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噂の聖女、爆誕編
第1話 祝福とすんごい絶望
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クライネルト家の未来は私の肩にかかっている。
18歳の誕生日、成人の儀を迎える朝。私は鏡の前で、母が仕て直してくれた少し古びたドレスの胸元をぎゅっと握りしめていた。
「ルルナ」
背後から父の厳格な声が飛ぶ。振り返ると、痩身ながらも貴族の誇りを滲ませた父が、厳しい目つきで私を見下ろしていた。
「よいか。お前に授けられるスキルが、我らクライネルト家の浮沈を左右する。長兄の【土壌改良(小)】では、この痩せた領地を立て直すにはあまりに非力だった。せめてお前には、『鑑定』や『錬金』のような、実利のあるスキルが授からんことを……神に祈るばかりだ」
「はい、お父様。わかっております」
か細い声で答えるのが精一杯だった。
我がクライネルト家は、名ばかりの下級貴族。領地は痩せ、財政は常に火の車。この状況を打開できる可能性があるのは、今日、神から授けられる「スキル」だけなのだ。
(お願い、神様。どうか私に、この家を救う力を――)
――王都ソリスティア
王都の中心にそびえ立つ、サンクトゥス大聖堂。その内部は荘厳な雰囲気に満ちていた。
同じく成人の儀に臨む他の貴族の子女たちは、皆一様に自信に満ちた顔で、神官の呼び出しを待っている。私だけが、場違いなほど縮こまっていた。
やがて、神官の澄んだ声が響く。
「――ルルナ・フォン・クライネルト」
心臓が跳ねる。私はおぼつかない足取りで、祭壇の前へと進み出た。目の前には、人の頭ほどもある巨大な水晶が鎮座している。
「手を、水晶へ」
言われるがままに、震える両手をそっと水晶に触れさせた。
瞬間、まばゆい光が溢れ出し、温かい何かが私の体の中に流れ込んでくる。これが、神の祝福――スキル。
光が収まると、神官が厳かに水晶を覗き込み、授けられたスキル名を確認する。その表情が、みるみるうちに変化していくのを、私は見逃さなかった。
尊敬、安堵、そして困惑。最後に、見たこともないほどの絶句した顔になった。
「……え?」
神官が、すっとんきょうな声を漏らした。
荘厳な儀式の場にそぐわないその声に、会場がざわつき始める。
「どうしたのだ?」「まさか、スキルなしか?」
神官はざわめきを気にする余裕もないのか、何度も水晶を覗き込んでは、信じられないという顔で私を見ている。やがて、覚悟を決めたように大きく息を吸い込み、震える声で高らかに告げた。
「……ルルナ・フォン・クライネルト様に……授けられしスキルは……」
ごくり、と誰かが息をのむ。私も、固唾をのんでその言葉を待った。
「【す、すんごい、おっぱい】……に、御座います……」
しん、とサンクトゥス大聖堂が静まり返った。
一秒、二秒。時間が永遠のように感じられた。
(……え? いま、なんて……?)
私の思考が完全に停止したのを合図にしたかのように、どこからか、こらえきれない「クッ…」という笑い声が漏れた。それを皮切りに、あちこちからクスクスという嘲笑が波のように広がっていく。
私は、ただ呆然と立ち尽くすことしかできなかった。視線の先には、怒りと絶望で顔を真っ赤にした父の姿があった。
その後のことは、よく覚えていない。
どうやって屋敷に帰ったのかも定かではない。気づけば私は、自室のベッドの上で毛布を頭までかぶり、震えていた。
ドアの向こうから、父の怒鳴り声が聞こえる。
「我が家の恥だ!」「あのような破廉恥なスキルで、何ができるというのだ!」「誰にも顔向けできん!」
涙が次から次へと溢れ出す。
(私の人生は終わったんだ……)
ふと胸元に違和感を覚えた。
ドレスが朝よりも明らかに窮屈になっている。まるで、中から何かに押し上げられているような……。
私はおそるおそる毛布から這い出し、鏡の前に立つ。
そして、自分の姿を見て言葉を失った。
控えめだったはずの胸が、ドレスの形がはっきりと変わるほどに、豊かに、大きく膨らんでいたのだ。
それは私の絶望を裏付ける、紛れもない呪いの証だった。
