【改稿版】休憩スキルで異世界無双！チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

第16話 獣王剣（２）

俺の目の前にいるベルはまるで別人だ。
獣王剣を使い成人並みに身体が成長したのだ。
白狼族は美しく育つ傾向があるため、
いきなり別人のように美しくなったベルに胸が高鳴る。


「ベル、なんだよな？」


「はい、ベルです」


声も少し大人びている印象がある。
成長と共に髪が伸びており、
邪魔にならないように髪ゴムで結ぶ。
ポニーテールの髪型だ。



「身体強化されていると、
　資料にはあったが、いけそうか？」



「力がみなぎってきます……
　今なら誰にも負ける気がしません」



「よし、俺が魔法で援護する！
　お前は俺の剣を使って前衛だ」



そしてまず、痛い目にあった盗賊に仕返しに行く。
背後から俺が魔法を放ち、
焦ったところをベルが仕留める。
先程は手も足も出なかった盗賊に対して、
今は立場が逆転していた。


「凄い移動速度だな」


「こ、こんなに早く動けたこと無いですよ」


念のため俺も盗賊の剣を回収して装備する。


「時間がない……
　送った魔力も減り続けているからな！」


「急ぎます！」


中央広場に向かい盗賊の背後からベルの剣で貫く。
今までは身体能力が足りず、
磨いていた技を活かすことが出来なかった。
そしてここに来て、死に物狂いで鍛錬してきた成果が実を結ぼうとしている。


「敵襲だ！」


攻撃に気づいた時点で既に遅い。
目にも止まらぬ速さに手も足も出ない。
あっという間に見張りの盗賊を全滅させた。


遠くから近づく男も、すぐさま逃げ出していく。
圧倒的な脚力で制圧され、恐怖したのだ。
逃げる者に情けをかける人もいるだろうが、
この里の惨状を見て俺は容赦しない。


「ファイアボール！」


火魔法を当て、更に剣でとどめを刺す。


「周囲に気をつけろよ！
　死角に敵がいるかもしれない！」


「はい、私が皆んなを……
　必ず守ってみせます！」


圧倒的な戦力で盗賊を制圧している。
それだけ強化された身体能力は脅威的なのだ。
そしてついに広場の敵を全滅させて、
牢屋へ到着する。


「サーシャ！！」


「あなたは？」


ようやくサーシャと再会したが、
目の前の人物がベルだと気付かない。


「君のよく知るベルだ！
　今は身体強化で身体が大きくなっている」


「べ、ベルなの？」


「うん、サーシャの友達のベルだよ！
　サーシャ、今助ける！」


この状況から解放されるため、
サーシャと里の女性達は涙を流し始めた。
しかし、これから救出するところで、
最後の1人となった盗賊の親玉が現れる。



「お、お前ら！
　このまま生きて返すと思っているのか？
　絶対に殺す！」



仲間の悲鳴を聞いて駆けつけたようだ。
他の盗賊よりも高価な装備を身につけており、
間違いなく盗賊の親玉だと分かる。



「里に住む人をこんなにしたんだ……
　俺はお前もその仲間も許す気はない！
　覚悟しろよ！」



「粋がるなよ、ガキが！」



盗賊は不敵な笑みを浮かべながら、
懐から毒付きのナイフを取り出して、
俺めがけて投げてきた。


「クリス様！」


刺さりそうになる瞬間、
ベルが俺を庇うように弾き飛ばす。
するとベルの胸へ吸い込まれるように、
ナイフが突き刺さった。


「ベル！！！」


「調子に乗るからだ」


急所に当てられたのを喜び、
嫌らしい笑みと共に近づいてくる。


ふざけるなよ……
俺は、こんなところでお前なんかに……
絶対に負けない。


「ファイアボール！！！」


火魔法が炸裂し盗賊がよろめく。
更に感情の赴くままに火魔法を顔に当て続けた。


そしてベルも痛みに耐えながら、敵を切り払う。


「っく、くそが……」


そう言い残して盗賊は息耐えた。
年齢も体格も離れている相手に、
俺達は勝利したのだ。


しかし、ベルの方を見ると、
身体に毒が回り倒れてしまう。
俺は即座に駆け寄り、その手を掴んだ。


「ベル……」


「クリス様、良かった」


胸に刺さるナイフを抜き手を当てて、
必死に回復魔法をかける。



「バカ、お前……
　こんなに無茶しやがって」



「クリス様に救われた命、
　最後は……クリス様の……」



ベルの涙が頬を流れていく…
それを見て、俺は決意した……




「最後なんかじゃない！
　俺が、何度でも救ってやる！」




友達を攫われて……
守るために、こんなになって……




「クリス様……」




こんなのは認めない……
絶対に、絶対に助けてみせる……




魔力が底を尽く瞬間、
ベルから毒素が抜けていくのを感じる。
そして表情から苦しさが和らいだ。



「なんとか、乗り切ったか……」



ベルもそのまま眠っているようだ。
美しくなったベルの頭を撫でると、
改めて凄い成長だと感じてしまう。
圧倒的過ぎるほどの美貌だ。



ひとまず盗賊がいないのを確認しつつ、
牢に閉じ込められている者達を救出する。
捕まっていた者達からも盛大に感謝をされた。



そしてしばらくすると、
ルミナスから増援が到着する。



「おーい！お兄様～～！！」



リーナや父上、そして騎士団の皆んなが駆けつけてくれた。
アリスも一緒に来ると言って聞かなかったらしく、
無理矢理来たそうだ。


「クリス様、ご無事で良かったです。
　それと……隣のお方は、どなたですか？」　


「獣王剣を使ったベルだよ」


あまりの変化にリーナは驚愕している。
俺と一緒に資料を探していたため、
スキルの効果は知っているが、
いざ目の前にすると驚いてしまった。


「お兄様、また新しい女が！
　し、しかも強敵の予感」


「アリス、お前も来ていたんだな」


「お兄様の身に何かが起きたと思うと、
　胸が張り裂けそうで……
　でもアリスは別の意味で心配になります」


アリスは目を細めて俺に言ってきた。
たまに意味の分からないことを言う……


「何のことだよ！」


「知りませーん」


ぷくーっと、頬を膨らませて、知らんぷりする。
アリスと戯れていると父上が話しかけてきた。


「今回は良くやったな。
　そして騎士団の仕事で迷惑をかけた」


「父上、お役に立てて良かったです」


「救出された白狼族は王都で保護するから、
　安心してくれ……」



今回の件は父に任せて一件落着となる。
今日は図書館で自分の探し物はできなかったが、
隣で静かに眠る少女を見ていると、
本当に救えて良かったと心から安堵していた……