スキル名【すんごい、おっぱい】なんだけど、これってどうなの!?

かわさきはっく

文字の大きさ
41 / 65
波乱の魔王軍、介入編

第41話 炎獄とすんごい耐熱性

しおりを挟む
 王家の転移魔法陣が放つ光が収まった時、私たちの目の前に広がっていたのは、まさしく地獄のような光景だった。

「うわっ……あつっ!」
 ユウキ様が悲鳴に近い声を上げる。

 ごつごつとした黒い岩の大地。遠くで川のように流れる紅蓮の溶岩。そして、肌を焼くような熱波と、鼻を突く硫黄の匂い。
 空は絶えず噴き上がる火山灰で薄暗く淀んでいる。

「がはは! 故郷の鍛冶場を思い出すぜ!」
 この灼熱地獄の中、ドワーフであるダインさんだけが、どこか楽しそうだった。

「私の魔法では、この熱を完全に遮断するのは不可能です。長居はできません」
 シルヴィアさんが張ってくれた冷気の結界も、気休め程度にしかならない。立っているだけで汗が噴き出し、体力が奪われていく。

 私たちは、ヘクサーナから教えられた《憤怒の火山炉》を目指し、険しい岩山を登り始めた。
 道中には、無残に砕けた王国騎士団の盾や、焼け焦げた鎧が散乱しており、ここで行われた戦いの激しさを物語っていた。

 しばらく進んだところで、私たちは蒸気を噴き出す亀裂が、無数に走る広大な岩盤地帯へとたどり着いた。
 熱気は、これまでとは比較にならないほど凄まじい。

「はぁ……はぁ……あ、暑いです……」
 パーティの中で最も体力のない私は、すでに限界寸前だった。
 意識が朦朧とし足元がおぼつかない。

(涼しい……風が……欲しい……)
 私は、ほとんど無意識のまま、自分の服の襟元を掴むと、胸元に向かって、ぱたぱた、と扇ぎ始めた。
 少しでも風が欲しかった。

 その、ささやかな行動が引き金だった。
 私が服を扇ぐたびに、私の胸が、ぽよん、ぽよん、と、リズミカルに揺れる。

 すると、どうだろう。
 私の体から、まるで蜃気楼のように、ひんやりとした冷気が溢れ出し始めたのだ。
 それは、私だけでなく、パーティ全員を包み込む、一つの快適な空間を作り出した。
 うだるような熱波は消え失せ、まるで高原の朝のような、爽やかな空気が私たちの肺を満たす。

「……え? なんだこれ……涼しい……!」
 熱でへたり込みそうだったユウキ様が驚きの声を上げる。
 ダインさんの額から、玉のような汗が引いていく。

 シルヴィアさんは信じられないという顔で、私を見ていた。私が、ただ暑くて胸元を扇いでいるだけの私を。
「……まさか。彼女の体が周囲の熱エネルギーを無尽蔵に吸収し、生命活動に最適な温度へと変換する、自動環境調整機能(オート・クライメート・コントロール)を……? そんな……馬鹿な……」

(え? なんだか、少し涼しくなったような……? 皆さん、どうしたんでしょう……?)
 私だけが、何が起きているのか全く理解していなかった。

 その時だった。
 山の向こうから、凄まじい轟音が響き渡り、大地が震えた。
 私たちは弾かれたように音のした方角を見やる。

 見晴らしの良い岩陰から、眼下の巨大なカルデラを見下ろし、私たちは息をのんだ。
 そこで戦っていたのは、ボロボロになりながらも必死に陣形を組む、十数人の王国騎士団の生き残り。
 そして――

 一人の山のように巨大な魔族。
 その体は冷えた溶岩のような黒い甲殻で覆われ、両の拳はマグマそのもののように赤く輝いている。
『剛力の魔将軍ブルガロス』。

 ブルガロスは雄叫びを上げると、ただ地面を殴りつけた。
 それだけで、騎士たちが盾にしていた巨大な岩盤がクッキーのように粉々に砕け散る。
 騎士団長バルトークさんが、血を吐きながらも剣を構え、仲間を鼓舞しているのが見えた。
 しかし、彼らが全滅するのも、もはや時間の問題だった。

「……あいつが、ブルガロスか。とんでもねえ化け物だ」
 ユウキ様が聖剣の柄を握りしめ、呟く。

 シルヴィアさんが私の顔を見た。
「……スキル名、『聖なる癒やし空間(ホーリー・リフレッシュ・エリア)』、とでも名付けておきましょうか。ルルナ、あなたのおかげで、私たちは、あの化け物と戦う、最低限のスタートラインに立てたようです」

 絶望的な戦場に、私たちは、すんごい耐熱性を身につけて、今、足を踏み入れようとしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】男装して会いに行ったら婚約破棄されていたので、近衛として地味に復讐したいと思います。

銀杏鹿
恋愛
次期皇后のアイリスは、婚約者である王に会うついでに驚かせようと、男に変装し近衛として近づく。 しかし、王が自分以外の者と結婚しようとしていると知り、怒りに震えた彼女は、男装を解かないまま、復讐しようと考える。 しかし、男装が完璧過ぎたのか、王の意中の相手やら、王弟殿下やら、その従者に目をつけられてしまい……

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

処理中です...