぱっとやったほうが早いんだけど、条例で資格のない魔法使いが許可なく能力を使うことは禁じられている。
魔法は、結構誰にでも出来る。禁じられてるけど、火を起こす時にちょっと使うくらいは黙認されてる。でも治療となると話は別らしい。まあ、ばーちゃんも薬師と屋号の資格持ってるからな。逆に言うとばーちゃんは魔法が使えない。
俺はちょっとだけなら、魔法が使える。一瞬だけ火を起こせるのと、一瞬だけ水を出せるくらいだ。ほとんど、何の役にも立たない。
さて、問題のオルゴだが、こいつがかなり厄介で鬱陶しい。何故ならオルゴは、この辺じゃ名の通った魔法使いなのだ。だから基本的には、ばーちゃんの薬なんか必要ない。でもしょっちゅうばーちゃんに色んな薬の調合を頼んでいる。好奇心が強いというのもあるが、本当の目的を、俺は知っている。
「……オルゴ~?いないのか~…」
オルゴの住処は、川下にある二棟ぶち抜きの三階建ての豪邸だ。援助として国からかなり金をもらっているらしい。ずるいやつ。でもオルゴの功績はみんな知っているので、黙るしかない。もちろん俺も。
鍵はいつもかかっていない。というよりは、オルゴが許可した人間しか、この扉を開けることが出来ない。つまりオルゴは、俺がここに来ることを知っていた、ということになる。
だから留守でも構わないのだ。他の誰も、この屋敷には入れないのだから。
誰もいない今のうちだ、と思い、預かってきた薬の入った袋を、入り口から一番近いテーブルに置いてとっとと帰ろうと歩き出す。誰もいないはずの玄関の扉が、音を立てて閉じていった。
「よぉ、カトリー!よく来たな!会えて嬉しいぞ」
だだっ広い廊下の奥から、聞きたくない声の主が姿を表す。オルゴ・エンデバー。魔法使いらしからぬ格好の男が、すたすたと大股で近づいてきた。
「俺にそんなに会いたかったのか?ん?」
「ばーちゃんに言われて持ってきただけ、……近いって!」
両腕を広げて再会を喜んでいるが、俺はまったく嬉しくない。この男は、やたらと距離が近いから苦手だ。
「そうだ、俺はルチアに調合を頼んだ!するとおまえが届けに来た!これはおまえが俺に会いたかったことの証明にならないか?」
「なるわけないだろ……魔法の使いすぎで頭おかしくなったんじゃないのか……」
「相変わらず俺には厳しいな、カトリー。そういうところも愛しているが」
「……いや、ほんと…マジでやめて…それ……」
「嫌がるカトリーはいつ見ても愛らしいな」
うっとりとした顔で訳の分からない事を言うな。つまるところ、オルゴは俺が嫌がっている姿を見るのが好きなのだ。子供の発想か、と呆れてしまう。
「で?ルチアからの薬は?」
「はい。……確かに渡したからな」
手に持っていたままの袋を、乱暴にオルゴへ手渡した。中を開いて確認すると、オルゴはいつもの恍惚とした表情を浮かべる。
「……なに?それ」
「気になるか?教えてやろうか、カトリー」
「えっ、い、いいの…?」
いくら孫といえど、顧客の購入履歴といった個人情報は教えて貰えなかった。でも俺は毎回こうやってオルゴへお使いをしてまで渡しているんだから、なにを取引しているのか知る権利はあるはずだ。
そして、魔法使いのオルゴが、いったい何の薬を欲していたのか、ずっと気になっていた。
袋のなかに敷き詰められた、クッション材の上に転がる小さな小瓶を取り出す。ラベルもなにもない、…なんだろう?綺麗なオレンジ色をしていた。
オルゴはにこりと笑うと、くるりと踵を返す。
「ここで見せるのは危険だからな。研究室へ来い」
俺の好奇心をくすぐるには、十分過ぎる言葉だった。
研究室、と呼ばれたその部屋は、どう見てもいかがわしいもので溢れていた。
棚には、見たこともないような剥製やホルマリン漬けの生物が所狭しと並び、記号にしか見えない謎の言葉で書かれた書物が本棚にも床にも散乱していた。
魔法使いの研究室というのは、こういうものなのか?
