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第25話 意志は決して折れず
「兜さん!」
轟音と共に崩れ去る外階段を見て、黎一は咄嗟に兜の名を叫んだ。
ゾンビ化した蛭巻を胴丸が葬った瞬間、突如として外階段が軋むような音が響き、気が付いた時には二階の扉から大量のゾンビが外階段へと溢れ出していた。古びた外階段が限界を迎えるまではものの数秒だった。
「これでは兜さん達は」
「……エントランスから脱出は絶望的だし、もう脱出する手段が無い」
「そんな……」
紫藤の生還は絶望的、その事実に黎一は眉をしかめ、玲於奈は沈痛な面持ちで目を伏せた。
「兜が心配なのは分かるが、自分達の心配をした方がいいかもしれない」
胴丸が刀に手をかけ、いつでも抜刀できるように構える。外階段の崩壊を皮切りに、地上にも屋内からゾンビが溢れ出してきた。最初の数体はテグスのトラップに足を取られていたが、その個体を足場に後続が前に進んでくるので、トラップは大した時間稼ぎにはならなかった。
「来るぞ! 二人とも」
黎一たちの元へと八体のゾンビが突進してきた。新鮮なゾンビで、その速度は生者にも劣らない。
「くそっ! 考える余裕すら与えてくれないのかよ」
怒りをぶつけるかのように、黎一はネイルハンマーでゾンビの頭部を粉砕。そのまま頭部の潰れた死骸を蹴り飛ばし、後続のゾンビにぶつけてバランスを崩させる。その隙をついて止めに鉈で首を刎ねた。
「すでに私の間合いだ」
瞬間、胴丸が三体のゾンビに対して抜刀。二体の首を飛ばし、一体は背骨ごと胴体部分で両断した。
「まだ動けるのか」
胴体を真っ二つにされたゾンビは、上半身だけになってもまだ活動を続けており、両腕で這いながらも、胴丸に襲いかかろうとした。
「醜いな」
革靴でゾンビを顔面を蹴り飛ばし、首の折れたゾンビは今度こそ活動を停止した。胴丸の動きには一切無駄が無く、それでいて一撃一撃が強力。インテリな見た目とは裏腹にかなりの武闘派だ。これまでの借りを返すと言わんばかりにこの場は胴丸が無双し、残りのゾンビも呆気なく首を刎ねられていく。
「黎一さん。兜さんのことは」
「俺達にはどうしようもない。一刻も早くこの場を離れるべきだ」
「そうですね……」
玲於奈は情に流されて反論するような真似はしない。黎一の意見はもっともだし、何よりも黎一自身が、この場にいる誰よりも悔しそうな顔をしていた。そんな彼の前では何も言葉が出てこなかった。
「兜さん。俺はあなたの強さを信じます」
黎一は一度建物の上方を見上げた。自分達には兜を救うことは出来ない。無責任な期待だとは分かっているが、歴戦の猛者である兜が奇跡的に生還してくれることを祈るばかりだった。
「綿上くん。そろそろこの場を離れよう」
胴丸の言葉に、黎一は無言で頷いた。
※※※
「戦場の方が百倍マシだな」
雪崩れ込むかのように三階へ溢れ出したゾンビに対処しきれず。兜は屋上へと退避していた。出口からどんどんと遠ざかっているが、それでも構わない。正面から脱出は困難。飛び降りて脱出するには高すぎて、足を負傷しゾンビの追撃に遭うのが関の山。脱出という選択肢を、兜はすでに捨てている。
「良かった。あいつらは脱出できたみたいだな」
兜の視界に、建物の南側へと駆けてく黎一たちの姿が映り込む。黎一たちの無事を確認したことで心残りは無くなった。だからといって自害という逃げに走ろうとは思わない。今の自分に出来ること。それは一体でも多くのゾンビの数を減らし、少しでも黎一たちの助けになることだと兜は考えた。無尽蔵にゾンビが湧き出るはずがない。ここが島という密室である以上、ゾンビの数は有限だ。終わりがあるなら、倒す度に確実に数は減っていく。これは決して無駄な足搔きではない。
「綿上。玲於奈ちゃんのこと、しっかり守ってやれよ」
右手にマチェーテを握りしめ、兜は屋上の扉を突き破ったゾンビの群れへと、果敢に立ち向かった。
