わたしはいない

白川 朔

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このままずっと

31.

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 目を開けると、明かりをつけたまま眠ってしまっていたようだった。ハルキはもう帰って来ているだろうか。どれくらいの時間寝ていたのかわからないまま体を起こす。耳を澄ましてみても何の音もしていなかった。ハルキはまだ帰ってないのかな。水を飲もうと部屋を後にしてキッチンへ行く。ガラスのコップを取り出し、半分くらいまで水を入れる。部屋にかかるカーテンの隙間からは眩しい光が漏れているからもう夜は開けてしまったことはわかる。コップを持ったままなんとなくリビングへ行くと、規則的な呼吸音が聞こえてきた。
「ハルキ帰ってきたの。」
訊ねてみても返事が帰ってこない。たださっきと同じように規則的な音が響いているだけだった。音はソファーの方から聞こえてくる。コップを机の上に置いて、そっと足音を立てないようにソファーの背もたれの方から近づいていく。眠っているようだった。正面に回り込むとそこに座っていたのはハルキだった。ソファーに腰掛けた体勢のまま眠ってしまっていた。
「ハルキ起きて。」
肩を叩いてみる。昨日はいつ帰ってきたのか分からないがここで寝続けていたら風邪をひいてしまう。
「ハールーキー、朝だよ。」
今度は思い切り大きな声で耳に近い場所から言った。ハルキもこの声には驚いたようで目を瞬かせた。
「どうしたの。」
「こっちのセリフだよ。こんなところで寝て風邪引いたらどうするの。」
ハルキは小さな声で謝った。疲れていることは火を見るより明らかで、もう少し寝ていた方が良さそうだ。
「昨日、なにがあったんですか。」
「昨日はちょっとね飲み過ぎちゃって。」
「飲酒運転したんですか。」
驚いて聞き返すと、頭に手を当てたから二日酔いなんだと思う。
「違うよここにきてから、飲んだんだよ。」
机の上には空いているワインのボトルが一本置いてあった。ハルキはお酒なんて飲まない印象だったので少し驚いた。
「お父様が何か言ったの。」
「違うんだ。」
「違うってなにが。」
「昨日白井さんはこなかったんだよ。」
てっきり暗い顔をしているのは、お父様のせいだと思ったが、違うようだ。
「こなかった。」
仕事帰りの時とは比べもののにならないほどソファに座っているハルキになにがあったのかがわからないからどうしていいか分からない。
「お風呂入ってきなよ。」
服が昨日と変わっていないところを見ると、帰ってそのままめてしまったんだろう。
「うん、そうする。」
力が出ない声になにかできないかといてもたってもいられなくなる。ハルキの背中を押して脱衣所へ押し込む。あとで聞こう、ここにいて何かできることがあるとすれば、話を聞くことくらいなのだから。
「ハルキ、お帰り。」
言い損ねていた声が体の中にこだました。扉越しに聞こえていたかは分からないけど、お帰りと誰かに言えることが嬉しかった。ハルキがお風呂に入っている間に朝ごはんを作ってあげよう。シャワーが壁に当たる音が響いて、キッチンへ戻った。
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