「カトリー」
名前を呼ばれるだけで、魂を抜かれるようだ。
恐る恐る近づくと、先ほど取り出した小瓶を持ったオルゴが、また意地の悪い笑みを浮かべていた。
ぽん、と音を鳴らせると、小瓶の蓋を開けて俺の方へ向ける。手をひらひらさせて、俺に匂いを嗅げ、と言っているようだった。
顔を近づけて、すん、と鼻から吸う。一気に酸素濃度が濃くなった気がして、足元が覚束なくなった。よろめいた身体を、オルゴが抱きとめる。
意識が無くなる寸前に、何かをつぶやいていたはずだけど、なんて言ってるのかは聞き取れなかった。
『カトリー。起きろ』
脳に直接使命を送られたみたいに、一気に覚醒する。目がぱちんと開いて、五感に血が通っていった。きゅう、と、腹に力が入る。
「……よぉ、カトリー」
「…っ、お、る、ごっ……はっ!?♡ぁっ♡やっ♡な、っ…!♡」
視界いっぱいにオルゴの顔が広がる。存在を認識したと同時に、下半身に纏わりついた快楽の波が襲ってきた。
――こいつ、また!
「おまえはいっつも単純だなあ、カトリー。俺が何か企んでるとは思わなかったのか?」
「あっ♡あっ♡だ、って♡あっ♡ん…っ♡ああっ♡」
ぐるんと腰を動かして、気持ちいいところを何度もこする。言いたいことがいっぱいあったのに、気持ちよすぎて何も考えられない。
「あの薬な、超強力で即効性の高い淫薬だ。液体を陰部に塗ることで性的興奮を持続させるものなんだが……おまえは匂いだけで即効いたな?よっぽど欲求不満だったのか?」
「あっ♡えっ♡えっちな、っ♡くすりっ…?♡」
「まあそういうことだな」
「あ、あっ♡お、まえっ♡ばーちゃ、んにっ♡なんて、ものっ…♡んやあっ…!♡」
抗議の言葉は、奥に射精された衝撃で消えてしまった。熱い飛沫が腸壁を強く叩いている。そんな刺激に手を引かれ、絶頂まで上り詰めてしまった。
「…ん、おう、…相変わらずスゲー締め付け。おまえほんと俺とセックスするの好きだな?」
「すきじゃないっ♡おまえがっ♡むりやり…っ♡あっ♡やだやだっ♡そこだめぇっ♡やらぁっ♡」
「なに、…がっ、…いや、だって?」
「やぁっ♡オルゴのばかぁっ♡またイッちゃうからぁっ♡」
オルゴの腰が、言葉に合わせてパンパンと打ち付けられる。つま先から髪の毛先まで、全部オルゴに見透かされているようで怖い。
伸ばした手をぎゅっと掴まれて、息ができないほど唇を塞がれる。唾液と舌が一緒に潜り込んできて、酸素が足りてないみたいに頭がぼーっとなった。
「ん、は…ぁ♡オルゴ、オルゴ……♡」
「気持ちいいか、カトリー?」
「きもちいいっ♡きもちいいよぉっ…♡」
こどもをなだめるように頭を撫でられて、胸の中がいっぱいになる。何度もキスで溺れる錯覚に陥り、目の前のオルゴの首にすがりついた。
「可愛いな、カトリー。俺と結婚してくれ」
「するっ♡オルゴと結婚するっ♡」
「カトリー、…愛してるよ」
「俺も好き…♡オルゴしゅきぃ…♡いっぱいキスしてぇ…♡」
オルゴに甘い言葉で責められ、胸の内を吐露してしまう。
多才でセックスのうまい男の睦言を無視出来るほど、俺の経験は豊富ではなかった。
――そうだ。いつもそうなるんだ。
オルゴはなにかにつけて俺に手を出しては、なし崩しにセックスまで持ち込んでしまう。気持ちよすぎて頭が馬鹿になりそうで、言わなくてもいいことまで言ってしまう、俺はこの男とのセックスが何よりも怖かった。
