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第四章 もう一度、流行りますか?
第四話 優しい世界は流行りますか?
しおりを挟むこ、今度は止めなければ!
私の侍女の失態だ。私の謝罪で父上様が許してくれるかわからない。だけど、目の前で誰かが処刑されるのは二度と見たくない! どう対処すれば正解なのか分からないが、行動あるのみだ!
「父上様……!」
「あら、まあ! 誰も怪我をしなかったかしら?」
私の決死の覚悟の一言は、母上様の言葉に遮られた。箱を落とした侍女は、土下座して謝っていた。母上様は、侍女をそっと立ち上がらせてささやいた。
「貴女が、先の皇帝陛下と奴隷侍女の間に生まれた娘ですね。母親の身分が低く後ろ盾を持たないとはいえ、皇室の身内に数えることが出来なくて申し訳なく思っています。せめて、我が娘付きの侍女として保護いたします。どうか、姪である娘に良く仕えてあげて下さい」
「…………はい!」
父上様の異母妹の侍女が、母上様に涙目で答えていた。
えっ! 母上様が優しい!
「窓を開けよ。香水とはいえ、匂いがキツすぎる……!」
父上様が、侍女を責めない……。
父上様の侍従が、パタパタと窓を開けていく。私は、呆然とそれを見ていた。
えっと、確か前々世では魔術で侍女の奴隷紋に触れて、魔法で処刑されたよね。
『第二皇女カナン五歳』の記憶が、魔法? 何それ? と、言っている。
あ、何だ。魔法の無い世界なの? だから、魔術で奴隷を縛ったり出来ないの?
私の決死の行動は、起こす前に空振りに終わった。前々世では、二人は薄っすらと微笑みさえ浮かべながら処刑を眺めていたのだ……。今世の両親が鬼畜じゃなくて本当に良かった。
私の誕生日祝いの挨拶は、この後も続けられた。そして、まだ子供の姿の懐かしい兄上様達と再会した。
第一皇子のフィオル兄上様は、前々世と今世もカナンと交流があるので、心から嬉しく思った。
第二皇子のタナトル兄上様とは、ほぼ初対面だったが、前々世では同母の兄妹だったこともあり。比較的よく遊んでもらった記憶がある。再会は、純粋に嬉しかった。私の笑顔を見るタナトル兄上様の表情が、困惑気味だったが、まあいいや。
第一皇女のイリス姉上様は、普通の姉の態度だった。父上様と良く似た容姿で、普通の美少女だ。いえ、私が普通じゃないくらいの美少女だからね。
ただ、一緒に挨拶に来たケバケバしい化粧と服装の側妃様の視線が怖かった。
それにしても、前々世でトラウマだった奴隷の処刑を、見ることなく五歳の誕生日が過ぎた。
まだ、私は前々世の悲惨な記憶を覚えている。結界の中で叔母だった奴隷侍女が、燃え尽きる様を、微笑みすら浮かべて見ていた人々の表情を……! 父上様と母親様が恐ろしかった。
ーーーーその後の事は、あまり思い出したくない。
『奴隷解放』を目標に、孤軍奮闘した前々世の生涯は、唐突に終わりを告げた。うん。虚しくなるから思い出すのはよそう。
ルビスに後で、さりげなく奴隷について聞いてみた。
昔から、奴隷は焼印を押して区別して使っていたらしい。しかし、徐々に奴隷制度は無くなりつつあるそうだ。
隣国の奴隷解放がきっかけとなり、世界中で奴隷解放運動が行われている。他国は平民が増えて、開拓地に元奴隷の村を作らせた結果、税収が増えて国力を強めていた。
しかし、元からかなりの奴隷を農業に従事させていた帝国は、逆に衰退していっているようだ。
私はまだ知らない。前々世よりも優しくなった両親や帝国の社会が、全く違った未来を呼び込もうとしている事を…………。
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