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第157話 精霊喰らい

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突如として賢者が乱入したが、
目の前のユミルは不敵な笑みを崩さない。


「やはり、お前……
 私達を分断させるために……」


「そうよ……作戦通りというわけ」


賢者は眉間に皺を寄せながら、
ユミルと会話をしている。
今のところ、相手の思惑通りに進んでしまった。


「気付いた時にはもう遅い!
 それに、どうせ私が勝つ……」


そう声を発した瞬間に、
ガルムがリルムの背後まで動き出す。


「動かないで……
 動いたら兄が妹を殺すわよ」


ガルムは、震えながら剣を持ち上げて、
リルムの首に剣を突きつけた。


そしてその瞬間、リルムと同じように、
ガルムの瞳も涙で溢れてしまう……


「洗脳されていても、
 まだ感情が残っていたのね……
 妹を離してくれと泣き叫んでいたものね」


「貴様!!!」


「ふふふ、動かないで!
 動いたら殺すと言ったでしょう?」


ガルムの持つ剣先がリルムの顔を微かに掠め、頬から血が流れていく……


「動いたら、次は殺す……
 それと……その女はこちらに来なさい」


影縛りのスキルにより、操られるかのように、シャルロットはユミルの方向へ歩き出した。


「お姉ちゃん!」


操られる感覚に逆らえず、
ゆっくりとユミルの方へ歩き出していく。
このままではシャルロットが殺されてしまう……
そう思った人物が、この局面を切り抜けようと動き出した。


そしてシャルロットは風の力を失う感覚を、
一度だけ体験したことがある。


「精霊契約が解除された?」


突如としてシルフィは、シャルロットの目の前に姿を表した。
せっかく知り合うことが出来た大切な存在。
気付けばシルフィの中で、シャルロットは、
姉のような存在になっていた……


「シルフィ!!」


単独になり空を飛ぶ精霊には、
テレサの影縛りは通用しない。
シャルロットを守るためにシルフィは、
力を込めて風の刃を放った。


「素晴らしい!この力、必ず手に入れる!」


ユミルに刃が届く前に、ガルムが間に入り、
その剣で薙ぎ払う。


「でも、甘いわ……
 テレサ!やりなさい!」


風の刃を撃った反動で、
シルフィは身動きが取れないでいた。
精霊は契約していない状態では、
力を十分に発揮できない。
テレサの暗黒の爪がシルフィを襲う。


友達が傷付く様にリリスも泣き叫んでいた。
初めての友人が殺されそうになっている。
何も出来ない自分が悔しくて仕方なかった。


「シルフィ……
 い……やだよ!」


このままでは、本当に友達を失ってしまう。
リリスは、この局面で自分に出来ることが、
何なのか必死に考え抜いた。
そして涙を拭い、小さい身体で張り叫ぶ。


「シルフィ!頑張って!!!」


その声がシルフィの瞳に戦意を宿らせる。
リリスの想いを力に変えて魔力を振り絞った。

そして風の刃3連撃を放ち、
ユミルに向かわせる。
それはシルフィの限界を超えて放たれた。


「何だと!」


3連続の風の刃は、暗黒の爪を飲み込み、
そのままユミルへ向かう。
ユミルは、マリアとサラの妨害をしていて、
風の刃を守りきれず、正面から受けてしまった。


「私が負けるだと?
 そんなことはあってはならない!」


顔面を傷付けられてしまい、
完全に本気になったユミルは、
テレサとの精霊契約を開始する。


「もう、容赦しない!
 お前達、全員殺す!」


無理矢理テレサを掴み、光を繋げて、
更にユミルの身体に取り込んだ。


「精霊の中で光と闇が頂点……
 その理由を教えてあげるわ!」


急激に魔力を上昇させて、
その力は魔法へ変換される……


「精霊喰らいの扉!」


そう声を発した瞬間に、
ユミルの前に奇妙な扉が現れる。
その扉を精霊が通過すると魂も残さずに、
吸収されてしまう。


「全ての精霊は私の糧になる!」


勝ち誇った笑みで、ユミルは宣言した。
そしてシルフィは、吸い込まれるように扉に向かってしまう。


「シルフィ!!!」 


そしてその瞬間、我が子を守るために、
風の精霊王が姿を現した。
精霊喰らいの扉を破壊しようと、
特大サイズの風の刃を放つ。


「な、何だと!」


エアリーの攻撃により、
闇の精霊の魔法を打ち消した。
更にここからシルフィと共に攻撃を仕掛けて、形勢は傾くと思われた。


「あははは!
 この時を待っていた!
 レガードで見つけた時から、
 貴方達2人とも狙っていたのよ!」


この瞬間、ユミルは全ての魔力を注ぎ込み、
エアリーとシルフィの周りに複数の精霊喰らいの扉を展開した。


「これで逃げられない!
 貴方達は私のものよ!」


シルフィを助けるために姿を表して、
その力で危機を乗り越えたと思われた。
しかし即座にエアリーとシルフィの周りに、
複数の精霊喰らいの扉が発動されてしまう。
そしてユミルは、邪悪な笑みを浮かべて、
二人の力を得ようと言葉を放つ。

しかし、エアリーの瞳は、
愛する娘を救うことを諦めてはいなかった……
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