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すんごい、おっぱいは世界を救う(?)編
第52話 絶望とすんごい隙
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魔王が静かに指を一本、上げた。
その瞬間、この場から『力』という概念が消え始めた。
「ぐっ……お、おい……俺の腕が……!」
最初に異変に気づいたのはダインさんだった。岩をも砕くはずの彼の剛腕が、まるで力を失った老人のように、わなわなと震えている。前に踏み出そうにも、足が言うことを聞かない。
「力が……抜けちまう……!」
「そんな……!」
シルヴィアさんの顔から血の気が引いていく。
彼女が指先で魔法の紋様を描こうとしても、魔力が霧散してしまう。術式が頭の中で意味のある形を成さない。魔法使いにとって、それは、世界の終わりを意味していた。
「だめだ……体が、いうことをきかない……!」
ユウキ様が聖剣を地面に下ろし、杖をつくように体を支えている。
魔王の力は、『無』。
私たちの持つ、『力』や、『魔法』や、『勇気』といった、『存在』そのものを、ただ、無に還していく。戦う以前の問題だった。私たちは、あまりに無力だった。
「無駄だ」
魔王が、ゆっくりと、こちらへ歩を進める。
「お前たちの『存在』そのものが、矛盾。今、ここで、本来あるべき『無』に還るがいい」
その、宇宙の闇を宿した瞳がユウキ様を捉える。
魔王が、その指先を、ユウキ様の額に触れさせようとした、その時だった。
「いやっ!」
私は恐怖のあまり、叫びながら、腕の中に抱えていた花束を、魔王に向かって投げつけていた。
ダインさんの斧が姿を変えた、もはや何の力も持たない、ただの花束を。
それは、あまりに無意味で、あまりに、みっともない抵抗だった。
花びらが宙を舞い、魔王に届くこともなく、力なく、その足元に、はらりと落ちる。
しかし。
私が花束を投げた、その勢い。
その勢いで、私の着ていたローブの前が、大きく、はだけてしまったのだ。
サラシで固めていたにもかかわらず、隠しきれない、私の胸のふくらみが、魔王の目に晒される。
――ぴたり。
魔王の動きが、止まった。
ユウキ様を消し去ろうとしていた、その指先が、空中で静止している。
私たちを縛り付けていた、あの絶望的な圧力も、嘘のように霧散した。
魔王の、感情のない、星々を宿した瞳が、生まれて初めて、一つのものに、〝焦点〟を合わせていた。
私の、胸に。
その視線に気づいた私は、顔を真っ赤にして、慌ててローブの前をかき合わせた。
「ひゃっ!」
私が胸を隠した、その瞬間。
魔王の体から、びくり、と、小さな痙攣のようなものが走った。
彼を支配していた、絶対的な『無』のオーラが、ほんの一瞬だけ乱れる。
そして、彼は、まるで夢から覚めたかのように、我に返った。
その、一連の流れを。
パーティの中で、ただ一人、ユウキ様だけが見逃さなかった。
(……まさか)
彼の脳裏に、一つの、あまりに馬鹿馬鹿しい、しかし、唯一の可能性が閃いた。
(何だ、今のは……? 俺たちの力が、一瞬、戻った……。トリガーは魔王が止まったこと。なぜ止まった? あいつはルルナを見ていた。いや、違う。ルルナの胸を……!)
ユウキ様の思考が高速で回転する。
(……馬鹿な! そんなわけがあるか! ……いや、待てよ? こいつは、『無』の化身。感情も、論理も、存在しない。だが、ルルナのおっぱいは、世界の理を歪める、『存在』の塊だ。つまり、『無』にとって、唯一、理解不能で、観測可能な、『有』のノイズ……! まさか、弱点って、これか!?)
