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第27話 残り六時間、生存者五名
「残り六時間時点で生存者が五名か。想定以上の人数だ。素晴らしい!」
これまでの実験の経過を見て、面繋は満足気に腕組みをしていた。
当初の予想では夜を越せずに参加者は全滅すると見越していたが、実際には五名の参加者が生き延びた。中でも綿上黎一と獅噛玲於奈の二名は、ダークホースとして有益なデータを提供し続けてくれている。実験である以上、想定外の出来事は大いに結構。今後の参考とするためにも、参加者達には一層の活躍を期待したい。
「船の準備をしてもよろしいのですね?」
「もちろんだ。果たして何人が乗船を果たすか。今から楽しみだね」
「失礼ながら意外でした。口約束だけで、船を出すつもりなど最初から無いのではと思っていましたよ」
過去二回の実験は参加者の質の違いから、早々に全滅という形で実験が終了している。一度も脱出船の利用機会が無かったため、そもそも船の用意など無いのではと総角は思っていたのだが、参加者たちが夜を越えたことを確認した時点で、面繋は別部署に連絡を取り、脱出用の船をしっかりと用意した。いつでも着岸出来るように船は現在、島の近くの海上で待機している。
「出番が無かっただけで、過去二回の実験でも船の手配はしてあったよ。我々は殺戮者ではないからね。参加者の活躍には酬いてやらねばならない」
そう、これは殺戮ではなく実験なのだ。実験が終われば彼らはまた日常へと戻される。それはこの試みが始まった時からの決まりだ。面繋はかなりの変わり者ではあるが、提示した条件に対してはあくまでもフェアを貫いている。
「しかし、生存者を無事に帰してもよろしいのですか? この実験のことが外部に漏れるようなことがあれば」
「ゾンビの存在など誰も信じぬよ。それに、このゲームの参加者の中に馬鹿正直に警察に掛け込める身分の者など存在しない」
このゲームのために集められた参加者たちは、指名手配犯や裏家業に手を染めた者など、表の社会からはみ出した者が大半だ。現役の警察官である箙光誠や探偵の四方手嘉音が亡き今、公的機関に告発することが出来る人間など存在しないのだ。脱落すれば死人に口無し。生還しても真実を外部に伝えることは難しい。どう転んでも参加者の口からこの実験に関する情報が漏れることは無い。
――それに、どうせ生き延びて日常に戻ったところで。
面繋が不敵に笑ったが、総角や鳩尾、この場にいる誰もが彼の真意に気づいていない。単純に実験の経過に満足しているのだろうという程度の認識だ。
「それよりも、あの二人はどうなっている?」
面繋が総角に促すと、黎一たち三人とは別の生存者がモニターへと映し出される。
森の中で息を潜め、数体のゾンビをやり過ごしている若いショートヘアの女性と、その隣には坊主頭の男性。ゲーム開始から十八時間を迎え、その表情には流石に疲れの色が浮かんでいるが、両者とも強い意志を感じさせる瞳には一切の曇りが無く、精神的な強さをうかがわせる。
女性は黒いタンクトップにカーキのカーゴパンツというアクティブな服装。スレンダーながらも全体的に筋肉質で、立ち回りにも隙が無い。
男性は白いティーシャツに青いツナギを合わせており、上を脱いで腰の部分で結んでいる。傭兵の兜や稲城には劣るが、背が高く体つきもガッシリとしている。
早期に出会ってコンビを組み、そこからは補給も受けずにここまで生き延びてきた猛者中の猛者二人である。
一文字季里。二十九歳。
職業不詳。国立大学を卒業後海外へと渡り一時期消息不明となっていたが、数年間情勢不安を抱える国々を渡り歩き、時には戦闘に参加する機会があったとの不確定情報あり。身体能力、洞察力共に大変優秀。
鍬形了嗣。三十四歳。
二十代の頃は、非合法に行われていた地下闘技場の選手として活躍。凶器の使用も認められる暴力の世界で生き抜いてきた猛者である。地下闘技場が摘発された際に、選手であった鍬形も逮捕。刑務所へと服役し、二週間前に出所。
「あの極限状態を単身で生き延びるとは、実に面白い」
あちらからは見えていないはずだが、一文字季里の視線がモニター越しの面繋の視線と交わった。
