【改稿版】休憩スキルで異世界無双！チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう

文字の大きさ

大中小

42 / 125

第42話　母親

しおりを挟む

燃えたぎる炎が少しずつ収まり、
周りを囲っていた炎の牢獄が少しずつ消滅する。

クレアは目の前の炎に飛び込めず、
胸が張り裂けそうな思いだった。
何故かクリスを失いたくないと強く願う。

そして徐々に炎の牢獄が消えて、
隙間からクリスの姿が見えると、
クレアは我慢出来ずに走り出した。

「クリス！」

気付いたら俺は母親に抱きしめられていた……
二度と会えないと思っていたけれど、
こうして触れ合う事が無性に嬉しくて、
気づけば瞳は涙で溢れていた……

母上……

「ば、ばか……
　心配させるな……」

「クレアさん」

一瞬、母上と言いかけるが言葉を飲み込む。
本当は打ち明けたいが、
拒絶されて離れてしまう方が今は辛い。
そう思ってしまう……

「お前が生きていてくれて、
　本当に、良かった……」

母上は涙声で伝える。
その言葉を聞いた瞬間に、母親に自分の存在を認められた気がして涙が出てしまった……

「クレアさん、ありがとうございます」

「な、なんでお前が感謝するんだ！
　私の方が言わなければだろう？」

「え？」

「お前こそ、イフリートを倒し、
　私たちを救ったじゃないか」

そうか、母上とユーリを守れたんだよな……
今でもまだ信じられない……

「そうでしたね！
　でも、偶然、相性が良かっただけで……」

母上と抱き合っていると、
遅れてユーリも到着した。

「くりじゅー」

すごい顔でユーリが到着する。
涙と鼻水で洪水のようだ。
ユーリも俺を心配してくれたのだろう。

でも、そんなユーリの顔が面白くて、
何だか吹き出してしまった。

「ふふふ、あはははは」

「ひどいよ……くりす……」

ユーリは顔を膨らませて拗ねている。
いつものユーリと違って、
このような表情もとても可愛らしい。

その後、母上が契約の腕輪を所持していた為、
イフリートと契約をすることになった。
契約を終えると、イフリートは精霊界に帰るために森に姿を消す。
あっという間の出来事だったが、
歴史的な瞬間に立ち会えた。

そしてようやく、精霊の森を抜ける。
思えば色々あったが、
上手く切り抜けることが出来た。

「あねご！村だよ！」

森を抜けると遠くに村が見える。
待ちに待った麓の村にユーリは、
我慢が出来なくなり走り出した。

「ちょっと偵察に行ってくる！」

ユーリはお腹が空きすぎて限界なのだ。
森に入ってから半日以上は経っている。
一緒に食べた串焼きや、喫茶店での食事は、
とっくに消化していた。

「転ぶなよ～」

ユーリは、先に走り出してしまい、
少しの間、母上と二人きりになる。

「クリス、ありがとうな……」

「え？」

「ユーリのことだよ……
　友達になってくれて」

ユーリに友達は一人もいない。
魔女が原因で親しい者も去ったと聞く。

「俺も楽しいですから……
　ユーリと一緒にいると」

「クリス……」

「もちろん、クレアさんもですよ！」

急に自分に言われると思っていなかったのか、
一瞬驚いた素振りを見せるが、
優しい笑顔を俺に向ける。

「あぁ……私もだよ……
　クリス……」

その笑顔に俺は見惚れてしまう。
母上は、美しい容姿をしているが、
その笑顔に母性を感じたのかもしれない。

アリスにも会わせたら、
きっと喜ぶだろうな……

「おーい！あねご、クリス！
　お団子無くなるぞ～」

村に入り、団子を確認したユーリが大声で叫ぶ。

「本当に食いしん坊なやつだ！」

母上は、はしゃぐユーリを見て、
再度笑顔になっている。

「さあ、俺たちも行きましょう！
　団子なくなりますからね」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

この村は山の麓に位置しているだけあって、
登山客や冒険者が多い。

「おい、あいつ閃光のクレアだぜ」

早速、母上の噂話が聞こえてくる。
世界中にその名が轟くと、
父上が話していたのを思い出した。

俺たちは今、団子屋のベンチに座って、
仲良く3人で団子を食べている。
ちなみにユーリの目は、星のように綺麗だ。

見物人が増え始めて、母上の眉間に皺がよる。
せっかくユーリが幸せそうに団子を頬張るが、
邪魔したくないと母上は必死に我慢しているようだ。

そんな中、人混みをくぐり抜けて、
俺たちに近付く人物がいる。

「よお！クレア」

「お、おまえは！
　カートじゃないか……」

まさか、麓の村でカートさんに、
出会うとは思っていなかった。
10年前もカートさんは変わっておらず、
吹き出しそうになる。

カートさん……
10年前もおじさんじゃないか。

「クレア、これからどこに向かうんだ？」

「この先の山に登るのだが」

「そりゃあ、良い！
　俺も同行させてくれ！」

母上の実力は規格外だ。
敵に回すと、光の剣の犠牲になるが、
仲間であるならば話は違う。
道中の安全は約束されたようなものだ。

「お、おい……」

「俺一人だけだと心許なくてな！
　お礼に夕飯はなんでもご馳走するぞ」

「な、何だと……」

母上はユーリへの奢りを心配していたようだ。
ユーリは大食らいだ。
何でも奢ると言ったのを後悔したのかもしれない。

「わ、わかった！
　お前の同行を許可する」

「あねご、奢りに負けやしたね……」

ユーリがジト目で母上を見ると、
母上は少し頬を赤くして反論する。

「う、うるさい……
　こいつが何でも奢ってやると言ったのだ！
　ユーリも遠慮せず食いまくれ……」

「な、何と！あねごから、
　真の力を解放する許可がおりた！」

ユーリはその言葉に目を輝かせるが、
俺はこの後、カートさんの財布の中身を心配した。
一瞬で溶けて無くなるだろう。

「おまえ、見ない顔だな……」

「はじめまして、クリスと申します」

「俺はカートだ！
　そこのクレアと同じルミナスに所属する。
　俺は騎士団だがな」

挨拶を終えて、野次馬がかなり集まってきたので、
俺達も移動する事にした。
ユーリの待ちに待った夕食の時間。
食事処に向かう……

俺はカートおじさんが好きだ。
普段であれば物凄く嬉しいだろう。
だが、この時代では出来れば会いたくなかった……
何故なら、母上の死を目にした人物だからだ。
俺達の旅は少しずつ終わりに近付いているのかもしれない……

しおりを挟む