わたしはいない

白川 朔

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このままずっと

7*

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「お疲れ様でした、白井さん。」
今日は中秋の名月などと呼べれる日だったか。まだ、夜になってもなかなか涼しくはならないもので外を少し歩けば汗をかいてしまう。やはり温暖化のせいなのだろうか。
「今日の会議がうまくいかなかったんですか。」
こいつは、いつもこんな感じだっただろうか。めぐりのことになるともっとこう焦たり、感情的になるものだと思っていた。だが夏休みをがあけて、それでもまだめぐりが帰ってこなくても焦っている様子は見せない。こちらの様子を伺っているこいつは、もしかするとめぐりの居場所を知っているんじゃないのか。
「白井さん、どうかしましたか。」
「どうもしてないさ。」
「そ、そうですか。」
いや、そんなことはないだろう。こいつはずっとめぐりを心配しているようだしいなくなって以来私に対してあたりが強いことが増えている。その上、警察に届け出た方がいいと言っていたのはこいつだった。根拠のないことを考ている時間はない。なんとしてでも早く見つけなくてはならない。
「お前がもっと早く探していればこんなことにはならなかった。」
そうだ、いなくなった日に仕事さえ入れていなければよかったのだ。あの日、家政婦にもっとめぐりのことを見るように言っておけば、いなくなることも防げていたんだ。
「家出できないように事前にできることはなかったのか。」
私は、あまりめぐりと話す時間がなかったが、いつも家に来ていた家政婦なら事情を感じ取ることもできなのではないか。
「落ち着いてください。」
ハルキの宥める声は私の脳が処理する前に通りすぎてしまっている。
「めぐりが帰ってこなければ私は、」
「こなければどうするんですか。」
そうだ、めぐりが帰ってこなければどうするんだ。落ち着け、別にハルキが悪いわけではないんだ。そもそも家出をしようとしたのが悪いのではないか。後先考えずに行動してしまったから、こうなってしまったんだ。
「どうも出来ないな。少なくとも私の選挙選には不利に働くだろうな。」
「そうですか。」
不服そうな物言いにハルキの背中を睨みつける。
「何が言いたい。」
私は悪いことなんかしていないのに、ハルキはこちらに目を向けることがない。仕事中たまにこちらを冷たい目で見ていることもしばしばある。私はハルキの苛立ちに影響されてこんな気持ちになっているのだ。私らしくもない、こんなことでハルキにまであたってしまっている。すると、車が急停車した。
「家につきましたよ。」
いつもより乱暴な運転であった。ハルキは私が悪いと考えているのだろうか。ハルキの言いたいことはわからないまま、綺麗な月に背を向けて誰も待っていない家に帰った。
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