わたしはいない

白川 朔

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ここにいない

6.

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 君は夏空の下でせっせと食器を運んでくれている。今だけは、自由なめぐりちゃんでいて欲しい。部屋の中で時間を持て余している君も好きだけど、日差しの中に出た君は可愛いかった。スカートをひらひらさせて、行ったり来たり。年相応というより、実際の年齢より幼く見える。
 森の中で食事をしている君はお茶会に呼ばれたアリスみたいだ。
「その服は可愛いけど、暑いよね。」
近くで見てみると少し汗ばんでいるだろうか、僕が選んでおいて申し訳ないが、君が着ている服では、この時間はまだ暑い。
「少しだけ」
「もう少し日が落ちたら涼しくなるから。」
夏とはいえ、山の中なので夜は肌寒いくらいに冷えてくる。早く外に連れ出したくて、まだ暑い時間に食事をすることになってしまった。
「そんなに長く、外にいていいの。」
めぐりちゃんは外にいたいのだろうか。
「いてもいいけど、今日は食べたら中に戻ろう。」
君はそうですね。と、頷いた。
ここは夜になると星が空いっぱいに広がる。君の住む街からはみることのできない、満天の星空を君に見せたいと思った。けれど、君は丸一週間、地下で過ごしていたのだ。いくら、もうすぐ夕方になるとはいえ、長時間の屋外は体に障るだろう。温度と湿度を一定に保った空間に長くいたのだから、徐々に慣らしていったほうがいい。それはまた今度にしよう。
 朝解いた君の髪が風に揺れた。鎖骨にかかるくらいの髪は湿気を持った風が吹くたびに持っていかれる。
「髪の毛、邪魔じゃないかな。」
「暑苦しいですか。」
めぐりちゃんの髪は黒くて綺麗だから、特に梳いたりもしていないようだった。
「暑いかなと思って。」
「もうすぐ食べ終わるので、我慢できます。」
君は頼ろうとしない。人の好意に鈍感なのかもしれない。まあ、誘拐された少女というならば、わがままに振る舞うことなんてしないだろうから、こんなものなのかもしれない。でも、君は怯えている様子がないし、怯えからくる遠慮ではなさそうだ。怖がっているわけではないのに、はっきりと断ってしまうので、何かしてあげたくてもなかなかできない。君は、人に頼るのが下手なんだろうな。
「何ですか。」
君の髪に手を伸ばしていた。朝も思ったが、かなり強付いている。いくら外に出ていないとしても一週間は長すぎたかもしれない。
「暑いよね。」
「はい。」
「汗かいてるね。」
「少しかいてしまいました。」
「まだ疲れてない。」
「はい。」
僕の目を見て答えてくれる。
「お風呂入ろっか。せっかく今日は時間があるから、入ればいい。」
「お風呂ですか。」
嫌だっただろうか。君の表情が陰った気がした。
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