23 / 32
22話 カティアス様とのデート…後半ローズ視点
ザワザワとざわめきが広がる中、カティアス様と二人、ショコラティエ・サマンサのテラス席に座った。
すっごい注目を浴びている気がするわ。お店のお客様にも、街を歩いている人達にも。
「カティアス様、確かに天気も良いですし、テラス席は見晴らしも良いですが、……個室の方がゆっくり食べられるのではないかしら」
カティアス様が先にお店に予約を入れておいてくれたらしく、待たずに入ることができたのは良かったのだが、お店の方が気を利かせて用意してくれていた個室を断り、カティアス様が指定したのはテラス席だった。
「個室だと、我慢がきかない気がしてさ」
「え?」
何の我慢でしょうか……と聞こうとしたところで、正面からカティアス様に手を握られた。周りから「キャーッ!」という悲鳴が上がる。
「カティアス様、見られていますよ!」
「うん、見せつけているんだよ。フフフ、あわよくば君を手に入れよう目論んでいる奴等に、もう君は私の物だってね」
いや、正確にはまだですよね?
処女性を尊ぶ貴族は、婚姻確定じゃなければ身体を重ねることはない。貴族子女が付き添い侍女を雇うのは、男性と二人っきりになるつもりはないというアピールだ。付き添い侍女を付けずに男性といるということは、周りにこの人と結婚間近です、夫婦同然の関係ですよと言っているようなものだ。
私がカティアス様と二人っきりでここにいる時点で、そういうこと(肉体関係あり)だって思われているんだろうに、さらにベタべタと見せつける意味がわからない。
女子の視線が辛い……。
カティアス様が見せつけたいと思っている人達と、実際に見せつけられて「キーッ!」となっている人達は、全く別な気がする。嫉妬、嫉み僻み、あらゆる負の感情が私に降り注いでいるように感じるのは、気のせいではないんじゃないかしら。
カティアス様の隣にいるのが、ローズみたいな愛らしい娘だったら、きっとまた違うのかもしれないけれどね。
そんなことを考えているうちに、目の前のテーブルに溢れるばかりのチョコレート菓子が並べられた。
「ロッティ、あーん」
カティアス様がチョコレートを一つ手に取り、私の口元に持ってきた。
「……!」
「ほら、あーん」
さっきまで騒がしかったお店が静まり返り、道を歩いていた人(主に全世代の女性)も立ち止まってカティアス様に注目した。中には自分が口を開けて、エアあーんを妄想している女子までいる。
昔は、あーんをしてもらったこともある。でもそれは、周りに誰もいない状況であったし、二人っきりになっても、誰も何も言わない本当に子供の時のことだ。こんな衆目の前で、淑女としてあるまじき行為なんか……。
期待に満ちたカティアス様の視線にはあらがえませんでした。
私はふるふると震えながら小さく口を開き、カティアス様のお手からチョコレートをいただいてしまいましたよ!
「もう一つどうぞ」
結局、私は自分の手を動かすことなくお菓子をいただき、チョコレートよりも甘い雰囲気に、チョコレートボンボンを食べたわけでもないのに、フラフラになってしまった。
そういえば思い出しましたけど、オマケ漫画にヒロインとヒーローのデートの様子……みたいなのもありましたね。ひたすらにヒロインを甘やかしていたような……。あんなふうに、イケメンに尽くされてみたい!なんて、あの時の私は思っていましたけれど、実際に甘々な態度でこられると、私の心臓がバクバク言い過ぎて、もちそうにないかもしれない。ついでに羞恥心で精神面がゴリゴリ削られて、疲労感も半端ない。私の性格的に、人の目を気にせずにイチャイチャするのは難易度が高過ぎたようだ。
「ご馳走様でございました……」
「うん、美味しかったね」
ま……眩しいです、その笑顔。
カティアス様の笑顔に、今まで時間が止まっていたんじゃないかというくらい静まり返っていた周囲に音が戻ってくる。それと同時に、テラスに二人の騎士が駆け込んできた。
「サマディ副団長、ご報告があります!」
カティアス様の笑顔がスッと消え、一瞬にして騎士団副団長の厳しい顔つきになる。それはそれでかっこよく、見惚れてしまうのはしょうがないだろう。
「なんだ」
「実は……」
