わたしはいない

白川 朔

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あなたといっしょに

20.

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「ハルキさんは誰なんですか。」
気づいているのかな。だけど、思い出しているのならそんなことは聞かないだろう。君には知らないまま、僕が捕まっても気にせずに居てほしい。めぐりちゃんは優しいからきっと君は僕のことを知れば、悲しい結果を招く。
「僕は、君のお父さんの秘書だよ。」
「そうじゃないです。」
「そうだよ。」
めぐりちゃんには悪いけど、今は知らなくてもいい。眉をひそめて怒っている風だった。めぐりちゃんが声のトーンが低くなる。
「初めて会ったのはいつですか。」
何か思い出してくれたのかな。
「いつだろうね。」
もう何年も前のことだから覚えていなくても無理はない。めぐりちゃんはおば様のお葬式以来おば様の話はしていないと白井さんが言っていた。
「夢を見たんです。ハルキさんと初めてあった日の、昔、山で一緒に星を見たことがありますよね。」
外で虫が鳴いていることに気づいた。思い出しているのなら話してもいいのかな。知ってもらいたい気持ちと知らないまま居てほしい気持ちがごちゃまぜになって座り心地が悪くなった。空っぽになったお皿を持ってキッチンに入っていく。
「さあ、片付けて。」
話を無理に帰る。めぐりちゃんはあの時の記憶が曖昧らしい。なら、いつかはっきり思い出した時に思い出した時に全てを話そう。めぐりちゃんには悪いけど、このままこの話は終わらせたい。
 めぐりちゃんも立ち上がり食器を持ってきてくれる。いつか思い出してくれるだろうか。君がいてくれるこの場所は居心地がいいから、おば様の思い出話をいっしょにしたいと思ってしまう。
「ハルキさんのこと知りたいんです。」
「じゃあ、めぐりちゃが思い出したら教えてあげるよ。」
僕は自分に甘い。いつか話すなんて、辛い結果を招くための伏線にしかならない。
「はい。」
家には食器を洗う音だけが物寂しく響いた。本当に思い出した時、君はどう思うんだろう。僕のことを嫌いになるだろうか。もっとほかのやり方があったと呆れてしまうだろか。やっと、僕の目を見て知りたいって言ってくれたのに、突き放したのは僕の方だ。君のやりたいと思ったことは全部叶えてあげたいと思っていたのに。
「めぐりちゃん」
水道を止める。時間が止まったように長い時間が流れる。
「何ですか。」
深く息を吸い込む。
「ちゃんと話すよ。逃げも隠れもしない。だから、初めて会った時のことをちゃんと思い出したらもう一度目を見て知りたいって言って。」
言葉を間違えないように、君を傷つけてしまわないように、めぐりちゃんを大切にしたい。
「分かりました。絶対思い出しますから、話す内容まとめておいてください。」
そう言うと、また食器を洗い出した。かちゃかちゃと、食器同士がぶつかる音が響き始めた。理由はよくわからないけど、もう物寂しくなかった。家族の音の感じたんだ。
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