わたしはいない

白川 朔

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あなたがいれば

12*

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 今日は仕事が早く終わったから、暇そうな坂上を連れて菅野をつけた。どこかに立ち寄るということもなく、まっすぐ家に帰ったようだった。車を少し離れたところに停めさせて、前と同じように坂上を車の中に待たせて張りこむことにした。この山には菅野以外住んでる人がいるかもわからないので、離れたところに駐めて、歩いた方が見つからないという判断だった。もちろんカーテンはしまっており中の様子は電気が付いてるかどうかの他は、一切見えない。菅野が家の中にいるかもわからない。特に何も起こらないので帰ろうかと思った時、窓に近づく影があった。慌てて木の陰に隠れて様子を伺っていたが目が会ってしまった。彼は俺のことを予想していたかのように、表情はほぼ変わらずにいた。見つかってしまった以上隠れていても意味はないな。
「どうも、菅野さん。後をつけさせていただきました。」
それだけ言うと、俺が何のためにここにきたのかを理解したようで、家の中に招き入れた。
 山の中の家なので木を使って作られており、家の中に居ても自然の中にいる気分になる。家の中には物があまりない。自炊しているとは思えない調理器具の量だ。一見しただけでは家の中になんらかの証拠があるとは考えにくい。しかし、ここ以外に彼が1人の少女を誘拐し監禁するような場所はない。
「お茶でも入れますよ。座っていてください。」
「なかなか、広い良い家だな。」
指定された場所に腰を下ろして、柔らかいクッションの上に腰掛ける。見えるところは綺麗で片付いているが、あまり隅には埃がたまっていた。男の一人暮らしなんてもんなもんだろう。
「何か気になることでもありますか。」
家の中を見回していたので、不快に思ったのだろう。そうじゃないと言いかけたが、言葉に詰まる。
「僕が犯人である証拠を掴みにきたんでしょう。」
先手を取りこちらの目的を予測する。
「たしかに疑ってってはいますけど、犯人扱いしたいわけじゃないんです。」
「もし、気になることがあれば調べてもいいですよ。」
自信があるようだ。お茶を俺の前において家の中を見るように挑発してくる。この様子では、家の中に証拠なんてものは残っていないのだろう。それでも菅野がこちらの捜査に協力をしてくれるなら断る必要もない。
「では、部屋を見て回ってもいいですか。」
「どうぞ。」
菅野に案内されながら、一部屋ずつ見ていく。寝室や今は使われていない客間では、クローゼットの中まで。そのほか収納スペースもしっかり探したが、証拠さえも見つからなかった。
「どうですか。」
「特に何もないな。」
家中見て回ったがそれらしいものはない。
「もう少し見て回ってもいいですか。」
まだ見ていないところがあるはずだ。もう一度家の中を見て回る。先程入った収納場所の奥や本棚の後ろなどに隠し通路が無いかと少ない可能性も潰していく。キッチンの床下収納には米や調味料の予備なんかが大量に詰まっていた。どこにも何も無い。
「ありがとうございました。」
「何か見つかりましたか。」
「いや何も。」
こいつが、一番誘拐犯の可能性がある。この挑発的な態度がなによりの証拠である。
「もう帰ります。」
これ以上ここに長居する必要もない。俺は仕方なく、帰ることにした。
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