「うそ……いや……いやぁぁぁぁっ!」
私の悲鳴が、クライネルト家の小さな屋敷に虚しく響き渡った。
18歳の誕生日、成人の儀を迎える朝。私は鏡の前で、母が仕て直してくれた少し古びたドレスの胸元をぎゅっと握りしめていた。
「ルルナ」
背後から父の厳格な声が飛ぶ。振り返ると、痩身ながらも貴族の誇りを滲ませた父が、厳しい目つきで私を見下ろしていた。
「よいか。お前に授けられるスキルが、我らクライネルト家の浮沈を左右する。長兄の【土壌改良(小)】では、この痩せた領地を立て直すにはあまりに非力だった。せめてお前には、『鑑定』や『錬金』のような、実利のあるスキルが授からんことを……神に祈るばかりだ」
「はい、お父様。わかっております」
か細い声で答えるのが精一杯だった。
我がクライネルト家は、名ばかりの下級貴族。領地は痩せ、財政は常に火の車。この状況を打開できる可能性があるのは、今日、神から授けられる「スキル」だけなのだ。
(お願い、神様。どうか私に、この家を救う力を――)
――王都ソリスティア
王都の中心にそびえ立つ、サンクトゥス大聖堂。その内部は荘厳な雰囲気に満ちていた。
同じく成人の儀に臨む他の貴族の子女たちは、皆一様に自信に満ちた顔で、神官の呼び出しを待っている。私だけが、場違いなほど縮こまっていた。
やがて、神官の澄んだ声が響く。
「――ルルナ・フォン・クライネルト」
心臓が跳ねる。私はおぼつかない足取りで、祭壇の前へと進み出た。目の前には、人の頭ほどもある巨大な水晶が鎮座している。
「手を、水晶へ」
言われるがままに、震える両手をそっと水晶に触れさせた。
瞬間、まばゆい光が溢れ出し、温かい何かが私の体の中に流れ込んでくる。これが、神の祝福――スキル。
光が収まると、神官が厳かに水晶を覗き込み、授けられたスキル名を確認する。その表情が、みるみるうちに変化していくのを、私は見逃さなかった。
尊敬、安堵、そして困惑。最後に、見たこともないほどの絶句した顔になった。
「……え?」
神官が、すっとんきょうな声を漏らした。
荘厳な儀式の場にそぐわないその声に、会場がざわつき始める。
「どうしたのだ?」「まさか、スキルなしか?」
神官はざわめきを気にする余裕もないのか、何度も水晶を覗き込んでは、信じられないという顔で私を見ている。やがて、覚悟を決めたように大きく息を吸い込み、震える声で高らかに告げた。
「……ルルナ・フォン・クライネルト様に……授けられしスキルは……」
ごくり、と誰かが息をのむ。私も、固唾をのんでその言葉を待った。
「【す、すんごい、おっぱい】……に、御座います……」
しん、とサンクトゥス大聖堂が静まり返った。
一秒、二秒。時間が永遠のように感じられた。
(……え? いま、なんて……?)
私の思考が完全に停止したのを合図にしたかのように、どこからか、こらえきれない「クッ…」という笑い声が漏れた。それを皮切りに、あちこちからクスクスという嘲笑が波のように広がっていく。
私は、ただ呆然と立ち尽くすことしかできなかった。視線の先には、怒りと絶望で顔を真っ赤にした父の姿があった。
その後のことは、よく覚えていない。
どうやって屋敷に帰ったのかも定かではない。気づけば私は、自室のベッドの上で毛布を頭までかぶり、震えていた。
ドアの向こうから、父の怒鳴り声が聞こえる。
「我が家の恥だ!」「あのような破廉恥なスキルで、何ができるというのだ!」「誰にも顔向けできん!」
涙が次から次へと溢れ出す。
(私の人生は終わったんだ……)
ふと胸元に違和感を覚えた。
ドレスが朝よりも明らかに窮屈になっている。まるで、中から何かに押し上げられているような……。
私はおそるおそる毛布から這い出し、鏡の前に立つ。
そして、自分の姿を見て言葉を失った。
控えめだったはずの胸が、ドレスの形がはっきりと変わるほどに、豊かに、大きく膨らんでいたのだ。
それは私の絶望を裏付ける、紛れもない呪いの証だった。
「うそ……いや……いやぁぁぁぁっ!」
私の悲鳴が、クライネルト家の小さな屋敷に虚しく響き渡った。
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