スキル名【すんごい、おっぱい】なんだけど、これってどうなの!?

かわさきはっく

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波乱の魔王軍、介入編

第32話 尋問とすんごいお菓子

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 王都ソリスティアに帰還した私たちは、またしても英雄として、国を挙げての歓迎を受けた。
 しかし今回の主役は私や勇者様たちだけではなかった。

『厄災の魔女』ヘクサーナ。
 彼女の処遇をどうするかで、王城の会議室は、連日、議論が紛糾していた。

「魔王軍の幹部だぞ! 即刻、処刑すべきだ!」
「いや待て。彼女から魔王軍の内部情報を聞き出す、またとない機会だ」
「しかし、あの魔女が素直に口を割るとは思えん…」

 そんな中、ヘクサーナは城の地下にある、賓客用の牢獄(という名の、豪華な一室)に軟禁されていた。
 彼女は誰が尋問しても、ただ黙り込み、心を閉ざしているという。

「困ったことになったな…」
 ユウキ様が頭を抱えていた。
「あいつの心を開けるのは、やっぱりルルナ、君しかいないかもしれない」

「そ、そんな…! 私、尋問なんて、できません!」
 私が全力で拒否していると、シルヴィアさんが冷静に提案した。
「尋問という形を取る必要はありません。ただ、あなたがお茶に誘う、という名目で、彼女と話してみてはどうでしょう。何か糸口が見つかるかもしれません」

 その提案に、私は渋々、頷くことしかできなかった。

 薄暗い地下牢の一室。
 ヘクサーナは窓の外をただぼんやりと眺めていた。

「……何の用? 私に何か聞きたいことでもあるのかしら」
 私が入っていくと、彼女は冷たい声でそう言った。

「い、いえ! そういうわけでは……! あの、その……お茶にしませんか?」
 私は侍女に用意してもらった温かい紅茶と、焼き菓子の乗ったワゴンを押しながら、しどろもどろに言った。

 ヘクサーナは私の申し出に、少しだけ驚いたような顔をしたが、何も言わずに、テーブルの向かいの席に座った。
 気まずい沈黙が流れる。
 私は、ただ、紅茶をカップに注ぐことしかできなかった。

(どうしよう……何を話せば……)
 私がパニックになっていると、ヘクサーナがテーブルの上の焼き菓子を、じっと見つめていることに気づいた。
 それは、王宮のパティシエが作った、見た目も美しいフルーツタルトだった。

「あ、あの! どうぞ召し上がってください!」
 私がそう言うと、彼女は少しだけ躊躇うようにフォークを手に取った。
 そして、小さなタルトを一口、口に運んだ。

 その瞬間だった。
 彼女の氷のように冷たかった瞳が、大きく、大きく見開かれた。
 そして、その頬を、一筋の涙が静かに伝っていった。

「……おいしい……」

 それは、心の底から漏れ出たような、か細い声だった。
「私、こんなに温かくて甘いものを食べたの……何百年ぶりかしら……」

 魔族は魔力さえあれば食事を取らなくても生きていける。
 彼女は、ずっと、味も、温もりも、忘れて生きてきたのだ。

 私は彼女のその涙を見て、たまらない気持ちになった。
「あ、あの! 私の分も、どうぞ!」
 私は自分の分のタルトを彼女のお皿に乗せてあげようと、テーブルにぐっと身を乗り出した。

 その時だった。
 ぽすん。
 乗り出した勢いで、私の胸がテーブルの縁に、優しく触れた。
 瞬間、私の胸から放たれた温かい光が、お皿の上のタルトに、ふわりと宿ったのを私は感じた。

 その光に、ヘクサーナが、はっとしたように顔を上げる。
 彼女は私の顔と、不思議な温かみを帯びたタルトを交互に見つめ、やがて、堰を切ったように、ぽつり、ぽつりと、自分のことを語り始めた。

 自分が、なぜ、あれほどまでに希望を憎んでいたのか。
 魔王に仕えるようになった悲しい過去。
 そして、魔王軍の恐るべき目的……。

 彼女が語った内容は、あまりに衝撃的で、私たちの戦いが、まだ始まったばかりであることを痛感させるものだった。

 その日の午後、私の持ってきたお菓子をきっかけに、元・厄災の魔女は、魔王軍に関する全ての情報を王国側に提供することを約束した。

 ユウキ様は、その報告を聞いて感嘆の声を上げた。
「お菓子一つで、魔王軍の幹部を懐柔しただと……? なんて恐ろしいスキルだ! スキル名、『聖なるお茶会(ホーリー・ティーパーティー)』! どんな相手も胃袋から支配するのか!」

 私のすんごいおっぱいは、ついに敵の心さえも、甘く溶かしてしまったようだった。
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