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20話 カティアス様とのデートの前に
遅めの朝食を一緒に食べた後、カティアス様は一度支度をする為に自分の屋敷に戻り、私は外出の準備を始めた。と言っても、髪の毛を結うのも、お化粧をしてくれるのも侍女だし、洋服を選んでくれるのも侍女だから、私はただ座っていれば良いのだけれど。
出かける支度も終わり、侍女を下がらせて一息ついていた時、扉がノックもされずにガチャリと開いた。
「お嬢様、カティアス様とお出かけと聞きました。なんですぐに知らせてくださらなかったんですか?もちろん、私もお供で行くんですよね。どこに行くんですか?」
侍女のお仕着せではなく、私服を着たローズが不機嫌そうに文句を言いながら部屋に入ってきた。可愛らしい小花柄のワンピースは、ローズを清楚な女性に見せていて、ふくれっ面をしていてもとってもキュートなんだけれど、……ノックはしなければ駄目よね。
「え?ああ、ごめんなさい。知らせてなかったわよね。えっと、行くのはショコラティエ・サマンサなんだけど……」
私の付き添い侍女という仕事柄、私の外出には付いて行くものだと思ったんだろうし、異母姉妹という気安さからの態度なんだろうけれど、これは注意するべきかしら?今は他に侍女がいなかったから良かったようなものの、この態度が侍女長とかの耳に入ったら、叱られるのはローズですものね。
でも注意することで、ローズが私に虐められているって感じてしまったら?それでなくても、ローズは私の言動を大袈裟に受け取っているようだし。
昨日、ローズが倒れてしまったことを考えると、下手なことは言えないと口をつぐんだ。
そこへ、今度はちゃんと部屋の扉がノックされて、返事をするとお母様付きの侍女が部屋に入ってきた。
「お嬢様、お出かけの前に奥様がお呼びです」
「お母様が?」
「はい。カティアス様もそちらでお待ちです」
「すぐに行くわ」
立ち上がって侍女の後について行こうとすると、私の後ろからローズもついてきた。
「ローズさんは呼ばれてませんが」
振り返った侍女が、ついてくるローズに淡々と言う。
「でも、私はお嬢様の付き添い侍女ですから、外出する時は付き添わないとですよね」
あ、そこは口答えじゃなくて、「では、お部屋でお待ちしています」が正しい答えよ。格上の先輩侍女に、正しい礼儀じゃないわ。
「ローズさんは知らないのね。今日からカティアス様とお会いする時に限り、お嬢様の付き添い侍女は必要ありません」
「なぜですか?」
「あ、それは!」
ローズは昨日外泊していたから、カティアス様が私の部屋に泊まったことは知らないだろうと、つい淑女らしくなく大きな声を出してしまった。まさか、ローズがカティアス様に会う為に、私がいない隙を狙って、いつもしない朝食のサーブに来ていたなんて思いもしなかったから。
「お二人が同衾なさったからです」
侍女の一言に、私は内心頭を抱える。だって、ストーリーは私のせいでだいぶ代わってしまって、ヒロインとヒーローの恋愛は成就していないけれど、この世界のヒロインは変わらずローズなのよね。そうしたら、私はヒロインの恋愛を邪魔する悪者以外の何者でもなくなっちゃう。
悪役令嬢確定よ!