轟音と共に崩れ去る外階段を見て、黎一は咄嗟に兜の名を叫んだ。
ゾンビ化した蛭巻を胴丸が葬った瞬間、突如として外階段が軋むような音が響き、気が付いた時には二階の扉から大量のゾンビが外階段へと溢れ出していた。古びた外階段が限界を迎えるまではものの数秒だった。
「これでは兜さん達は」
「……エントランスから脱出は絶望的だし、もう脱出する手段が無い」
「そんな……」
紫藤の生還は絶望的、その事実に黎一は眉をしかめ、玲於奈は沈痛な面持ちで目を伏せた。
「兜が心配なのは分かるが、自分達の心配をした方がいいかもしれない」
胴丸が刀に手をかけ、いつでも抜刀できるように構える。外階段の崩壊を皮切りに、地上にも屋内からゾンビが溢れ出してきた。最初の数体はテグスのトラップに足を取られていたが、その個体を足場に後続が前に進んでくるので、トラップは大した時間稼ぎにはならなかった。
「来るぞ! 二人とも」
黎一たちの元へと八体のゾンビが突進してきた。新鮮なゾンビで、その速度は生者にも劣らない。
「くそっ! 考える余裕すら与えてくれないのかよ」
怒りをぶつけるかのように、黎一はネイルハンマーでゾンビの頭部を粉砕。そのまま頭部の潰れた死骸を蹴り飛ばし、後続のゾンビにぶつけてバランスを崩させる。その隙をついて止めに鉈で首を刎ねた。
「すでに私の間合いだ」
瞬間、胴丸が三体のゾンビに対して抜刀。二体の首を飛ばし、一体は背骨ごと胴体部分で両断した。
「まだ動けるのか」
胴体を真っ二つにされたゾンビは、上半身だけになってもまだ活動を続けており、両腕で這いながらも、胴丸に襲いかかろうとした。
「醜いな」
革靴でゾンビを顔面を蹴り飛ばし、首の折れたゾンビは今度こそ活動を停止した。胴丸の動きには一切無駄が無く、それでいて一撃一撃が強力。インテリな見た目とは裏腹にかなりの武闘派だ。これまでの借りを返すと言わんばかりにこの場は胴丸が無双し、残りのゾンビも呆気なく首を刎ねられていく。
「黎一さん。兜さんのことは」
「俺達にはどうしようもない。一刻も早くこの場を離れるべきだ」
「そうですね……」
玲於奈は情に流されて反論するような真似はしない。黎一の意見はもっともだし、何よりも黎一自身が、この場にいる誰よりも悔しそうな顔をしていた。そんな彼の前では何も言葉が出てこなかった。
「兜さん。俺はあなたの強さを信じます」
黎一は一度建物の上方を見上げた。自分達には兜を救うことは出来ない。無責任な期待だとは分かっているが、歴戦の猛者である兜が奇跡的に生還してくれることを祈るばかりだった。
「綿上くん。そろそろこの場を離れよう」
胴丸の言葉に、黎一は無言で頷いた。
※※※
「戦場の方が百倍マシだな」
雪崩れ込むかのように三階へ溢れ出したゾンビに対処しきれず。兜は屋上へと退避していた。出口からどんどんと遠ざかっているが、それでも構わない。正面から脱出は困難。飛び降りて脱出するには高すぎて、足を負傷しゾンビの追撃に遭うのが関の山。脱出という選択肢を、兜はすでに捨てている。
「良かった。あいつらは脱出できたみたいだな」
兜の視界に、建物の南側へと駆けてく黎一たちの姿が映り込む。黎一たちの無事を確認したことで心残りは無くなった。だからといって自害という逃げに走ろうとは思わない。今の自分に出来ること。それは一体でも多くのゾンビの数を減らし、少しでも黎一たちの助けになることだと兜は考えた。無尽蔵にゾンビが湧き出るはずがない。ここが島という密室である以上、ゾンビの数は有限だ。終わりがあるなら、倒す度に確実に数は減っていく。これは決して無駄な足搔きではない。
「綿上。玲於奈ちゃんのこと、しっかり守ってやれよ」
右手にマチェーテを握りしめ、兜は屋上の扉を突き破ったゾンビの群れへと、果敢に立ち向かった。
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