どうせ誰にでも同じようなことをしている癖に。オルゴのそういう軽薄な部分が、一番嫌いだ。
「カトリー。俺の子を、孕んでくれるか?」
「ひぅっ♡うんっ♡オルゴのあかちゃん、ほしいよぉっ♡」
オルゴの暖かな腕が背中に回される。耳元で何度も「愛してる」と囁かれ、何度目かの絶頂を迎えた。同時にオルゴも俺の中で果てる。腹の中に注ぎ込まれる子種が愛しくて、擦り切れるほど皮膚を撫でた。孕みなんかしないのに。
「カトリー」
「…っ♡もぉむりっ……♡オルゴ、許してぇ……♡」
「まだ足りねえよ。愛してる、カトリー……」
「オルゴ…っ♡だめっ♡だめ、っ…♡もっと好きになっちゃ…♡ひゃ、あっ…♡」
繰り返される律動に、いつの間にか意識を手放していた。
◇◇◇◇
「ルチアによろしくな」
「自分で言え……」
しこたま抱かれたあと、念入りに身体を磨かれ、疲労が回復した頃、ようやく開放された。
お土産に、とたくさんの貴重な薬草や調合の提案書などを渡され、来た時よりも荷物が増えてしまい、自然と不機嫌になる。俺はいったいなんのために、ここまで来たんだ?
「じゃあな、カトリー。また明日も来てくれると嬉しいが」
「……無理。身体バキバキで疲れたんだ。もう明日は寝て過ごす」
「そうか、残念だな。じゃあ明日は俺がそっちへ行くか」
「来なくていい!他のやつに頼めよ、選り取り見取りだろ」
俺じゃない誰かに、慰めて貰えばいい。嫌味じゃなくそう思った。
「……俺はおまえ以外を、この屋敷に入れたことなどないが?」
甲高いファンファーレが、脳内を駆け巡っていった。
「……ええ~…」
俺のばーちゃんは薬屋だ。小さな街に一つしかない薬屋なので、毎日忙しい。
先日、川沿いに住むオルゴに珍しい薬を頼まれたが、材料が貴重で取り寄せるしかなかったらしく、今日ようやく調合が終わったようだ。ほんとはこういうの、魔法使いがぱぱっとやったほうが早いんだけど、条例で資格のない魔法使いが許可なく能力を使うことは禁じられている。
魔法は、結構誰にでも出来る。禁じられてるけど、火を起こす時にちょっと使うくらいは黙認されてる。でも治療となると話は別らしい。まあ、ばーちゃんも薬師と屋号の資格持ってるからな。逆に言うとばーちゃんは魔法が使えない。
俺はちょっとだけなら、魔法が使える。一瞬だけ火を起こせるのと、一瞬だけ水を出せるくらいだ。ほとんど、何の役にも立たない。
さて、問題のオルゴだが、こいつがかなり厄介で鬱陶しい。何故ならオルゴは、この辺じゃ名の通った魔法使いなのだ。だから基本的には、ばーちゃんの薬なんか必要ない。でもしょっちゅうばーちゃんに色んな薬の調合を頼んでいる。好奇心が強いというのもあるが、本当の目的を、俺は知っている。
「……オルゴ~?いないのか~…」
オルゴの住処は、川下にある二棟ぶち抜きの三階建ての豪邸だ。援助として国からかなり金をもらっているらしい。ずるいやつ。でもオルゴの功績はみんな知っているので、黙るしかない。もちろん俺も。
鍵はいつもかかっていない。というよりは、オルゴが許可した人間しか、この扉を開けることが出来ない。つまりオルゴは、俺がここに来ることを知っていた、ということになる。
だから留守でも構わないのだ。他の誰も、この屋敷には入れないのだから。
誰もいない今のうちだ、と思い、預かってきた薬の入った袋を、入り口から一番近いテーブルに置いてとっとと帰ろうと歩き出す。誰もいないはずの玄関の扉が、音を立てて閉じていった。