かと言って、カティアス様をヒロインに譲れるほど、今の私のカティアス様への想いは小さくない。
あの私を見る甘い瞳が、他人に向くところなんか見たくないもの。カティアス様を諦めたくないけれど、悪役令嬢になって断罪からの死亡エンドは避けたい。
これが小さな子供だったら、あれも嫌これも嫌だと地団駄を踏んでいるところだろう。もちろん、淑女の私はそんなことしませんけどね。
「同衾?それがなんだって言うの」
ローズの言い方に、侍女の表情が険しくなり、私は二人の間で微笑みを浮かべたまま固まってしまう。
ローズってば、漫画と少し性格が違うんじゃないかしら?漫画のローズは、頑張り屋で面倒見が良くて明るくて、ちょっと天然発言も多いけれど、ひたむきに生きる姿が魅力的だった。目の前にいるローズは、天然発言というよりも、場を読めない非常識発言がチラホラ見えるし、横柄な態度が垣間見える時もある。可愛いさで誤魔化されていることが度々あるような……ないような。
でも、そんなわけないわよね。
「ローズ……」
お母様の侍女にこの態度はまずいと思い、とにかく話は後でと言おうとしたのだが、侍女が大きなため息をつき、一歩ローズに近づいて立った。二人に挟まれ、さらに二人との距離が近づいた私は、どっちを見たかわからない状況になる。
「同衾とは、夫婦の営みをなさったということです」
いやいや、まだ未遂ですよ。
「言葉の意味くらいわかります。だから、それが何で私が付き添えない理由になるんだって言っているの」
あれ?それは気にならない感じ?好きな相手が他の女と……イチャイチャとナニしてるのよ?嫌じゃないのかしら?
ローズの発言に戸惑ってしまい、ローズの生意気な言い方を咎めるのを忘れていた。
「はぁ……。そんなことも知らないで、付き添い侍女だなんて大きな顔をしていたんですか」
呆れたような侍女の口調に、ローズはムッとしたように唇を尖らせた。その表情も可愛いのだけれど、イライラするのは……気のせいね。
「知ってます。貴族の子女は純潔や貞操を重んじるんですよね。付き添い侍女をつけることで、異性と二人っきりにならないってアピールになるんでしょう。だから、私がお嬢様に付きっきりでいないといけないんですよね」
「その通りです。ご婚約者であるカティアス様と同衾なさった今、カティアス様がいらっしゃる時だけは付き添い侍女が不要なのは、お嬢様にとってカティアス様だけが例外になられたからです」
「ああ、純潔じゃなくなったから」
「ローズ!」
直接的な物言いに、私は顔を赤らめてローズをたしなめる。何よりも、私はまだ純潔です!……多分。
「大きな声を出してごめんなさい。ローズは洋裁室へ行って、そちらのお仕事をしてちょうだい。あなた、お母様がお待ちなのよね。参りましょう」
「はい、お嬢様」
お忙しいお母様を待たせるわけにもいかず、私はローズときちんと話もしないまま部屋を出た。
「お嬢様、使用人と距離が近いのもよろしいですが、甘やかすのは違うんじゃないでしょうか」
お母様の執務室へ向かいながら、侍女に苦言を呈されてしまう。ごもっともですと思いながらお母様の待つ部屋につくと、部屋の中ではカティアス様とお母様が談笑していた。お母様の隣にはお父様がいて、お父様は一生懸命お母様に話しかけているが、けっこうな割合で無視されているようだ。
「お嬢様をお連れしました」
侍女に案内され、カティアス様の隣に腰を下ろした。
「シャーロット、昨日はニシャハイド公爵家の舞踏会、お疲れ様でした」
「いえ、お母様」
「ところで、そこで何か騒ぎを起こしたと聞いたのだけれど」
扇子で口元を隠しながら、お母様は私に視線を投げかけてきた。そのキツイ視線に、私は背筋を伸ばして緊張した面持ちになる。
「夫人、ロッティは何もしていません。立派に夫人の名代をつとめていましたよ。ただ、彼女の付き添い侍女が、気分を悪くして倒れただけです」
「それは、私が聞いた話とは違うわね」
昨日の今日で、誰から情報を仕入れてきたのか。お母様の情報網が恐ろしくもある。
「どなたから何をお聞きになられたんでしょう?」
「ミレー伯爵夫人から今朝、お手紙をいただいたの。あなたが、どこかの令嬢にきつく当たって、突き飛ばしたとかなんとか。本当なのかと尋ねてきたわ」
ミレー伯爵夫人、社交界でもゴシップ好きで有名な夫人だ。
「それは誤解です。私の付き添い侍女が気絶してしまいましたが、慣れないコルセットの締め過ぎが原因で、私が突き飛ばしたという事実はありません」
「そう。コルセットを締めたくらいで倒れる付き添い侍女なんか、クビにした方がいいんじゃないかしら」
