異世界って色々面倒だよね

綾織 茅

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勘違いしちゃったお姫様

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「あのね、ここが乙女ゲームの世界で自分が主人公? 別にそう思うのは勝手だけどさぁ。……いい加減現実見ろ。周りを巻き込むな」
「え、でも……本当のことだし。巻き込んでなんか……」


 ぶつぶつと小声で反論してくるくせに目を見ようとはしない。あまりにも幼稚すぎる彼女の行動にもはやなんの言葉も出ない。


「サーヤ!」


 市場に来てすぐ声をかけてきてくれたおばさんが私の姿を見つけて駆け寄ってきた。かと思うと地面にひざまずき、泣きながら懇願してくる。


「お願いだよ! うちの息子を助けておくれ!! やっと騎士になったというのに死罪になるかもしれないなんてあんまりじゃないか!! サーヤ、あんたしか頼める相手がいないんだよ!」


 そういえば彼女の息子はこの間の叙任式で神殿騎士になっていた。巫女姫付きになっていたなんて……なんて不運な。

 要人が消えたとなればその罪は警護をする護衛にある。巫女姫では神殿騎士がその護衛を勤めている。しかも巫女姫の場合、他国へ連れ去られた場合の損失は大きい。死罪という噂が流れるのも無理はない。


「分かった。分かったよ。王宮に今から行くから、その間ジョシュアを預かってくれる? 今、ここの店の中にいるから」
「ありがとう! 本当にありがとう!! ジョシュアのことは任せな! ちゃんと世話しとくから!!」
「うん、よろしく。あんたも一緒に来な」
「え、きゃっ!」


 おばさんの泣きながらの嘆願に狼狽えたのか遠巻きに見ていたゆりあの手を掴み、転移陣の中に無理矢理連れ込んだ。



 飛んだ先は王の間。突然の出現に驚いた王の顔と超絶不機嫌なシーヴァとユアンの姿があった。

 嘆願っていうのはさ、やっぱりトップに直談判が手っ取り早いよ。
 今回は人の命かかってるんで。こんな勘違い娘のために悲しむ人がいるなんてのはいけない。断じて許せん。


「陛下。私ともお話合い、していただけますか?」


 にっこりと営業スマイル浮かべさせていただきました。


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