わたしはいない

白川 朔

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どこかにいる

2*

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 久々に飲みに誘われたから来てみれば散々待たせた挙句若いのを連れてやってきた。
「お疲れさん。久しぶりだな。」
「お前が忙しくしてるからだよ。で、その若いのは、」
わざわざ呼び出されて、店に入れば個室に通された。嫌な予感しかしない状況である。若いのは、申し遅れましたと言って名刺を差し出してきた。菅野春樹と名乗る男は、礼儀正しい好青年という印象だ。25、6の大学出たてのガキが白井の秘書をやってるってことは、こいつの身内なんだろう。
「こちらこそ、刑事をしています山口と申します。」
「こいつは、まあ運転手だ。」
秘書に対して運転手とはいささか失礼な気がしてしまうが、白井のために椅子を引いたり食事を注文したり手際がとてもいい。
飲み物と食べ物が揃った時点で
「では、私は席を外します。」
一礼して部屋を出て行った。
「で、話ってのは。」
白井が難しい顔をしているからいい話では無いと思う。
「娘が居なくなった。」
「は、」
突拍子も無いことを言い出した。
「夏休みに入ってから、1度も帰ってきていないらしい。ついでに携帯も繋がらない。内密に捜査してくれないか。」
「夏休みに入ってからってもう半月以上たってるじゃないか。」
よくもまあそんなに娘をほったらかしのできるもんだ。
「で、内密にってことは捜索願を出さずに捜査しろってか。」
「ああ、」
こいつは重い内容を酒を飲みながら話す。娘がいなくなったのに、落ち着いた様子なのが異常だ。
「内密にってことは大きく動いたりは出来ないぞ。」
「わかってる、そもそも中学生の娘が行ける範囲なんて限られている。」
「事件性があるってわかってるか。」
「身代金の要求も無いんだ、娘が勝手に家出してるだけだ。これが家出した日に置いてあった手紙だ。」
友人宅に泊まってくるという内容が書かれている。しかし、泊まりに行く途中で事件に巻き込まれているかもしれない。
「どこにいるか調べてくれるか。」
「探偵でも雇った方がいいんじゃないか。俺よりも動いてくれそうだ。」
警察じゃ捜索願の出ていない女の子の捜索なんて、自由に動けない。
「探偵は口の硬さに不安がある。だからお前に頼みたいんだ。」
「せめて捜索願くらい出しとけ、でなきゃ動けない。」
白井は渋っている。
「出す気になったら連絡してくれ。」
俺は自分が飲み食いした分だけの金を置いて立ち上がった。白井は自分の体裁と娘を同じ天秤にかけようとしている。
「ああ」
その声を背中で受けて個室のドアを開ける。ドアの外には菅野が立っていた。
「失礼するよ。」
「本日の件はどうか内密に。」
そう言って丁寧にお辞儀をされた。
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