「いえお母様、すぐに慣れると思いますし、それくらいでクビにするのはちょっと!それに、ローズは洋裁室の仕事もしていて、刺繍の腕前が素晴らしいんです」
お母様ならば、本当にクビにしてしまいそうで、私は慌ててローズを擁護する。
「ローズ?その子の名前はローズというの?」
「は……い。まぁ、そんなに珍しい名前ではないですよね。ねえ、お父様」
「はひ!?ありふれた名前だと思うよ!百人女の子がいたら、三十人はローズなんじゃないかな。そんなことよりノーラ、さっき話していた話をロッティに聞かせてやらないと」
僕にふるなよ!と視線で訴えられたけれど、私は素知らぬ顔でお父様から視線をそらし、紅茶を飲んで平静を装う。
「そんなに沢山いるわけないでしょう。でも、確かに珍しい名前ではないわね。さて、シャーロット。昨晩、あなた達が同衾を果たしたと報告を受けました。おめでとう」
私は思わず、口に含んだ紅茶を吹き出しそうになる。
まさか親に処女喪失(してないけれど)を喜ばれるとは思わなかったから。
「ありがとうございます」
カティアス様の返答を聞いて、吹き出す前に飲み込もうとした紅茶が気管に入ってむせこんでしまう。
だって、当事者のカティアス様だけは未遂だって知っているはずなのに、肯定するような返答をするんですもの。
カティアス様に背中を撫でられ、私は涙目になりながら、身振りで大丈夫だとアピールする。
「みっともない。まともに紅茶も飲めないようじゃ、立派な女公爵になれませんよ」
女公爵?紅茶の飲み方とは関係ないよね?……じゃなく、なぜ女公爵がでてくるの?まだまだお父様も元気なのに。
「ロッティなら大丈夫さ。カティアス君もいるしね。僕は引退したら、君と領地に戻ってまったり過ごしたいな。二人が夫婦同然の関係になったのだから、早急に爵位継承の手続きをしないとだな」
引退!?爵位継承の手続き!?
「なにをおっしゃるの。シャーロットが跡を継ぎましたら、私は離縁いたします」
ええっ!?
色んなことが理解不能で、あ然とした私は、紅茶の入ったコップを落としたことに気付かなかった。
出かける支度も終わり、侍女を下がらせて一息ついていた時、扉がノックもされずにガチャリと開いた。
「お嬢様、カティアス様とお出かけと聞きました。なんですぐに知らせてくださらなかったんですか?もちろん、私もお供で行くんですよね。どこに行くんですか?」
侍女のお仕着せではなく、私服を着たローズが不機嫌そうに文句を言いながら部屋に入ってきた。可愛らしい小花柄のワンピースは、ローズを清楚な女性に見せていて、ふくれっ面をしていてもとってもキュートなんだけれど、……ノックはしなければ駄目よね。
「え?ああ、ごめんなさい。知らせてなかったわよね。えっと、行くのはショコラティエ・サマンサなんだけど……」
私の付き添い侍女という仕事柄、私の外出には付いて行くものだと思ったんだろうし、異母姉妹という気安さからの態度なんだろうけれど、これは注意するべきかしら?今は他に侍女がいなかったから良かったようなものの、この態度が侍女長とかの耳に入ったら、叱られるのはローズですものね。
でも注意することで、ローズが私に虐められているって感じてしまったら?それでなくても、ローズは私の言動を大袈裟に受け取っているようだし。
昨日、ローズが倒れてしまったことを考えると、下手なことは言えないと口をつぐんだ。
そこへ、今度はちゃんと部屋の扉がノックされて、返事をするとお母様付きの侍女が部屋に入ってきた。
「お嬢様、お出かけの前に奥様がお呼びです」
「お母様が?」
「はい。カティアス様もそちらでお待ちです」
「すぐに行くわ」
立ち上がって侍女の後について行こうとすると、私の後ろからローズもついてきた。
「ローズさんは呼ばれてませんが」
振り返った侍女が、ついてくるローズに淡々と言う。
「でも、私はお嬢様の付き添い侍女ですから、外出する時は付き添わないとですよね」
あ、そこは口答えじゃなくて、「では、お部屋でお待ちしています」が正しい答えよ。格上の先輩侍女に、正しい礼儀じゃないわ。
「ローズさんは知らないのね。今日からカティアス様とお会いする時に限り、お嬢様の付き添い侍女は必要ありません」
「なぜですか?」
「あ、それは!」
ローズは昨日外泊していたから、カティアス様が私の部屋に泊まったことは知らないだろうと、つい淑女らしくなく大きな声を出してしまった。まさか、ローズがカティアス様に会う為に、私がいない隙を狙って、いつもしない朝食のサーブに来ていたなんて思いもしなかったから。
「お二人が同衾なさったからです」
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悪役令嬢確定よ!
