日々

睦月マコト

文字の大きさ
3 / 8

寝起き

しおりを挟む
 気圧がゼロにでもなったみたいに頭が重い。
 気圧ゼロってつまりは空気がないのか? じゃあ私死んだのか? まで考えて、シャワーをさぼった頭皮がべたつく不快感に生を実感させられた。
 不快感で生きてることを確認する曇りの日の朝なんて、きっと世界気持ちよくない朝ランキング四位ぐらいに入るだろう。一位は十連勤中日で雨天で二日酔いの朝だ。私的なランキングかもしれないが、私にとっては私の知りうる全てだけが世界なのでよしとする。
 目覚ましの不快な音に脅迫されながら、テレビから這い出る貞子よりも緩慢な動きでずるずると布団から出た私は、泣きそうな気持ちで音を止め、乾燥しきってねばつく口に思いきり冬の空気を吸い込んだ。
「あ~~~~~~」
 呻きとため息を混ぜた音を発していたら、乾燥でずたずたになった喉が耐え切れずにせき込んだ。毎朝こうして加湿器を買えと喉に催促されるのだが、水の入れ替えと加湿器の掃除が面倒そうなので毎朝喉には我慢してもらうことにしている。精神衛生上必要な犠牲なのだ。許せ。
 よれたパジャマを直しもせずに洗面所に向かい、水垢が目立ってきたコップになみなみと水を入れてうがいをする。水と痰と血の混ざったうがいを済ませて水を飲むと、止まっていた私の血が巡り出したような感覚を得られる。この感覚はまあまあ好きだが、血が巡って健康になってしまうと仕事を休めないという絶望も同時に味わえるため、幸福ではない。
 また大きくため息をついて四十二秒ほどうなだれた後、私は堪忍して冷蔵庫から取り出したゼリー飲料をお腹に流し込んだ。
 十六時間ぶりのエネルギーが身に染みる、ということはなく、寝起きかつ空のお腹に冷えたゼリーを入れたせいで速攻でお腹が痛くなった。生きることはかくも辛い。
 結局私は一度の目覚ましで起きたことにより発生した時間の余裕を、上体をくの字に曲げながらトイレで過ごす事によって無にしてしまった。
 結果として、シャワーを浴びながら全力で手を動かして全身を洗う羽目になったのだが、いつもここを超えると全力で身体を動かしたことによって興奮状態に陥り、仕事と社会を素手で殴り倒してやろうという気持ちになって心身にエンジンがかかるので全力シャワーは悪くはない。できればやりたくないけれど。
 シャワーを終え、景気づけに牛乳を飲んで、着ていたものを総取り換えし、すっかり外向的になった気持ちと鞄を抱えて家を出る。
 曇り空、なんぼのもんじゃい。気持ちよくない朝だろうと私は負けない。
 身体の芯に力を入れたまま出社した私は、牛乳に負けてトイレで上体をくの字に曲げることとなった。
 人生はかくも辛い。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

最愛が……腕の中に……あるのに……

#Daki-Makura
ファンタジー
最愛と結ばれたかった…… この国を最愛と導きたかった…… その願いも……叶わないのか……

処理中です...