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第116話 救う者(3)
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500年前のルミナス城、訓練場で賢者の側近イシスの斬撃を受け止める人物が現れた。
「何者だ、貴様は……」
そして、その人物は決意を込めて高らかに宣言する。
「クリス、レガード……
今日ここで……
賢者を……救う者だ!」
イシスの剣を受け止めて鍔迫り合いになるが、
まともに打ち合うと危険だと本能が察知した。
その感覚に従い、俺は即座に剣を弾き飛ばす。
そしてその瞬間、母上が賢者に駆け寄り手当を施す。
更にユリスとガルムが遅れて訓練場に到着し、
その光景を見て、唖然と立ち尽くした。
「先生、これは嘘よね?
まさか先生がこんな事するはずない!」
「ふふふ、事実よ……
今まで貴方が見ていたのは偽りに過ぎない」
イシスは、邪悪な笑みを浮かべて、
暗黒魔法を発動する。
「ダークスフィア!」
暗黒魔法の槍がユリスに向かうが、
ユリスは、炎の魔法剣で暗黒魔法をかき消した。
更に怒りに震えながら言葉を放つ。
「先生、賢者様をこんなにしたのよね?
絶対に……絶対に許さないわ!」
怒りがユリスの才能を目覚めさせ、
その瞬間、剣術スキルのレベルが7に上がる。
「ここに来て覚醒したのね……
ふふふ、面白いわ……
私が育てた弟子を私が殺してあげる」
不敵な笑みを浮かべながら、高速でユリスに迫る。
そして俺もユリスに加勢しようと動いた時、
賢者が口を開いた。
「覇王を持つ者よ……」
瀕死の賢者に呼ばれ、放っておける訳がなかった。
しかし、ユリスをこのまま1人で戦わせるわけにはいかない。
咄嗟に周りを見回すと、ガルムが目に入る。
「ガルム、頼む……
俺が行くまでユリスを守ってくれ!」
ガルムは俺の声を聞いた途端に、
姿を変えて、ユリスの元へ走り出す。
「賢者……」
傷口を見て、即座に回復魔法をかけるが、
一向に治る気配が無い。
このままでは賢者を死なせてしまう。
必死に思考を張り巡らしていると、
リルムの病を治した手段を思い出した。
その時に使った素材、龍の生き血だ。
「賢者、俺達は未来の賢者から、
龍を倒して素材を届けるように言われたんだ!」
いきなり突拍子もないことを言われて、
混乱していると思うが、時間がない。
龍の素材を直接見せて強引に理解させた。
「な、何だと……」
袋から取り出して龍の素材を見せると、
賢者は、目を見開き驚く。
恐らく俺の言うことを信じられなかったが、
もう既に真実だと確信した。
「信じられないが本当なんだな……」
「あぁ、もっとゆっくり説明したいが、
そういうわけにもいかないんだ……」
そして、俺は龍の生き血を治療に使えないか問いただした。
「な、なんだと!
生き血を持っているなら早く言え!」
賢者は母上に指示を出しながら、
龍の生き血を素材にして即席の薬を調合する。
「私も悪運が強いね……」
賢者がその薬を飲むとあっという間に傷が塞がる。
まるでおとぎ話に出てくる光景のようだ。
「龍の生き血は、錬金術でも最高の素材なんだ……
ありがたく使わせてもらったよ」
間一髪だったが、龍の生き血によって、
肩に鋭く入っていた傷も見事に塞がった。
「良かった、師匠!」
母上は涙を流しながら賢者に抱き付いたが、
この時代で母上を知らない賢者は少し困惑して、
それが可笑しくて笑ってしまう。
その時、突如として通信機から連絡が入った。
それは未来の賢者からだった。
「私に会えて救えたようだね……
私の存在が消えかかっていたから、
連絡出来なかったんだ……」
過去の賢者が攻撃を受けていたため、
未来にも影響していたようだ。
通信出来なくなったのはその為だ。
「ここからはラグナ達の部屋に行く……
申し訳ないがクレアだけ先に来れないか?」
賢者はラグナ達の部屋に強力な波動を感知して、
母上に増援を求めた。
そして、俺は聖剣の場所を過去の賢者に確認する。
「私が直接、陛下に渡しに行く予定なんだ……
まだ、私の研究室にある筈だ!」
その情報を聞き、母上に全ての通信内容を伝えて、
一足先に未来へ戻るよう頼み込んだ。
「2人に別れの挨拶が出来ないのは残念だが、
今はユーリが心配だ……
クリス、後は頼んだぞ!」
「ちょっと待て、これは選別だ!