騎士の一人がカティアス様に耳打ちし、カティアス様の顔が険しく曇った。
「ロッティ、申し訳ないけれど、騎士団に行かないといけなくなった」
「ええ、お仕事を優先するべきよ。私は一人でも大丈夫ですから、どうぞいらっしゃって」
「すまない。この埋め合わせは必ず」
カティアス様は立ち上がると、身を屈めて私の頬にキスを落とした。
「「「きゃー!」」」
女性達の奇声が響き渡る中、カティアス様は颯爽と店を出て行った。
何か事件でも起こったんだろう、大変そうだなと、この時の私は他人事のように思っていた。
カティアス様が騎士団詰め所に行ってしまい、私は誰の注目を浴びることもなくなり、ホッと一息ついて紅茶を一口飲んだ。
いや、一人だけ私の側に残った騎士が私を見ていた。彼はカティアスに私を公爵邸まで送るようにと言われ、私の横に控えていたのだけれど、……なんでかしら?私を見る目が冷ややかな感じがするわ。茶色の巻き毛に、ソバカスが特徴的な若い騎士で、今まで会ったことも話したこともなかったと思うのだけれど。
「余計なお仕事を増やしてごめんなさいね。すぐに帰るから」
「いえ、別に」
そっけない口調に首をひねる。
「あの……もしかして、どこかでお会いしたことがあるかしら?」
「ありませんが」
「そう……ですか。それは失礼しました」
なんとなく気まずい雰囲気が流れ、私は慌てて立ち上がった。
「帰ります。馬車を待たせてありますから、付き添いは馬車まででけっこうですよ」
「いえ、お屋敷まで送ります。副団長命令なので」
命令じゃなければごめんだという態度に思えるのは気のせいだろうか?
騎士は私の数歩後を歩いて店を出、馬車も御者台に乗って、私とは必要最小限のこと以外一言も喋らなかった。
屋敷につくと、お礼を言う私に目礼をしただけで、騎士は屋敷に入ることなく踵を返した。
★★★ローズ視線
「マルコス?」
誰にも見つからずに、フランツォ院長をブレンデル公爵邸の地下貯蔵庫に匿ったローズは、貯蔵庫の扉を閉めて振り返ったところで、屋敷の角を曲がってきたマルコスと目が合った。
「ローズ!」
マルコスは、ソバカスだらけの顔をほころばせて駆け寄ってきた。
「あんた、なんでこんなとこにいるのよ。今日は会う約束してないわよね」
マルコスは、シャーロットに付き添って騎士詰め所に行った時に知り合った騎士で、彼とは男女の関係になりつつ、騎士団の情報、特にフランツォ院長関係の情報を流してもらっていた。そのついでに、お嬢様が自分にどんなに意地悪で酷い仕打ちをするか(100%妄想)を涙ながらに話し、マルコスの同情をひきつつ、シャーロットの悪い噂が流れることを期待していた。
「ああ。実は副団長に頼まれて、公爵令嬢を屋敷まで送ってきたんだ。ローズに会えるんじゃないかって、ちょっといつもの場所に来てみた」
「もう!誰かに見られたら大変じゃない」
ローズは、マルコスをいつも逢い引きしている裏の小屋まで引っ張って行く。ここは侍女達が使う逢い引き小屋で、木の札がかかっていない時は未使用、かかっている時は使用中となっていた。
皆、仕事中の時間帯だから、誰も小屋を使用していなかった為、ローズは木の札をかけて小屋に入った。入った途端、マルコスに抱き寄せられるが、ローズはおざなりにキスに答えてから、マルコスを引き剥がした。
「今はそんなことしている時間はないの」
「だったらすぐにすませるから」
「嫌よ、止めて。それに、今日は女の子の日だから無理よ」
すぐにでもやりたがるマルコスをいなしながら、ローズは適当な嘘をつく。
「それにしても、カティアス様はお嬢様とお出かけなさったのに、なんであんたがお嬢様を送って来たわけ?」
「ああ、そうだ!実は、第三区孤児院院長が行方不明になったんだ」
「ええっ!?」
ローズはわざとらしく驚いてみせる。半分は、フランツォ院長がいないことがもうバレたんだという驚きもあったが、優秀なカティアスの先手を打てたという誇らしさを隠すためでもあった。
「心配だよな」
ローズは眉毛を下げて、困ったような寂しそうな表情を作ってみせる。
「騎士団的には、院長先生がクロだって調べがついているんだよね。だから逃げたのかな」
「そうだな。残念だけど」