「よぉ、カトリー!よく来たな!会えて嬉しいぞ」
だだっ広い廊下の奥から、聞きたくない声の主が姿を表す。オルゴ・エンデバー。魔法使いらしからぬ格好の男が、すたすたと大股で近づいてきた。
「俺にそんなに会いたかったのか?ん?」
「ばーちゃんに言われて持ってきただけ、……近いって!」
両腕を広げて再会を喜んでいるが、俺はまったく嬉しくない。この男は、やたらと距離が近いから苦手だ。
「そうだ、俺はルチアに調合を頼んだ!するとおまえが届けに来た!これはおまえが俺に会いたかったことの証明にならないか?」
「なるわけないだろ……魔法の使いすぎで頭おかしくなったんじゃないのか……」
「相変わらず俺には厳しいな、カトリー。そういうところも愛しているが」
「……いや、ほんと…マジでやめて…それ……」
「嫌がるカトリーはいつ見ても愛らしいな」
うっとりとした顔で訳の分からない事を言うな。つまるところ、オルゴは俺が嫌がっている姿を見るのが好きなのだ。子供の発想か、と呆れてしまう。
「で?ルチアからの薬は?」
「はい。……確かに渡したからな」
手に持っていたままの袋を、乱暴にオルゴへ手渡した。中を開いて確認すると、オルゴはいつもの恍惚とした表情を浮かべる。
「……なに?それ」
「気になるか?教えてやろうか、カトリー」
「えっ、い、いいの…?」
いくら孫といえど、顧客の購入履歴といった個人情報は教えて貰えなかった。でも俺は毎回こうやってオルゴへお使いをしてまで渡しているんだから、なにを取引しているのか知る権利はあるはずだ。
そして、魔法使いのオルゴが、いったい何の薬を欲していたのか、ずっと気になっていた。
袋のなかに敷き詰められた、クッション材の上に転がる小さな小瓶を取り出す。ラベルもなにもない、…なんだろう?綺麗なオレンジ色をしていた。
オルゴはにこりと笑うと、くるりと踵を返す。
「ここで見せるのは危険だからな。研究室へ来い」
俺の好奇心をくすぐるには、十分過ぎる言葉だった。
研究室、と呼ばれたその部屋は、どう見てもいかがわしいもので溢れていた。
棚には、見たこともないような剥製やホルマリン漬けの生物が所狭しと並び、記号にしか見えない謎の言葉で書かれた書物が本棚にも床にも散乱していた。
魔法使いの研究室というのは、こういうものなのか?
「カトリー」
名前を呼ばれるだけで、魂を抜かれるようだ。
恐る恐る近づくと、先ほど取り出した小瓶を持ったオルゴが、また意地の悪い笑みを浮かべていた。
ぽん、と音を鳴らせると、小瓶の蓋を開けて俺の方へ向ける。手をひらひらさせて、俺に匂いを嗅げ、と言っているようだった。
顔を近づけて、すん、と鼻から吸う。一気に酸素濃度が濃くなった気がして、足元が覚束なくなった。よろめいた身体を、オルゴが抱きとめる。
意識が無くなる寸前に、何かをつぶやいていたはずだけど、なんて言ってるのかは聞き取れなかった。
『カトリー。起きろ』
脳に直接使命を送られたみたいに、一気に覚醒する。目がぱちんと開いて、五感に血が通っていった。きゅう、と、腹に力が入る。
「……よぉ、カトリー」
「…っ、お、る、ごっ……はっ!?♡ぁっ♡やっ♡な、っ…!♡」
視界いっぱいにオルゴの顔が広がる。存在を認識したと同時に、下半身に纏わりついた快楽の波が襲ってきた。
――こいつ、また!