これまでの実験の経過を見て、面繋は満足気に腕組みをしていた。
当初の予想では夜を越せずに参加者は全滅すると見越していたが、実際には五名の参加者が生き延びた。中でも綿上黎一と獅噛玲於奈の二名は、ダークホースとして有益なデータを提供し続けてくれている。実験である以上、想定外の出来事は大いに結構。今後の参考とするためにも、参加者達には一層の活躍を期待したい。
「船の準備をしてもよろしいのですね?」
「もちろんだ。果たして何人が乗船を果たすか。今から楽しみだね」
「失礼ながら意外でした。口約束だけで、船を出すつもりなど最初から無いのではと思っていましたよ」
過去二回の実験は参加者の質の違いから、早々に全滅という形で実験が終了している。一度も脱出船の利用機会が無かったため、そもそも船の用意など無いのではと総角は思っていたのだが、参加者たちが夜を越えたことを確認した時点で、面繋は別部署に連絡を取り、脱出用の船をしっかりと用意した。いつでも着岸出来るように船は現在、島の近くの海上で待機している。
「出番が無かっただけで、過去二回の実験でも船の手配はしてあったよ。我々は殺戮者ではないからね。参加者の活躍には酬いてやらねばならない」
そう、これは殺戮ではなく実験なのだ。実験が終われば彼らはまた日常へと戻される。それはこの試みが始まった時からの決まりだ。面繋はかなりの変わり者ではあるが、提示した条件に対してはあくまでもフェアを貫いている。
「しかし、生存者を無事に帰してもよろしいのですか? この実験のことが外部に漏れるようなことがあれば」
「ゾンビの存在など誰も信じぬよ。それに、このゲームの参加者の中に馬鹿正直に警察に掛け込める身分の者など存在しない」
このゲームのために集められた参加者たちは、指名手配犯や裏家業に手を染めた者など、表の社会からはみ出した者が大半だ。現役の警察官である箙光誠や探偵の四方手嘉音が亡き今、公的機関に告発することが出来る人間など存在しないのだ。脱落すれば死人に口無し。生還しても真実を外部に伝えることは難しい。どう転んでも参加者の口からこの実験に関する情報が漏れることは無い。
――それに、どうせ生き延びて日常に戻ったところで。
面繋が不敵に笑ったが、総角や鳩尾、この場にいる誰もが彼の真意に気づいていない。単純に実験の経過に満足しているのだろうという程度の認識だ。
「それよりも、あの二人はどうなっている?」
面繋が総角に促すと、黎一たち三人とは別の生存者がモニターへと映し出される。
森の中で息を潜め、数体のゾンビをやり過ごしている若いショートヘアの女性と、その隣には坊主頭の男性。ゲーム開始から十八時間を迎え、その表情には流石に疲れの色が浮かんでいるが、両者とも強い意志を感じさせる瞳には一切の曇りが無く、精神的な強さをうかがわせる。
女性は黒いタンクトップにカーキのカーゴパンツというアクティブな服装。スレンダーながらも全体的に筋肉質で、立ち回りにも隙が無い。
男性は白いティーシャツに青いツナギを合わせており、上を脱いで腰の部分で結んでいる。傭兵の兜や稲城には劣るが、背が高く体つきもガッシリとしている。
早期に出会ってコンビを組み、そこからは補給も受けずにここまで生き延びてきた猛者中の猛者二人である。
一文字季里。二十九歳。
職業不詳。国立大学を卒業後海外へと渡り一時期消息不明となっていたが、数年間情勢不安を抱える国々を渡り歩き、時には戦闘に参加する機会があったとの不確定情報あり。身体能力、洞察力共に大変優秀。
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二十代の頃は、非合法に行われていた地下闘技場の選手として活躍。凶器の使用も認められる暴力の世界で生き抜いてきた猛者である。地下闘技場が摘発された際に、選手であった鍬形も逮捕。刑務所へと服役し、二週間前に出所。
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あちらからは見えていないはずだが、一文字季里の視線がモニター越しの面繋の視線と交わった。
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