「そっか……。でも、誰が院長先生に情報を漏らしたんだろう」
「え?」
ローズは、唇に手を当てて首を傾げてマルコスを見上げる。この角度が一番自分を可愛く見せてくれることを、ローズは知っていた。
「だって、自分が疑われているって思わなければ逃げないでしょう?騎士団の動きをよく知っていて、それでいて院長先生と親しい人物。そんな人が院長先生に味方してるんじゃないかな」
ローズは自分もその定義に入ることは素知らぬ顔をして、マルコスをミスリードしようとする。
「え?そんな人物いるか?」
「わかんないけど……、お嬢様じゃないよね?いくら意地の悪いお嬢様でも、犯罪にまで手を染めたりしないか」
「それはないだろう。あの女は知らんけど、副団長が情報漏洩するとは思えないしな」
「そ……そうだよね。でも……」
「鼻がきくやつなんだよ。犯罪者ってのは、悪い奴ほど強運だったりするんだよ」
笑顔がひきつらないように気をつけながら、ローズは「そうかもね」とつぶやいた。
ないことないことマルコスに吹き込んで、シャーロットの評判を下げようと目論んだローズだったが、マルコスはそれを吹聴することはなかった。シャーロットに対するマルコスの好感度はだだ下がりしたものの、カティアスに対するリスペクトは依然強く、ローズのミスリードに乗らなかったのも、カティアスへの絶対的な信頼があったからだった。
もっと使えると思ったのに……。
ローズの中で、マルコスはすでに過去の男に位置づけられた。
すっごい注目を浴びている気がするわ。お店のお客様にも、街を歩いている人達にも。
「カティアス様、確かに天気も良いですし、テラス席は見晴らしも良いですが、……個室の方がゆっくり食べられるのではないかしら」
カティアス様が先にお店に予約を入れておいてくれたらしく、待たずに入ることができたのは良かったのだが、お店の方が気を利かせて用意してくれていた個室を断り、カティアス様が指定したのはテラス席だった。
「個室だと、我慢がきかない気がしてさ」
「え?」
何の我慢でしょうか……と聞こうとしたところで、正面からカティアス様に手を握られた。周りから「キャーッ!」という悲鳴が上がる。
「カティアス様、見られていますよ!」
「うん、見せつけているんだよ。フフフ、あわよくば君を手に入れよう目論んでいる奴等に、もう君は私の物だってね」
いや、正確にはまだですよね?
処女性を尊ぶ貴族は、婚姻確定じゃなければ身体を重ねることはない。貴族子女が付き添い侍女を雇うのは、男性と二人っきりになるつもりはないというアピールだ。付き添い侍女を付けずに男性といるということは、周りにこの人と結婚間近です、夫婦同然の関係ですよと言っているようなものだ。
私がカティアス様と二人っきりでここにいる時点で、そういうこと(肉体関係あり)だって思われているんだろうに、さらにベタべタと見せつける意味がわからない。
女子の視線が辛い……。
カティアス様が見せつけたいと思っている人達と、実際に見せつけられて「キーッ!」となっている人達は、全く別な気がする。嫉妬、嫉み僻み、あらゆる負の感情が私に降り注いでいるように感じるのは、気のせいではないんじゃないかしら。
カティアス様の隣にいるのが、ローズみたいな愛らしい娘だったら、きっとまた違うのかもしれないけれどね。
そんなことを考えているうちに、目の前のテーブルに溢れるばかりのチョコレート菓子が並べられた。
「ロッティ、あーん」
カティアス様がチョコレートを一つ手に取り、私の口元に持ってきた。
「……!」
「ほら、あーん」
さっきまで騒がしかったお店が静まり返り、道を歩いていた人(主に全世代の女性)も立ち止まってカティアス様に注目した。中には自分が口を開けて、エアあーんを妄想している女子までいる。
昔は、あーんをしてもらったこともある。でもそれは、周りに誰もいない状況であったし、二人っきりになっても、誰も何も言わない本当に子供の時のことだ。こんな衆目の前で、淑女としてあるまじき行為なんか……。
期待に満ちたカティアス様の視線にはあらがえませんでした。
私はふるふると震えながら小さく口を開き、カティアス様のお手からチョコレートをいただいてしまいましたよ!