「おまえはいっつも単純だなあ、カトリー。俺が何か企んでるとは思わなかったのか?」
「あっ♡あっ♡だ、って♡あっ♡ん…っ♡ああっ♡」
ぐるんと腰を動かして、気持ちいいところを何度もこする。言いたいことがいっぱいあったのに、気持ちよすぎて何も考えられない。
「あの薬な、超強力で即効性の高い淫薬だ。液体を陰部に塗ることで性的興奮を持続させるものなんだが……おまえは匂いだけで即効いたな?よっぽど欲求不満だったのか?」
「あっ♡えっ♡えっちな、っ♡くすりっ…?♡」
「まあそういうことだな」
「あ、あっ♡お、まえっ♡ばーちゃ、んにっ♡なんて、ものっ…♡んやあっ…!♡」
抗議の言葉は、奥に射精された衝撃で消えてしまった。熱い飛沫が腸壁を強く叩いている。そんな刺激に手を引かれ、絶頂まで上り詰めてしまった。
「…ん、おう、…相変わらずスゲー締め付け。おまえほんと俺とセックスするの好きだな?」
「すきじゃないっ♡おまえがっ♡むりやり…っ♡あっ♡やだやだっ♡そこだめぇっ♡やらぁっ♡」
「なに、…がっ、…いや、だって?」
「やぁっ♡オルゴのばかぁっ♡またイッちゃうからぁっ♡」
オルゴの腰が、言葉に合わせてパンパンと打ち付けられる。つま先から髪の毛先まで、全部オルゴに見透かされているようで怖い。
伸ばした手をぎゅっと掴まれて、息ができないほど唇を塞がれる。唾液と舌が一緒に潜り込んできて、酸素が足りてないみたいに頭がぼーっとなった。
「ん、は…ぁ♡オルゴ、オルゴ……♡」
「気持ちいいか、カトリー?」
「きもちいいっ♡きもちいいよぉっ…♡」
こどもをなだめるように頭を撫でられて、胸の中がいっぱいになる。何度もキスで溺れる錯覚に陥り、目の前のオルゴの首にすがりついた。
「可愛いな、カトリー。俺と結婚してくれ」
「するっ♡オルゴと結婚するっ♡」
「カトリー、…愛してるよ」
「俺も好き…♡オルゴしゅきぃ…♡いっぱいキスしてぇ…♡」
オルゴに甘い言葉で責められ、胸の内を吐露してしまう。
多才でセックスのうまい男の睦言を無視出来るほど、俺の経験は豊富ではなかった。
――そうだ。いつもそうなるんだ。
オルゴはなにかにつけて俺に手を出しては、なし崩しにセックスまで持ち込んでしまう。気持ちよすぎて頭が馬鹿になりそうで、言わなくてもいいことまで言ってしまう、俺はこの男とのセックスが何よりも怖かった。
どうせ誰にでも同じようなことをしている癖に。オルゴのそういう軽薄な部分が、一番嫌いだ。
「カトリー。俺の子を、孕んでくれるか?」
「ひぅっ♡うんっ♡オルゴのあかちゃん、ほしいよぉっ♡」
オルゴの暖かな腕が背中に回される。耳元で何度も「愛してる」と囁かれ、何度目かの絶頂を迎えた。同時にオルゴも俺の中で果てる。腹の中に注ぎ込まれる子種が愛しくて、擦り切れるほど皮膚を撫でた。孕みなんかしないのに。
「カトリー」
「…っ♡もぉむりっ……♡オルゴ、許してぇ……♡」
「まだ足りねえよ。愛してる、カトリー……」
「オルゴ…っ♡だめっ♡だめ、っ…♡もっと好きになっちゃ…♡ひゃ、あっ…♡」
繰り返される律動に、いつの間にか意識を手放していた。
◇◇◇◇
「ルチアによろしくな」
「自分で言え……」
しこたま抱かれたあと、念入りに身体を磨かれ、疲労が回復した頃、ようやく開放された。
お土産に、とたくさんの貴重な薬草や調合の提案書などを渡され、来た時よりも荷物が増えてしまい、自然と不機嫌になる。俺はいったいなんのために、ここまで来たんだ?
「じゃあな、カトリー。また明日も来てくれると嬉しいが」
「……無理。身体バキバキで疲れたんだ。もう明日は寝て過ごす」
「そうか、残念だな。じゃあ明日は俺がそっちへ行くか」
「来なくていい!他のやつに頼めよ、選り取り見取りだろ」
俺じゃない誰かに、慰めて貰えばいい。嫌味じゃなくそう思った。
「……俺はおまえ以外を、この屋敷に入れたことなどないが?」
甲高いファンファーレが、脳内を駆け巡っていった。
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