わたしはいない

白川 朔

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あのひのように

43.

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 ハルキは近頃、仕事からの帰りが遅くなった。どうしてか聞いた時は、なかなか理解が追いつかなかったけれど、お父様が選挙の出馬を見送ったから、その引き継ぎに時間がかかっているらしい。遅いといっても、食事は必ずいっしょに食べる。ハルキは食事の時間を共有することにこだわっているのか、外で食事の約束がある時以外は先に食べていいよとは言わない。まあ、誰かと一緒に食べる食事が美味しいのはここに来てから十分に感じているから、そもそも先に食べるつもりはない。
 「そうだ、12月に流星群が見られるみたいなんだ。」
ハルキは嬉しそうに、今日の夕食であるシチューをスプーンですくいながら言った。流星群は見たことがない。冬の空に星がたくさん流れて消える。この前見つけた望遠鏡を使ってハルキと流星群を見ることができたなら、きっと楽しい。
「見たい。流星群はいつなの。」
「来月の13日の日没から日付が変わって14日の夜明けまで見えるみたい。」
ここから見る冬の星はきっと、とても綺麗だろう。空気が澄んでいて、前に見た星空もとても綺麗だった。しっかり調べてくれているらしくて流星群の説明をしてくれる。
「仕事は大丈夫なの。」
流星群を見るなら一晩中見て居たいと思うけれど、夜中になると次の仕事にひびかないだろうか。
「心配しなくていいよ。14日頑張れば、次の日は休みだしね。せっかくの双子座流星群なんだから。」
「双子座流星群。」
ひどく懐かしい気がした。双子座は冬の星座なんだ。
「そう、めぐりちゃんの誕生星座だったよね。」
覚えていたんだ。あの時、まだ子どもだった時二人で見た冬の星空の下でそんな話をしたことを思い出した。
「よく覚えてたね。」
まあね。と、言ったハルキは少し得意げだ。子供の頃見た、ハルキの顔が重なって子供っぽく見えた。
「ねぇ、誕生日はいつ。」
聞いたことがなかったはずだ。まぁ、聞く機会もなかった。
「4月6日だけど。」
今は無理だけど、いつか祝ってあげられたらいいな。
「どうしたの、何か面白いことあった。」
「なんでもない。誕生日もそうだけど、ハルキはたくさん知ってるのに、ハルキのことあんまり知らないなと思って。」
「それの何が面白いの。」
机の上で手を組んだハルキはこちらに乗り出している。
「いや、ここに来た時はハルキのことを何も知らなかったけれど今は少しずつ昔のこととか思い出したり、こうやって直接聞いてみたりで知ってることも増えてるの。それ以上に、私自身がハルキのことを知りたいと思っている。なんか、それが面白いかな。」
話し終わると、ハルキも黙り込んだ。何かおかしなことを言ったかな。自分の発言を振り返るとなかなか臭いことを言っているような、気がしないでもない。だけど、ハルキも普段からもっと恥ずかしいこと平気で言っているから、ここにきてからそういう感覚がずれてしまっている。
「そっか。確かに僕もめぐりちゃんのことがわかってきた気がするよ。」
「今の間何。」
かなり、時間が空いてからに返事で沈黙だった時間が気になってしまう。
「そうだね、やっとめぐりちゃんがやっとって思うと驚いて。」
何がやっとかと聞いても、答えてはくれないけれどハルキが楽しそうだからまあいっか。

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