「もう一つどうぞ」
結局、私は自分の手を動かすことなくお菓子をいただき、チョコレートよりも甘い雰囲気に、チョコレートボンボンを食べたわけでもないのに、フラフラになってしまった。
そういえば思い出しましたけど、オマケ漫画にヒロインとヒーローのデートの様子……みたいなのもありましたね。ひたすらにヒロインを甘やかしていたような……。あんなふうに、イケメンに尽くされてみたい!なんて、あの時の私は思っていましたけれど、実際に甘々な態度でこられると、私の心臓がバクバク言い過ぎて、もちそうにないかもしれない。ついでに羞恥心で精神面がゴリゴリ削られて、疲労感も半端ない。私の性格的に、人の目を気にせずにイチャイチャするのは難易度が高過ぎたようだ。
「ご馳走様でございました……」
「うん、美味しかったね」
ま……眩しいです、その笑顔。
カティアス様の笑顔に、今まで時間が止まっていたんじゃないかというくらい静まり返っていた周囲に音が戻ってくる。それと同時に、テラスに二人の騎士が駆け込んできた。
「サマディ副団長、ご報告があります!」
カティアス様の笑顔がスッと消え、一瞬にして騎士団副団長の厳しい顔つきになる。それはそれでかっこよく、見惚れてしまうのはしょうがないだろう。
「なんだ」
「実は……」
騎士の一人がカティアス様に耳打ちし、カティアス様の顔が険しく曇った。
「ロッティ、申し訳ないけれど、騎士団に行かないといけなくなった」
「ええ、お仕事を優先するべきよ。私は一人でも大丈夫ですから、どうぞいらっしゃって」
「すまない。この埋め合わせは必ず」
カティアス様は立ち上がると、身を屈めて私の頬にキスを落とした。
「「「きゃー!」」」
女性達の奇声が響き渡る中、カティアス様は颯爽と店を出て行った。
何か事件でも起こったんだろう、大変そうだなと、この時の私は他人事のように思っていた。
カティアス様が騎士団詰め所に行ってしまい、私は誰の注目を浴びることもなくなり、ホッと一息ついて紅茶を一口飲んだ。
いや、一人だけ私の側に残った騎士が私を見ていた。彼はカティアスに私を公爵邸まで送るようにと言われ、私の横に控えていたのだけれど、……なんでかしら?私を見る目が冷ややかな感じがするわ。茶色の巻き毛に、ソバカスが特徴的な若い騎士で、今まで会ったことも話したこともなかったと思うのだけれど。
「余計なお仕事を増やしてごめんなさいね。すぐに帰るから」
「いえ、別に」
そっけない口調に首をひねる。
「あの……もしかして、どこかでお会いしたことがあるかしら?」
「ありませんが」
「そう……ですか。それは失礼しました」
なんとなく気まずい雰囲気が流れ、私は慌てて立ち上がった。
「帰ります。馬車を待たせてありますから、付き添いは馬車まででけっこうですよ」
「いえ、お屋敷まで送ります。副団長命令なので」
命令じゃなければごめんだという態度に思えるのは気のせいだろうか?
騎士は私の数歩後を歩いて店を出、馬車も御者台に乗って、私とは必要最小限のこと以外一言も喋らなかった。
屋敷につくと、お礼を言う私に目礼をしただけで、騎士は屋敷に入ることなく踵を返した。
★★★ローズ視線
「マルコス?」
誰にも見つからずに、フランツォ院長をブレンデル公爵邸の地下貯蔵庫に匿ったローズは、貯蔵庫の扉を閉めて振り返ったところで、屋敷の角を曲がってきたマルコスと目が合った。
「ローズ!」
マルコスは、ソバカスだらけの顔をほころばせて駆け寄ってきた。
「あんた、なんでこんなとこにいるのよ。今日は会う約束してないわよね」
マルコスは、シャーロットに付き添って騎士詰め所に行った時に知り合った騎士で、彼とは男女の関係になりつつ、騎士団の情報、特にフランツォ院長関係の情報を流してもらっていた。そのついでに、お嬢様が自分にどんなに意地悪で酷い仕打ちをするか(100%妄想)を涙ながらに話し、マルコスの同情をひきつつ、シャーロットの悪い噂が流れることを期待していた。
「ああ。実は副団長に頼まれて、公爵令嬢を屋敷まで送ってきたんだ。ローズに会えるんじゃないかって、ちょっといつもの場所に来てみた」
「もう!誰かに見られたら大変じゃない」
ローズは、マルコスをいつも逢い引きしている裏の小屋まで引っ張って行く。ここは侍女達が使う逢い引き小屋で、木の札がかかっていない時は未使用、かかっている時は使用中となっていた。
皆、仕事中の時間帯だから、誰も小屋を使用していなかった為、ローズは木の札をかけて小屋に入った。入った途端、マルコスに抱き寄せられるが、ローズはおざなりにキスに答えてから、マルコスを引き剥がした。
「今はそんなことしている時間はないの」
「だったらすぐにすませるから」
「嫌よ、止めて。それに、今日は女の子の日だから無理よ」
すぐにでもやりたがるマルコスをいなしながら、ローズは適当な嘘をつく。
「それにしても、カティアス様はお嬢様とお出かけなさったのに、なんであんたがお嬢様を送って来たわけ?」
「ああ、そうだ!実は、第三区孤児院院長が行方不明になったんだ」
「ええっ!?」
ローズはわざとらしく驚いてみせる。半分は、フランツォ院長がいないことがもうバレたんだという驚きもあったが、優秀なカティアスの先手を打てたという誇らしさを隠すためでもあった。