かと言って、カティアス様をヒロインに譲れるほど、今の私のカティアス様への想いは小さくない。
あの私を見る甘い瞳が、他人に向くところなんか見たくないもの。カティアス様を諦めたくないけれど、悪役令嬢になって断罪からの死亡エンドは避けたい。
これが小さな子供だったら、あれも嫌これも嫌だと地団駄を踏んでいるところだろう。もちろん、淑女の私はそんなことしませんけどね。
「同衾?それがなんだって言うの」
ローズの言い方に、侍女の表情が険しくなり、私は二人の間で微笑みを浮かべたまま固まってしまう。
ローズってば、漫画と少し性格が違うんじゃないかしら?漫画のローズは、頑張り屋で面倒見が良くて明るくて、ちょっと天然発言も多いけれど、ひたむきに生きる姿が魅力的だった。目の前にいるローズは、天然発言というよりも、場を読めない非常識発言がチラホラ見えるし、横柄な態度が垣間見える時もある。可愛いさで誤魔化されていることが度々あるような……ないような。
でも、そんなわけないわよね。
「ローズ……」
お母様の侍女にこの態度はまずいと思い、とにかく話は後でと言おうとしたのだが、侍女が大きなため息をつき、一歩ローズに近づいて立った。二人に挟まれ、さらに二人との距離が近づいた私は、どっちを見たかわからない状況になる。
「同衾とは、夫婦の営みをなさったということです」
いやいや、まだ未遂ですよ。
「言葉の意味くらいわかります。だから、それが何で私が付き添えない理由になるんだって言っているの」
あれ?それは気にならない感じ?好きな相手が他の女と……イチャイチャとナニしてるのよ?嫌じゃないのかしら?
ローズの発言に戸惑ってしまい、ローズの生意気な言い方を咎めるのを忘れていた。
「はぁ……。そんなことも知らないで、付き添い侍女だなんて大きな顔をしていたんですか」
呆れたような侍女の口調に、ローズはムッとしたように唇を尖らせた。その表情も可愛いのだけれど、イライラするのは……気のせいね。
「知ってます。貴族の子女は純潔や貞操を重んじるんですよね。付き添い侍女をつけることで、異性と二人っきりにならないってアピールになるんでしょう。だから、私がお嬢様に付きっきりでいないといけないんですよね」
「その通りです。ご婚約者であるカティアス様と同衾なさった今、カティアス様がいらっしゃる時だけは付き添い侍女が不要なのは、お嬢様にとってカティアス様だけが例外になられたからです」
「ああ、純潔じゃなくなったから」
「ローズ!」
直接的な物言いに、私は顔を赤らめてローズをたしなめる。何よりも、私はまだ純潔です!……多分。
「大きな声を出してごめんなさい。ローズは洋裁室へ行って、そちらのお仕事をしてちょうだい。あなた、お母様がお待ちなのよね。参りましょう」
「はい、お嬢様」
お忙しいお母様を待たせるわけにもいかず、私はローズときちんと話もしないまま部屋を出た。
「お嬢様、使用人と距離が近いのもよろしいですが、甘やかすのは違うんじゃないでしょうか」
お母様の執務室へ向かいながら、侍女に苦言を呈されてしまう。ごもっともですと思いながらお母様の待つ部屋につくと、部屋の中ではカティアス様とお母様が談笑していた。お母様の隣にはお父様がいて、お父様は一生懸命お母様に話しかけているが、けっこうな割合で無視されているようだ。