持っていけ!」
そして母上は、賢者から龍の血を受け取り、
研究室まで全速力で駆け抜けた。
「2人とも上手く立ち回ってるじゃないか」
賢者はユリス達の戦いぶりに感心している様子だ。
イシスの高速剣をギリギリでガルムが防ぎ、
追撃されないようにユリスが剣で攻撃を仕掛ける。
その様子から戦いは膠着状態に陥っていた。
「私も龍の血で封印が解けた……
一緒に加勢しようじゃないか!」
俺と賢者はユリス達に加勢するため、
互いに身体強化を強めて走り出した……
「何者だ、貴様は……」
そして、その人物は決意を込めて高らかに宣言する。
「クリス、レガード……
今日ここで……
賢者を……救う者だ!」
イシスの剣を受け止めて鍔迫り合いになるが、
まともに打ち合うと危険だと本能が察知した。
その感覚に従い、俺は即座に剣を弾き飛ばす。
そしてその瞬間、母上が賢者に駆け寄り手当を施す。
更にユリスとガルムが遅れて訓練場に到着し、
その光景を見て、唖然と立ち尽くした。
「先生、これは嘘よね?
まさか先生がこんな事するはずない!」
「ふふふ、事実よ……
今まで貴方が見ていたのは偽りに過ぎない」
イシスは、邪悪な笑みを浮かべて、
暗黒魔法を発動する。
「ダークスフィア!」
暗黒魔法の槍がユリスに向かうが、
ユリスは、炎の魔法剣で暗黒魔法をかき消した。
更に怒りに震えながら言葉を放つ。
「先生、賢者様をこんなにしたのよね?
絶対に……絶対に許さないわ!」
怒りがユリスの才能を目覚めさせ、
その瞬間、剣術スキルのレベルが7に上がる。
「ここに来て覚醒したのね……
ふふふ、面白いわ……
私が育てた弟子を私が殺してあげる」
不敵な笑みを浮かべながら、高速でユリスに迫る。
そして俺もユリスに加勢しようと動いた時、
賢者が口を開いた。
「覇王を持つ者よ……」
瀕死の賢者に呼ばれ、放っておける訳がなかった。
しかし、ユリスをこのまま1人で戦わせるわけにはいかない。
咄嗟に周りを見回すと、ガルムが目に入る。
「ガルム、頼む……
俺が行くまでユリスを守ってくれ!」
ガルムは俺の声を聞いた途端に、
姿を変えて、ユリスの元へ走り出す。
「賢者……」
傷口を見て、即座に回復魔法をかけるが、
一向に治る気配が無い。
このままでは賢者を死なせてしまう。
必死に思考を張り巡らしていると、
リルムの病を治した手段を思い出した。
その時に使った素材、龍の生き血だ。
「賢者、俺達は未来の賢者から、
龍を倒して素材を届けるように言われたんだ!」
いきなり突拍子もないことを言われて、
混乱していると思うが、時間がない。
龍の素材を直接見せて強引に理解させた。
「な、何だと……」
袋から取り出して龍の素材を見せると、
賢者は、目を見開き驚く。
恐らく俺の言うことを信じられなかったが、
もう既に真実だと確信した。
「信じられないが本当なんだな……」
「あぁ、もっとゆっくり説明したいが、
そういうわけにもいかないんだ……」
そして、俺は龍の生き血を治療に使えないか問いただした。
「な、なんだと!
生き血を持っているなら早く言え!」
賢者は母上に指示を出しながら、
龍の生き血を素材にして即席の薬を調合する。
「私も悪運が強いね……」
賢者がその薬を飲むとあっという間に傷が塞がる。
まるでおとぎ話に出てくる光景のようだ。
「龍の生き血は、錬金術でも最高の素材なんだ……
ありがたく使わせてもらったよ」
間一髪だったが、龍の生き血によって、
肩に鋭く入っていた傷も見事に塞がった。
「良かった、師匠!」
母上は涙を流しながら賢者に抱き付いたが、
この時代で母上を知らない賢者は少し困惑して、
それが可笑しくて笑ってしまう。
その時、突如として通信機から連絡が入った。
それは未来の賢者からだった。
「私に会えて救えたようだね……
私の存在が消えかかっていたから、
連絡出来なかったんだ……」
過去の賢者が攻撃を受けていたため、
未来にも影響していたようだ。
通信出来なくなったのはその為だ。
「ここからはラグナ達の部屋に行く……
申し訳ないがクレアだけ先に来れないか?」
賢者はラグナ達の部屋に強力な波動を感知して、
母上に増援を求めた。
そして、俺は聖剣の場所を過去の賢者に確認する。
「私が直接、陛下に渡しに行く予定なんだ……
まだ、私の研究室にある筈だ!」
その情報を聞き、母上に全ての通信内容を伝えて、
一足先に未来へ戻るよう頼み込んだ。
「2人に別れの挨拶が出来ないのは残念だが、
今はユーリが心配だ……
クリス、後は頼んだぞ!」
「ちょっと待て、これは選別だ!
持っていけ!」
そして母上は、賢者から龍の血を受け取り、
研究室まで全速力で駆け抜けた。
「2人とも上手く立ち回ってるじゃないか」
賢者はユリス達の戦いぶりに感心している様子だ。
イシスの高速剣をギリギリでガルムが防ぎ、
追撃されないようにユリスが剣で攻撃を仕掛ける。
その様子から戦いは膠着状態に陥っていた。
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