「心配だよな」
ローズは眉毛を下げて、困ったような寂しそうな表情を作ってみせる。
「騎士団的には、院長先生がクロだって調べがついているんだよね。だから逃げたのかな」
「そうだな。残念だけど」
「そっか……。でも、誰が院長先生に情報を漏らしたんだろう」
「え?」
ローズは、唇に手を当てて首を傾げてマルコスを見上げる。この角度が一番自分を可愛く見せてくれることを、ローズは知っていた。
「だって、自分が疑われているって思わなければ逃げないでしょう?騎士団の動きをよく知っていて、それでいて院長先生と親しい人物。そんな人が院長先生に味方してるんじゃないかな」
ローズは自分もその定義に入ることは素知らぬ顔をして、マルコスをミスリードしようとする。
「え?そんな人物いるか?」
「わかんないけど……、お嬢様じゃないよね?いくら意地の悪いお嬢様でも、犯罪にまで手を染めたりしないか」
「それはないだろう。あの女は知らんけど、副団長が情報漏洩するとは思えないしな」
「そ……そうだよね。でも……」
「鼻がきくやつなんだよ。犯罪者ってのは、悪い奴ほど強運だったりするんだよ」
笑顔がひきつらないように気をつけながら、ローズは「そうかもね」とつぶやいた。
ないことないことマルコスに吹き込んで、シャーロットの評判を下げようと目論んだローズだったが、マルコスはそれを吹聴することはなかった。シャーロットに対するマルコスの好感度はだだ下がりしたものの、カティアスに対するリスペクトは依然強く、ローズのミスリードに乗らなかったのも、カティアスへの絶対的な信頼があったからだった。
もっと使えると思ったのに……。
ローズの中で、マルコスはすでに過去の男に位置づけられた。
あなたにおすすめの小説
選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ
暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】
5歳の時、母が亡くなった。
原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。
そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。
これからは姉と呼ぶようにと言われた。
そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。
母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。
私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
気付けば私は家の外に出ていた。
元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。
特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。
私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
(本編完結)無表情の美形王子に婚約解消され、自由の身になりました! なのに、なんで、近づいてくるんですか?
水無月あん
恋愛
本編は完結してます。8/6より、番外編はじめました。よろしくお願いいたします。
私は、公爵令嬢のアリス。ピンク頭の女性を腕にぶら下げたルイス殿下に、婚約解消を告げられました。美形だけれど、無表情の婚約者が苦手だったので、婚約解消はありがたい! はれて自由の身になれて、うれしい! なのに、なぜ、近づいてくるんですか? 私に興味なかったですよね? 無表情すぎる、美形王子の本心は? こじらせ、ヤンデレ、執着っぽいものをつめた、ゆるゆるっとした設定です。お気軽に楽しんでいただければ、嬉しいです。
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】
iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
聖娼王女の結婚
渡波みずき
恋愛
第三王女のライラは、神殿の巫女だった側室を母に持ち、異母兄弟のなかで肩身が狭い思いをしながら過ごしていた。母はすでに亡く、父王も崩御し、後ろ盾を失ったライラは、兄から勧められた縁談や姉の嫌がらせから逃げるため、神殿に足を踏み入れる。
だが、ライラが巫女になる道のりは険しい。なぜなら、見習いは、聖娼として三晩、客人の夜のお相手をしなければならないからで──
自身の思い込みの激しさに気づかない王女のすれ違い恋愛もの
【完結】孤高の皇帝は冷酷なはずなのに、王妃には甘過ぎです。
朝日みらい
恋愛
異国からやってきた第3王女のアリシアは、帝国の冷徹な皇帝カイゼルの元に王妃として迎えられた。しかし、冷酷な皇帝と呼ばれるカイゼルは周囲に心を許さず、心を閉ざしていた。しかし、アリシアのひたむきさと笑顔が、次第にカイゼルの心を溶かしていき――。
【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。