「お嬢様をお連れしました」
侍女に案内され、カティアス様の隣に腰を下ろした。
「シャーロット、昨日はニシャハイド公爵家の舞踏会、お疲れ様でした」
「いえ、お母様」
「ところで、そこで何か騒ぎを起こしたと聞いたのだけれど」
扇子で口元を隠しながら、お母様は私に視線を投げかけてきた。そのキツイ視線に、私は背筋を伸ばして緊張した面持ちになる。
「夫人、ロッティは何もしていません。立派に夫人の名代をつとめていましたよ。ただ、彼女の付き添い侍女が、気分を悪くして倒れただけです」
「それは、私が聞いた話とは違うわね」
昨日の今日で、誰から情報を仕入れてきたのか。お母様の情報網が恐ろしくもある。
「どなたから何をお聞きになられたんでしょう?」
「ミレー伯爵夫人から今朝、お手紙をいただいたの。あなたが、どこかの令嬢にきつく当たって、突き飛ばしたとかなんとか。本当なのかと尋ねてきたわ」
ミレー伯爵夫人、社交界でもゴシップ好きで有名な夫人だ。
「それは誤解です。私の付き添い侍女が気絶してしまいましたが、慣れないコルセットの締め過ぎが原因で、私が突き飛ばしたという事実はありません」
「そう。コルセットを締めたくらいで倒れる付き添い侍女なんか、クビにした方がいいんじゃないかしら」
「いえお母様、すぐに慣れると思いますし、それくらいでクビにするのはちょっと!それに、ローズは洋裁室の仕事もしていて、刺繍の腕前が素晴らしいんです」
お母様ならば、本当にクビにしてしまいそうで、私は慌ててローズを擁護する。
「ローズ?その子の名前はローズというの?」
「は……い。まぁ、そんなに珍しい名前ではないですよね。ねえ、お父様」
「はひ!?ありふれた名前だと思うよ!百人女の子がいたら、三十人はローズなんじゃないかな。そんなことよりノーラ、さっき話していた話をロッティに聞かせてやらないと」
僕にふるなよ!と視線で訴えられたけれど、私は素知らぬ顔でお父様から視線をそらし、紅茶を飲んで平静を装う。
「そんなに沢山いるわけないでしょう。でも、確かに珍しい名前ではないわね。さて、シャーロット。昨晩、あなた達が同衾を果たしたと報告を受けました。おめでとう」
私は思わず、口に含んだ紅茶を吹き出しそうになる。
まさか親に処女喪失(してないけれど)を喜ばれるとは思わなかったから。
「ありがとうございます」
カティアス様の返答を聞いて、吹き出す前に飲み込もうとした紅茶が気管に入ってむせこんでしまう。
だって、当事者のカティアス様だけは未遂だって知っているはずなのに、肯定するような返答をするんですもの。
カティアス様に背中を撫でられ、私は涙目になりながら、身振りで大丈夫だとアピールする。
「みっともない。まともに紅茶も飲めないようじゃ、立派な女公爵になれませんよ」
女公爵?紅茶の飲み方とは関係ないよね?……じゃなく、なぜ女公爵がでてくるの?まだまだお父様も元気なのに。
「ロッティなら大丈夫さ。カティアス君もいるしね。僕は引退したら、君と領地に戻ってまったり過ごしたいな。二人が夫婦同然の関係になったのだから、早急に爵位継承の手続きをしないとだな」
引退!?爵位継承の手続き!?
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