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ロマン・エイジⅡ プロローグ
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神話は神が作るものだが、歴史は人間が作るもの。どこかの歴史家が語った言葉である。
神は世界を作り、大地と海を作り、世界に生物を産み落とし、最後に人間を産み落とした。それが神話であり、神々が作った物語である。
その神話の時代が終われば、歴史が始まる。人類が神の手から離れて、自分たちで紡ぐ歴史の始まりである。
文明の始まりと共に、無数の人々の手で歴史は紡がれてきた。
歴史を作るのはいつでも英雄だった。彼らは自ら戦場に立ち、帝国の運命を決してきた。時には輝かしい勝利をもたらし、時には破滅的な敗北を受けて、彼らの足跡はそのまま歴史となって記録されていった。
しかし、世界が近代化を迎える頃には、英雄が戦場に立つことは必要なくなっていた。
かつて帝国の運命を決した英雄たちの戦いは過去のものとなり、ロマンに溢れた英雄譚が生まれることはなくなっていた。
世界から少年のような輝きと、胸を熱くするロマンは失われたのである。
しかし、それでも歴史を紡ぐのは人間である。人類の足跡が今日も刻まれ、彼らの血脈がインクとなって、新たな歴史を記録するのである。
世界中を走り回る鉄道は、近代化を象徴する乗り物だ。というよりは、鉄道こそ近代化には必要であった。驚異的な速度と強大な輸送力。鉄道は国家を豊かにし、強くするのに必要不可欠なものだ。
この時代、ユースティアの列強諸国は国内の鉄道敷設を急いでいた。国中に鉄道を張り巡らせれば、人や物の輸送が一気に加速する。国内経済に計り知れない豊かさをもたらすのである。
人や物資が血液とするなら、鉄道は国家の血管なのだ。
ユースティア列強の一角であるグラーセン王国。この国もまた鉄道敷設を急ピッチで進めていた。主要な都市の間には線路が敷かれ、王都と各都市は線路で結ばれるようになっていた。
今日も汽車は煤煙を吐きながら、それぞれ定められた線路を走り続けていた。
その内の一つ。王都へ向かう汽車の中で、新聞を読む若者がいた。
クラウス・フォン・シャルンスト。この国の名門貴族の生まれであり、学生をしていた。
そんな彼に対面する形で、向かいに座る少女がいた。彼女は窓の外を流れる景色を楽しそうに眺めていた。
ユリカ・フォン・ハルトブルク。シャルンスト家が名門貴族なら、ハルトブルク家は国王の次に偉大な貴族だった。ユリカはそのハルトブルク家の末娘であり、正真正銘のお嬢様だった。ちなみに現当主は王国の宰相を任されている。
間違っても、シャルンスト家と同じ位置で語るべき存在ではなかった。
「あ、ほら見て見て。あの雲、まるで鳥みたいな形をしているわ」
そんなユリカだが、彼女は空を流れる雲を指差して、きゃっきゃとはしゃいでいた。
その彼女をクラウスは横目でちらりと見てから、もう一度新聞に目をやった。それから彼女に気付かれないように、静かに笑った。
とてもではないが、大貴族の御令嬢とは思えない姿だった。
「もう。聞いているの? 」
すると無視されたと感じたユリカが不機嫌そうな顔を寄せてきた。クラウスは慌てて顔を上げた。
「ああ、聞こえている。あの方角だと、オデルンから流れてきたのかな?」
雲が流れているのは、ちょうど王都の方角からだった。今彼らが向かっている先である。
ユリカも同じ方角を見た。きっと彼女の視線の先には、オデルンの街並みが見えているに違いない。
オデルンを想像し、目を輝かせるユリカ。そんな彼女を見て、クラウスはもう一度微笑んだ。
二人を乗せた汽車は、急かされるように走り続けるのだった
神は世界を作り、大地と海を作り、世界に生物を産み落とし、最後に人間を産み落とした。それが神話であり、神々が作った物語である。
その神話の時代が終われば、歴史が始まる。人類が神の手から離れて、自分たちで紡ぐ歴史の始まりである。
文明の始まりと共に、無数の人々の手で歴史は紡がれてきた。
歴史を作るのはいつでも英雄だった。彼らは自ら戦場に立ち、帝国の運命を決してきた。時には輝かしい勝利をもたらし、時には破滅的な敗北を受けて、彼らの足跡はそのまま歴史となって記録されていった。
しかし、世界が近代化を迎える頃には、英雄が戦場に立つことは必要なくなっていた。
かつて帝国の運命を決した英雄たちの戦いは過去のものとなり、ロマンに溢れた英雄譚が生まれることはなくなっていた。
世界から少年のような輝きと、胸を熱くするロマンは失われたのである。
しかし、それでも歴史を紡ぐのは人間である。人類の足跡が今日も刻まれ、彼らの血脈がインクとなって、新たな歴史を記録するのである。
世界中を走り回る鉄道は、近代化を象徴する乗り物だ。というよりは、鉄道こそ近代化には必要であった。驚異的な速度と強大な輸送力。鉄道は国家を豊かにし、強くするのに必要不可欠なものだ。
この時代、ユースティアの列強諸国は国内の鉄道敷設を急いでいた。国中に鉄道を張り巡らせれば、人や物の輸送が一気に加速する。国内経済に計り知れない豊かさをもたらすのである。
人や物資が血液とするなら、鉄道は国家の血管なのだ。
ユースティア列強の一角であるグラーセン王国。この国もまた鉄道敷設を急ピッチで進めていた。主要な都市の間には線路が敷かれ、王都と各都市は線路で結ばれるようになっていた。
今日も汽車は煤煙を吐きながら、それぞれ定められた線路を走り続けていた。
その内の一つ。王都へ向かう汽車の中で、新聞を読む若者がいた。
クラウス・フォン・シャルンスト。この国の名門貴族の生まれであり、学生をしていた。
そんな彼に対面する形で、向かいに座る少女がいた。彼女は窓の外を流れる景色を楽しそうに眺めていた。
ユリカ・フォン・ハルトブルク。シャルンスト家が名門貴族なら、ハルトブルク家は国王の次に偉大な貴族だった。ユリカはそのハルトブルク家の末娘であり、正真正銘のお嬢様だった。ちなみに現当主は王国の宰相を任されている。
間違っても、シャルンスト家と同じ位置で語るべき存在ではなかった。
「あ、ほら見て見て。あの雲、まるで鳥みたいな形をしているわ」
そんなユリカだが、彼女は空を流れる雲を指差して、きゃっきゃとはしゃいでいた。
その彼女をクラウスは横目でちらりと見てから、もう一度新聞に目をやった。それから彼女に気付かれないように、静かに笑った。
とてもではないが、大貴族の御令嬢とは思えない姿だった。
「もう。聞いているの? 」
すると無視されたと感じたユリカが不機嫌そうな顔を寄せてきた。クラウスは慌てて顔を上げた。
「ああ、聞こえている。あの方角だと、オデルンから流れてきたのかな?」
雲が流れているのは、ちょうど王都の方角からだった。今彼らが向かっている先である。
ユリカも同じ方角を見た。きっと彼女の視線の先には、オデルンの街並みが見えているに違いない。
オデルンを想像し、目を輝かせるユリカ。そんな彼女を見て、クラウスはもう一度微笑んだ。
二人を乗せた汽車は、急かされるように走り続けるのだった
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