「……今度こそ、消えろ」
我に返った魔王が、再び、その指先を、ユウキ様へと向ける。
絶望的な圧力が、再び、私たちを支配する。
しかし、ユウキ様の瞳には、もはや絶望の色はなかった。
そこにあるのは、一つの狂気的で、破廉恥で、しかし、確信に満ちた希望の光。
彼は魔王と、そして、おびえる私を交互に見つめると、決意を固めた。
これから、この世界の歴史上、最も馬鹿げた作戦を実行するために。
その瞬間、この場から『力』という概念が消え始めた。
「ぐっ……お、おい……俺の腕が……!」
最初に異変に気づいたのはダインさんだった。岩をも砕くはずの彼の剛腕が、まるで力を失った老人のように、わなわなと震えている。前に踏み出そうにも、足が言うことを聞かない。
「力が……抜けちまう……!」
「そんな……!」
シルヴィアさんの顔から血の気が引いていく。
彼女が指先で魔法の紋様を描こうとしても、魔力が霧散してしまう。術式が頭の中で意味のある形を成さない。魔法使いにとって、それは、世界の終わりを意味していた。
「だめだ……体が、いうことをきかない……!」
ユウキ様が聖剣を地面に下ろし、杖をつくように体を支えている。
魔王の力は、『無』。
私たちの持つ、『力』や、『魔法』や、『勇気』といった、『存在』そのものを、ただ、無に還していく。戦う以前の問題だった。私たちは、あまりに無力だった。
「無駄だ」
魔王が、ゆっくりと、こちらへ歩を進める。
「お前たちの『存在』そのものが、矛盾。今、ここで、本来あるべき『無』に還るがいい」
その、宇宙の闇を宿した瞳がユウキ様を捉える。
魔王が、その指先を、ユウキ様の額に触れさせようとした、その時だった。
「いやっ!」
私は恐怖のあまり、叫びながら、腕の中に抱えていた花束を、魔王に向かって投げつけていた。
ダインさんの斧が姿を変えた、もはや何の力も持たない、ただの花束を。
それは、あまりに無意味で、あまりに、みっともない抵抗だった。
花びらが宙を舞い、魔王に届くこともなく、力なく、その足元に、はらりと落ちる。
しかし。
私が花束を投げた、その勢い。
その勢いで、私の着ていたローブの前が、大きく、はだけてしまったのだ。
サラシで固めていたにもかかわらず、隠しきれない、私の胸のふくらみが、魔王の目に晒される。
――ぴたり。
魔王の動きが、止まった。
ユウキ様を消し去ろうとしていた、その指先が、空中で静止している。
私たちを縛り付けていた、あの絶望的な圧力も、嘘のように霧散した。
魔王の、感情のない、星々を宿した瞳が、生まれて初めて、一つのものに、〝焦点〟を合わせていた。
私の、胸に。
その視線に気づいた私は、顔を真っ赤にして、慌ててローブの前をかき合わせた。
「ひゃっ!」
私が胸を隠した、その瞬間。
魔王の体から、びくり、と、小さな痙攣のようなものが走った。
彼を支配していた、絶対的な『無』のオーラが、ほんの一瞬だけ乱れる。
そして、彼は、まるで夢から覚めたかのように、我に返った。
その、一連の流れを。
パーティの中で、ただ一人、ユウキ様だけが見逃さなかった。
(……まさか)
彼の脳裏に、一つの、あまりに馬鹿馬鹿しい、しかし、唯一の可能性が閃いた。
(何だ、今のは……? 俺たちの力が、一瞬、戻った……。トリガーは魔王が止まったこと。なぜ止まった? あいつはルルナを見ていた。いや、違う。ルルナの胸を……!)
ユウキ様の思考が高速で回転する。
(……馬鹿な! そんなわけがあるか! ……いや、待てよ? こいつは、『無』の化身。感情も、論理も、存在しない。だが、ルルナのおっぱいは、世界の理を歪める、『存在』の塊だ。つまり、『無』にとって、唯一、理解不能で、観測可能な、『有』のノイズ……! まさか、弱点って、これか!?)
「……今度こそ、消えろ」
我に返った魔王が、再び、その指先を、ユウキ様へと向ける。
絶望的な圧力が、再び、私たちを支配する。
しかし、ユウキ様の瞳には、もはや絶望の色はなかった。
そこにあるのは、一つの狂気的で、破廉恥で、しかし、確信に満ちた希望の光。
彼は魔王と、そして、おびえる私を交互に見つめると、決意を固めた。
これから、この世界の歴史上、最も馬鹿げた作戦を実行するために。
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